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聖女からの大降格  作者: 美雪
第九章

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178 ルフの凄さ



 ナースス村の入り口と思われる地点でドラッヘン国王とスカイはくつろいでいた。


 勝負は父親の勝ち。


 まだまだ息子には負けない。だが、もう一人の息子が心配だった。


 少し休憩したらスカイに見に行くよう言ったが、ルフが面倒を見ているといって戻って来た。


 それならいいと思ったが、レオはルフに肩車をして貰っていた。


「なぜ、自分の足で来ない? 体力向上の目的を忘れたのか?」

「疲れた」

「すまない。俺のせいだ」


 ルフはレオと共に魔力を使った切り株ジャンプをして遊んだことを話した。


 最初は楽しく面白く、夢中でやっていた。


 だが、さすがにナーススまでは持たなかった。


 気力や魔力よりも先に体力が尽きた。


 そこでルフが肩車をして、切り株ジャンプを続けた。


「レオは頑張っていた。俺が保証する」

「それなら仕方がない」

「私も切り株ジャンプをしてみたかったです。帰りはルフと勝負をしてもいいですね」


 スカイの発言にあえてルフは答えず、困ったような笑みを浮かべた。


「妻とスノウは? 置いて来たのか?」

「夫人には途中で会った」


 だが、アデルはルフ達に追いついて急停止。


 振り返るとスノウがついて来ていない。


 魔力が切れたのかもしれないと思い、様子を見るために戻っていった。


 ルフはレオを肩から降ろした。


「俺も様子を見て来る」

「大丈夫そうです!」


 空高く浮遊していたスカイが叫んだ。


「もうすぐ着きます!」


 ルフはじっと道を見つめた。


 誰もいない。


「いない」

「もっと上だ」


 ルフが空を見上げると、アデルが宙を激走して来るのが見えた。


 スノウは手をつないでいるが、自分で走れていない。


 引きずられているかぶら下がっているように見えた。


「ゴールね!」


 徐々に高度を落とし、最後はゆっくり優雅に着地。


「スノウさん、大丈夫?」

「とっても楽でした」


 アデルはほどなくしてスノウに合流した後、魔力切れかどうかを確認した。


 一緒に加速魔法で走る方法もあったが、スノウの魔力が少ない。


 そこでアデルが手をつないで引っ張りながら走ることにした。


 スノウは浮遊魔法と身体強化を範囲でかけてアデルをサポートした。


 互いの能力に応じた担当を分けることで、短時間かつ魔力消費を抑えながら移動できた。


「すみません。自分の足を使わなくて」

「私が提案したことだもの。気にしないで!」

「スノウは僕と同じだね!」


 レオが嬉しそうに言ったが、


「違う」

「違います」


 父親と兄が速攻で否定した。


「野イチゴを見に行こう。村の中は浮遊魔法を使った方がいい」


 雑草が茫々状態のためだった。


 浮遊及び移動用のペア決めも簡単。


 ルフとスノウ。


 スカイとレオ。


 ドラッヘン国王夫妻。


「まずはあそこだな」


 下に降りると、赤い実がちらほら見えた。


「なってはいそうだが、食べられるかどうかは別だ」

「採りに行ってもいいですか?」


 スノウが尋ねた。


「待ってくれ。先に防御魔法と防汚魔法をかけた方がいい」

「防汚魔法は誰も使えない」

「防御魔法だけでもいいですか?」

「大丈夫だと思うが、一応範囲で試してみる」


 ルフは範囲で全員への防汚魔法を試した。


「かかりました!」


 二人以上は初めてだったが、ルフは魔法に成功した。


「良かった。これで六人でもかけれることがわかった」

「水属性の魔法も使えるのか?」

「ルフは何属性を使えるのですか?」

「適性だけで言えば、光以外は全部だ。闇はわからない」


 隠してもしょうがないと思い、ルフは正直に答えた。


 生活上、必要と思えば属性を意識することなく魔法を使う。


 修道院で生活している者にはわかってしまうと思った。

 

