表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女からの大降格  作者: 美雪
第九章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

202/243

202 キャンプファイヤー

 いつもありがとうございます。

 執筆するにあたって、一部の表記を修正することにしました。


 ①魔法表記→発動言(呪文・詠唱)の場合は《 》で囲みますが、説明や会話に出て来るだけの時はそのままの表記にしました。

  例:ルフは《火矢》を使った→ルフは火矢の魔法を使った。

    「《火矢》!」→魔法を発動させるためなのでそのまま。変更なし。


 ②ドラッヘン王妃→ドラッヘン国王の表記と近いので、名前のアデルに変更しました。


 これからも、読みやすく伝わりやすいよう工夫していくつもりです。

 よろしくお願いいたします!




「こっちか!!!」


 ドラッヘンからの増援が来たという連絡を受けたジークフリードはコテージへ行った。


 だが、増援がいない。


 そこでオクルス修道院へ行き、そこにもいないと知って広場へ来た。


「キャンプファイヤーとバーベキューをする。食べていくか?」

「うむ。補給物資を持って来た。ほぼ食料だ。ワインも持って来た」


 増援の人数にもよるが、かなりの大所帯になる。


 アヴァロスに滞在するための便宜を図ろうと思い、ジークフリードはドラッヘン国王に会いに来た。


「正直、こっちで良かった。コテージの方だと、ワイバーンのせいで騒ぎになっていたかもしれない」

「誤魔化しにくい数だからな」


 いくらワイバーンを小型化しても、街中にいる鳥とはサイズが違う。


 大きな鳥が多く飛んでいるというだけで、騒ぎになる可能性が高かった。


「新聞は読んだか?」

「読んだ」


 アヴァロスは魔物に関する情報を公表し、魔物討伐業で有名なドラッヘンと協力して対応を協議すること、これを機会に両国の国交を改善していくための取り組みをすることを大々的に発表した。


