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魔導戦記マギ・トルーパー  作者: イズミント
第1部 邂逅編
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第10話 悪夢と報告

【Side ルキア】


『あ、あれは……!?』


『フハハハハッ! 壊れろ、壊れろ! 全て壊れてしまえぇっ!!』


『うわぁぁぁっ! 破壊の魔神だぁぁっ!!』


『に、逃げろぉぉ!』


『ルキア、逃げるわよ! 私達魔女でも、あれは太刀打ち出来ない!』


『う、うん!』


『フハハハハ! 逃がさねぇよぉ! 行くぜぇ、フレアボール!』


『なっ!? 巨大な火の玉……!?』


『そぉりゃあぁぁぁっ!!』


『ルキアっ!!』


『きゃあぁぁぁっ!』


 あの日、私のいた世界は魔神によるあの巨大な火の玉によって、全て破壊された。

 町も人もほぼ全て……。

 私が意識を失う時の奴の歪んだ微笑は未だに忘れられない。

 眠れない理由は、奴の歪んだ微笑が夢に出てくるからだ。

 そして、今も……。


◇◇◇◇◇◇◇◇


「うあっ!!」


 一瞬のホワイトアウトと同時に、私は飛び起きた。


「夢……。 くっ、また同じ夢を見るようになったのか……」


 額に手を当てながら私は悪夢を見た事にイラついていた。

 しばらくして、冷や汗も掻いていた事も、衣服の濡れ具合で理解した。

 相当な悪夢を見たのかも知れない。

 あの忘れ得ぬ悪夢を……。


「それにしても、ここは……?」


 さて、私が目覚めた場所だが、魔方陣の光に呑まれた後に目覚めた場所とは異なる。

 薬品の匂いが漂い、白衣みたいな服装が掛けられている所を見ると、医療室みたいな場所なのだろうか。


「あたたっ!」


 まだ全身が痛むし、心なしか吐き気も残る。

 これはおそらくアパタイトのスピードによる負荷が今になって降りかかっているのかも知れない。


「あ、気が付きましたか?」


 そんな事を考えていたら、フェリア軍曹が入ってきたようだ。

 彼女は私が目覚めた事に安堵しているみたいだ。


「フェリア軍曹……。 ここは?」


「王城内にある軍の医務室です。 ルキアさん、帝国の機体と戦った後に気を失ったんですよ。 調子はどうですか?」


 やっぱり軍の医務室か。

 しかし、前の世界と比べて発展してるような感じがするよね。


「あまり芳しくはないかな。 まだ全身が痛むし、吐き気も残ってる」


「でしたら無理はせずに休んでくださいね。 私はこれから機体の整備があるので」


「アルム大尉は?」


 私は医務室から出ていこうとしたフェリア軍曹に、アルム大尉の事を聞いてみた。


「現在、艦長と司令官と話をしています。 【オリジネイター】……今はルキアさんによってアパタイトと名付けられた機体の前で」


「そうですか」


「それでは。 あ、お手洗いは医務室を出てすぐですから」


 わざわざトイレの場所まで教えてもらって申し訳ない気分になった。

 確かにトイレを求めて迷子になっては元も子もない。

 フェリア軍曹が去って暫くしてから、ゆっくりベッドを降りて、トイレに行く事にした。

 今はフェリア軍曹の言うように、ゆっくり休んでおこう。


◇◇◇◇◇◇◇◇


【side アルム】


 帝国との一戦が終わった後、ルキアを医務室に運び、彼女の世話をフェリア軍曹とミュリア軍曹に任せて、俺は艦長と軍の司令官に報告をしていた。

 無論、【オリジネイター】……今はルキアによってアパタイトという名前になった機体にルキアが乗るきっかけになった話もしながらだが。


「しかし、【オリジネイター】自体がルキア嬢を選ぶとはな」


「にわかに信じられんが、本当なのだろう?」


「ええ、帝国軍の襲撃と同様のタイミングでルキアの頭の中に語り掛けてきたようで、さらに同時に【オリジネイター】……以後はアパタイトにしますが、そのアパタイトのコクピットハッチ部分にあったクリスタルが光りましたし」