「全部だと言ったか?」

「光と闇以外?」

「火・炎・土・水・風・氷・雷ということ?」

「七種類だからそうだな」


 ドラッヘン一家は驚愕した。


「だが、一番強いのは風だろう?」


 転移魔法が使える。


「雷かもしれません」


 加速魔法の技能が高い。


「実は水かもよ?」


 強属性を持つ人々の割合が多い。


「全部強だ」


 ドラッヘン一家にとって衝撃の事実が判明した。


「ただ、俺は魔法学校に行っていない。生活と自衛に使えそうな魔法だけを覚えている」

「独学で魔法を覚えたのか?」

「転移魔法を独学で?」


 早速最も重要かつ難易度の高い魔法についての質問が飛び出た。


「それはゴードンに教えて貰った。ヴェラにも助言を受けた」

「加速魔法は?」

「ゼノンだ。ジークや魔法騎士にも聞いた」

「防汚魔法はどうしたの? 水属性よ?」

「それはマヌエラに」

「神殿の者です。私の世話役でして」


 スノウの周囲にいる者達から必要そうな魔法を教えて貰い、身につけたということ。


 だが、ルフは神殿に所属している者ではない。


 子供の頃からオクルスにずっと住んでいるという話だった。


「魔法はいつから使えるようになったのですか?」

「魔力の扱いは誰に習った? その方が先だろう?」

「スノウがこっちに療養に来た時に教えて貰った。俺は光属性を使えないから、魔力の扱いや知識だな」

「初歩だけです。成長したのはルフ自身の力です。魔法書をいっぱい読んでいましたから!」

「それまでは魔力があるとは思っていたが、魔力も魔法も全く使ったことがなかった」


 信じられないと言わんばかりの視線がルフに集まった。


 治癒の聖女が療養になったのは戦後。つまり、一年以内。


 その間にルフは魔力の扱いを初歩から始め、転移魔法、加速魔法、浮遊魔法などといった難易度の高い魔法を次々習得した。


 しかも、技能自体のレベルも高い。


「奇跡のような者を見つけた」

「アヴァロスの生ける秘宝では?」

「スノウさんの婚約者に内定するわけだわ」


 スノウは元治癒の聖女。アヴァロスの要人だ。


 療養中にルフと恋仲になったとしても、周囲が簡単に認めるわけがない。


 だが、奇跡の魔力と破格の才能がある人物だった。


 加えて自活できる。生活技能も傑出していた。


 善良。真面目。誠実。性格も見た目もいい。


 だからこそ、結婚話が内定したというわけだ。


「そういうことか」

「謎が解けました」


 ジークフリードやオルフェスは修道院での宿泊に大反対していた。


 だというのに、スノウが許可を出しただけであっさりと引っ込んだ。


 監視役としてゼノンを送り込んで来たが、たった一人。


 実力のある聖騎士とはいえ、あまりにも少なすぎる。


 だが、それで十分だと判断した。


ルフが実力者ゆえに。


 そもそも要人であるスノウが療養するというのに、ルフ以外の者がいない。


 そのこと自体が異常だが、ルフに全てを任せている証だった。


「皆が多くのことを教えてくれたおかげだ。心から感謝している。スノウには特に」


 スノウは嬉しそうに微笑んだ。


「ルフが頑張ったからです。どれほど才能があっても、懸命に勉強しなければ無駄にしていまいます」

「僕も頑張ったらルフみたいになれる? 一年以内にもの凄く成長できる?」


 レオがスノウに尋ねた。


 絶対に無理だろうと家族は思ったが、


「できます! でも、それだけ頑張らないといけません。本当にびっくりするほどルフは修練していましたから」

「短期間で習得するコツは何ですか?」


 スカイは興味津々とばかりに質問した。


「強いて言えば集中することだ。ゴードンもローイ先生も厳しかった」

「ローイ・リュクレウスのこと?」


 アデルが尋ねた。


「ローイ先生を知っているのだろうか?」

「石化魔法の使い手だからよ」


 石化魔法は極めて難易度が高い魔法。


 対人に使うと大変なことになってしまう。


 だからこそ、その使い手は有名かつ非常に警戒されていた。


「ああ、専門治療の方ですね」