 ドラッヘンの代表団がアヴァロスに滞在。魔物の専門家として助言、討伐することが決定した場合は助力もしてくれることも合わせて伝えられた。


「協力が必須になった」


 公表された以上、ドラッヘンが約束を破れば信用を損なう。


 つまり、ドラッヘンは魔物対応に協力することが必須になった。


「合意書にサインしただろう? 今更だ」

「宿営地を公表していなかったな?」

「現地の近くにして貰いたい。クロスハートに近づかなければ、飛行も放し飼いも可能だ。ワイバーンにとってはその方が良いだろう?」


 街中に多くのワイバーンを出入りさせるのは大変だ。


 そこで地上湖の近くに宿営地を設定することにした。


「地上湖から少し離れた場所に監視拠点がある。そこでいいか?」


 地上湖付近では時々地震がある。


 以前のような大きな揺れはないが、被害が出ないような地点に監視業務の拠点を作った。


 通常はテントや簡易施設の設置だが、場所を移動させることができるよう宿泊可能な旅行用馬車を並べている。


 ドラッヘンが使用する分も発注済みで、完成したものから設置中であることをジークフリードが説明した。


「国賓に自前のテントを使って欲しいとは言いにくいからな」

「気にしないが?」


 魔物討伐に行く際は常に自前のテント。


 ホテルなどの宿泊所を用意されても、ワイバーン用の場所が用意されていないことが多く、結局は自前のテントで野営ということが多い。


「宿営地を了承する。ワイバーンへの配慮にも感謝したい」


 ドラッヘンと友好関係を結ぶには、ワイバーンに対する認識や対応が極めて重要なポイントになる。


 ジークフリードがそれを理解した配慮を示したことで、ドラッヘン国王は好感と信頼を高めた。


「普段はワイバーンを檻に入れていると思っている国が多い方が困る。ワイバーンはペットではない。共に戦う仲間だ」


 ワイバーンは魔物だとわかっているだけに、ジークフリードには共感しにくい部分がある。


 だが、大事にしているということは理解しているつもりだった。


「愛馬と同じ感覚と思うと、わかりやすいかもしれないな?」

「私は馬に乗らないからな」


 ジークフリードの場合、転移魔法と加速魔法と浮遊魔法で移動については事足りてしまう。


 執務で忙しく、趣味として乗馬を楽しむこともない。


「オルフェスならわかりそうだ」


 転移魔法が苦手だったため、馬や馬車で移動していた。


「オルフェス王子はどうした?」


 いつもはジークフリードと一緒だが、今回はいなかった。


「宿営地の準備している。外交だ接待だとあれこれ細かいので任せた」


 国外の賓客をもてなすために舞踏会を開くのがアヴァロスの定番。


 そういった準備もオルフェスの方が仕切ることになった。


「ただ、ワイバーンのエサはない」

「それは十分に用意して来た」


 本来のワイバーンは巨体だが、小型化すると胃も小さくなる。


 エサ代を節約するため、小型化して食べさせていた。


「こちらで用意した方がいいものはあるか?」

「用意というか、許可が欲しい。地上湖の魔物をワイバーンに食べさせてみたい」


 ジークフリードの頭の中に浮かんだのはザリガニ。


「腹を壊さないか?」

「開示されたデータを見ると大丈夫そうだ。歯ごたえがあって美味いと思うかもしれない。湖の水も飲ませてみたい」


 ワイバーンは魔物だけに、魔力を含んだものを好んで食べる。


 ドラッヘンが大量生産しているエサには魔物の肉が入っているが、現地で飲食可能な魔物や魔力水があると非常に嬉しい。


「泥水だが?」

「人間とは感覚が違う。野生動物は泥水を平気で飲むだろう?」

「体調不良になっても責任は取らないぞ?」

「こちらの要望だ。アヴァロスの責任にはしない」


 合同調査をしながらワイバーンに魔物や魔法水を飲食させ、体調を崩さないかどうかを確認することで合意した。


「ワイバーンが喜ぶようであれば、将来的には湖の魔物や水を買ってもいい」

「まさか……」


 驚くジークフリードにドラッヘン国王はニヤリとした。


「中央大陸にエサ場があるのは嬉しいからな」


 東の大陸は魔物も魔法植物も大量にある。


 だが、中央大陸は人間が魔物を駆逐しようとして来ただけに、食物連鎖の影響からか魔法植物も魔法水も少なくない。


 そして、ドラッヘンに魔物討伐を依頼する国々は魔物と共存したくない中央大陸の国々が多い。


 毎回大量のエサを持って行かなければならないこともあって、中央大陸のどこかに丁度良いエサ場がないかとドラッヘン国王は思案していたところだった。


「洞窟ザリガニは繁殖力があり、完全な駆除は難しい部類だ。一時的には絶滅したように見えても、しばらくすると水中に残った卵から再度繁殖する可能性がある」


 対策としてワイバーンがザリガニを食べ、卵が含まれていそうな水を飲んでしまえばいい。


 そうすることでいつかは絶滅するかもしれない。


 絶滅しなくてもメリットがある。


 ドラッヘンがワイバーンと共生する限り、エサ及び水場として提供できる。


「アヴァロスは魔物の脅威を抑えつつ金儲けができる。悪くない話だと思うが?」

「即答はしない」


 ドラッヘン国王は優れた交渉術がある。


 おいそれと同意するわけにはいかないとジークフリードは思った。


 一時的にエサ場にするのはともかく、それがアヴァロスの新規の産業として発達してしまうと、魔物を討伐するのはでなく維持する方向性へ向かってしまう。


「私は王太子だ。金を稼ぐことよりも、国民の命を守らなければならない。魔物の脅威を持続させることで国民が不安になることも望まない」

「良心的な王太子がいてアヴァロスは幸運だ。あの宰相なら喜んで飛びつくだろう」


 そうだろうなとジークフリードは思った。


 なにせ、魔石産業が廃れてきている。


 ボンジュウ王国で発見された魔石鉱脈を共同で管理できることで莫大な収入が入るように思えるが、ボンジュウもアヴァロスも国内供給を優先する。


 外貨を稼ぐのは難しかった。


 ジークフリードとしてはこれをきっかけに魔石のような化石燃料への依存度を減らし、補充石等の持続可能なエネルギーで維持できる魔法文明にしたいと思っている。


 勿論、これは簡単なことではない。


 世界中が魔石に頼っている現状を考えれば、不可能だという声が圧倒的に多いだろう。


 だが、スノウやルフ、オルフェスのおかげで、ジークフリードは可能だと思う気持ちが強くなった。


 人間は魔力や魔法がなくても生きていける。英知がある。


 魔法文明の歴史は長いが、魔法の恩恵のない生活をしてきた人々の歴史もまた長い。


 魔法文明を捨てるわけではなく、魔法文明とそうではない文明の英知を結集して新しい未来を描く。


 そして、実現させていくために尽くすだけだ。


「地下遺跡にも興味がある。濃度の高い魔水湖があるのだろう?」


 ドラッヘン国王はより魔力濃度が高い地底湖の方が魅力的だと感じていた。


「掘り起こす気はない」

「地上湖を塞ぎ、地底湖の方から洞窟ザリガニや魔法水を供給すればいい。その方が安全に金を稼げると思うが?」

「転移魔法でないと地底湖へは行けないぞ?」

「パイプラインを設置すればいい」


 パイプを開けると魔物や水が出て来る。閉じれば出て来ない。


 地底で管理すれば、地上に魔物が出てこない。


 緊急時は埋めてしまえばいい。


「地下遺跡を工場のようにしてしまえばいいだろう?」

「勝手なことを考えるな!」

「まあ、地上湖対策が先だ。エサや飲み水にできなければ妄想でしかない」

「そうだな」


 ジークフリードとドラッヘン国王が話し合っている間にも、バーベキュー準備は着々と整っていた。


 ジークフリードの護衛騎士達が持って来たワインもしっかり用意されていた。


「陛下、そろそろ大丈夫です」

「乾杯にするか」


 全員が一旦作業や話をやめ、キャンプファイヤーを囲むように集まった。


「はるばるドラッヘンから来てくれた騎士達を労い、我々を受け入れてくれたスノウ、ルフ、そしてアヴァロスに感謝したい。今夜は全員で楽しいひと時を楽しもう。乾杯ツムヴォール!」

乾杯ツムヴォール!!!」


 グラスが高く掲げられ、一気にワインが飲み干される。


 空いたグラスを魔力で浮かせての拍手。


 魔力持ちにおいては全世界共通のマナーだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] 最後の拍手の図を見たい…! 宙に浮いてるグラス…魔法文化では常識なのか~。シュール。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