「ううむ……」


 俺の報告に大隊長のクラウド・フェルバッハ少佐が信じられないというような様子だった。

 彼の隣の連合軍ファシナシオン基地の司令官であるグスタフ・フェダーイン中将も同様だ。

 何せ今まで動く気配すらなかったアパタイトがルキアを操縦者(パイロット)として選ぶために勝手に起動したんだからな。


「そのルキア嬢は?」


「軍の医務室で休んでいます。 流石に初戦で色々あり過ぎたので」


「だろうな。 このアパタイトの武装のほとんどが()()()()技術(クノロジー)なのだろう?」


「そうですね。 今俺の周りを飛んでいるこいつもそう言ってますし」


「それがアパタイトのコクピット内に置いてあった子機(サブデバイス)だとは信じられんな」


『マスターであるルキア様の膨大な魔力によって生まれ変わりましたから』


 今は俺の周囲で飛んでいる妖精は、元々はアパタイトのコクピット内に置かれていた子機(サブデバイス)らしい。

 出撃前にルキアが大量の魔力を注いだ影響で、子機が人の形を成し、今もこうして普通に喋れている。

 艦長も司令官もやはりというか信じられないという様子だった。


『幸い、私の本体はモチーフとして作られたあなた方の機体の武装と相性がいいので、しばらくはそれに取り換えていった方がいいでしょう』


「ふむ。 つまりビームサーベルをオリハルコンブレードに差し替えたりとか?」


「ビーム系統は強すぎて操縦者をも一瞬で殺す威力だから、それもやむなしだろうな」


「だが、いざという時の切り札という事で残しておくべきでは? ルキア君には申し訳ないが」


「司令官……」


 流石にそれは今のルキアには荷が重いだろ、司令官。

 彼女自身は自ら踏み入れたと思ってはいるようだけど……。


「武装に関しては、ひとまず追加という事で後付けで追加した武器を優先で使ってもらう事にしよう。 君もそれでいいかね?」


『ええ、そうするように私を経由でそう組み込んでおきます』


 しかし、この子機本当に話の分かる奴だな。

 あの時もルキアの身を案じていたみたいだし、元が魔導機械とは思えない。


「で、今後のルキア君の事だが、以後も我々軍の方で保護し、彼女を守る事にしようと思う」


「それに異論はありません」


「私もな。 最近聞いた話だがルキア嬢を大臣たちが帝国に身売りしようと企んでいたらしいからな」


「何だと!?」


 あ、司令官が驚いてる。

 俺はフェリア軍曹から聞いた情報で、ルキアを帝国に身売りしようとしていた事を知っていたからな。

 しかし、奴らはそこまでして国を帝国に売りたいのかね。


「元々奴らは戦争反対かつ売国主義だからな。 それを成すために邪魔者は排除し、天才と呼ばれたかつての君の兄妹を傀儡にしようとしている」


「あってはならん事だ。 だが、人事権は奴らに握られているからな。 今は国王が秘密裏で何かしようとしているが」


 確か、MGTや魔導技師の数も減っていた時があったが、それも糞大臣の仕業ではという話だ。

 確証がない以上、奴らは言い逃れしてくるだろうが、国王は何かを仕掛ける予定なのだろう。


「ともかく彼女にはアルム大尉の小隊に所属はさせておく。 ルキア君と話し合った上で彼女を支えてやるのだ」


「了解しました」


 ルキアはそのまま俺の小隊に所属という事にしておくのだそうだ。

 知った顔がいる部隊にいれば何かと安心だろうしな。


 報告を終えた俺は、まずはカロン軍曹とフェリア軍曹、そしてミュリア軍曹にこの件は伝えておこうと彼らの元に向かった。

 さて、これからが慌ただしくなりそうだな。


 あと、アパタイトの整備は子機(サブデバイス)が言うには俺達の使っている機体を整備できるのであれば誰でも出来るのだとか。

 整備班にも報告しないといけないか……。


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