 スノウは納得した。


ややズレてはいるが、間違いではない。


「ルフも使えるの? 石化魔法を?」

「無理だ。俺が教わったのは主に魔力の節約だ。土魔法だけでなく石魔法も練習するよう言われたが、課題の石壁を作れない。バートのおかげで少し進んだが」

「バート?」

「誰ですか?」

「ランバート・イルマズさんです」


 アヴァロスと戦争をしていたボンジュウ王国の有名人。


 建築家だが、土使いとしても実力者だ。


「バートにはゴーレムの作り方も習ったが、全然だ。こっちもまだ普通の粘土細工しかできない」

「一流の教師がいるようね」

「最高の間違いではないか?」

「アヴァロスだけでなくボンジュウの者との付き合いもあるのですか?」


 ドラッヘン一家は驚くばかりだ。


「バートはスノウの知り合いだ」

「戦場で会ったのです。私がいた医療部隊で預かる捕虜でした。無事、国に帰ることができたので、わざわざお礼を言いにきてくれたのです」


 どのようにして知り合ったのかもわかった。


「なんか、ルフは狡い! 凄い人に習ってるんだよね?」

「レオも習えばいい。ドラッヘンには優秀な教師が多くいるはずだ」

「ドラッヘンの者は嫌だ。できないのにできるできるってうるさい。できないものはできないのに」


 レオはルフにしがみついた。


 全員が始まると思った。おねだりが。


「ルフと同じ教師がいい! 父上、お金をいっぱい積んで予約して!」


 勉強したがるのは良いとしても、極めて難しい内容だった。


「無理だ」

「無理です」

「属性が違うでしょう?」

「そうだけど……ゼノンなら雷だよ?」


 無理に決まっている。


 お金を積んで了承を得られるような相手ではない。


「アデル、実家のコネで」

「不可能です。聖騎士の務めの邪魔をするなと言われます」

「まずは野イチゴを採りましょう。レオ、一緒に探しませんか?」

「探す!」


 レオの興味は野イチゴに向いた。


 家族一同、助かったと思ったのは言うまでもない。


「思いついた。ルフに教えて貰えばいいのではないか?」


 名案だとドラッヘン国王は思った。


「ゴードンの弟子だろう? それはつまり、ゴードンの教えを教えることができるということだ」

「さすが父上です。私もどのような教えを受けたのか知りたいですね」

「無理だ。俺は教師じゃない」


 ルフは即座に断った。


「レオに魔力の扱いを遊びながら教えていたでしょう? 立派な教師になれると思ったわ」


 アデルはレオの教育を任せることに賛成だった。


 特に嫌がっている魔力の扱いについての勉強をルフに頼めればとも。


「レオのことを頼めないだろうか? 勿論、相応の礼をする」

「このままではせっかくの才能を無駄にしてしまいます」

「レオはルフに懐いているわ。お願いよ!」


 三対一。


 スノウもいない。


 だが、ドラッヘン王族の面倒を見ることを了承するわけがない。


 常識的に。


「すまない。俺の最優先はスノウだ。一緒の時間を大切にしたい。結婚の準備もある。王族を預かるわけにはいかない」

「だが」

「でも」

「それなら」


 三人は食い下がろうとしたが、ルフの姿が突如消えた。


 転移魔法で逃げた。


 少し離れた場所で野イチゴを探し始めた。


「逃げられたか。だが、機会はまだある」

「そうですね」

「強引な手法は駄目よ。どうするかは決めたでしょう?」


 個人的に仲良くしよう計画。


「より重要性が増した」

「そうですね」

「ここはアヴァロスよ。それを忘れないように」


 三人は頷き合い、野イチゴを採りに向かった。



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― 新着の感想 ―
[一言] ルフが狙われてるー?!結構な能力者に。 優秀な教育者は世界の宝ですものね。そりゃ奪い合うわけだわ。 今でも世界で一番求められるのは経営者じゃなくてそれの原理を教える先生ですもんね。
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