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聖女からの大降格  作者: 美雪
第九章

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174 ドラッヘンの要望



「魔物の話はしない」

「アヴァロスは戦争で多くの人命を失った。魔物によってより多くの人命を失ってもいいのか?」


 良くないに決まっていた。


 だが、地底湖の周囲は完全に封鎖している。


 現状においては魔物を封じ込められている。


 元々何もない場所だけに、遺跡の側にできた施設以外への危険度は低い。


 魔物がクロスハートへ移動するのを阻止すれば大丈夫ではないかと考えられていた。


 そして、討伐するとしてもアヴァロスの者で行う。


 莫大な報酬を払ってまでドラッヘンのワイバーン騎士団に討伐を依頼することはない。


「アヴァロスがドラッヘンに依頼するわけがない」

「八体では無理そうか?」


 それはつまり、討伐する気があることを意味していた。


「スノウへのお礼か? それとも、アヴァロスに恩を売りたいのか?」

「魔物は強くしぶとい。完全に息の根を止めるまでは油断できない存在だ。魔物を討伐したという情報がないのは、手をこまねいている証拠だ」


 図星だった。


「大恩があるのはスノウであってアヴァロスではない。だが、両国の関係改善に役立つのであれば、討伐への協力を検討してもいい。まずはどのような魔物か知りたい。でなければ、交渉しようがない」


 ドラッヘン国王の言うことはもっともだったが、アヴァロスの機密事情をジークフリードが簡単に話すわけにもいかない。


「私からは何も言えない。交渉は父上として欲しい」

「そう言うだろうと思った。だからこそ、入国手続きをしたのだ」


 不法侵入では王都に行けない。


 アヴァロス国王との交渉も視野に入れ、ドラッヘン国王は正式な入国手続きをした。


「非公式に会談したい。アヴァロス国王に直接伝えてくれないか? 宰相抜きで話がしたい」

「わかった。だが、すぐには無理かもしれない。宰相抜きだと余計に難しい」

「しばらくはアヴァロスに滞在する。その間に返事が欲しい」

「どの位だ? 連絡先も教えて欲しい」

「最長で一カ月程度。場所はここだ」


 ジークフリードの目が点になった。


「ふざけるなっ!!!」

「自然が多く環境が良い。ワイバーンを街中で隠し続けるのは大変だけに、避難所としての修道院を利用したい。使っていない場所を貸してくれないか? 野営用の敷地でもいい。こちらで適当に調える。勿論、寄付金もたっぷり出す」

「駄目だ!!! 無茶を言うな!!!」

「農作業も手伝いますわ!」


 アデルが申し出た。


「ドラッヘンの騎士の実力はご存知でしょう? 加速魔法の技能が大変優れています」

「アヴァロスの騎士の方が上だった」

「オリバーとアルトだけでしたわ」


 それ以外の全員はドラッヘンの騎士よりも作業が遅かった。


 しかも、加速魔法だけを見ればドラッヘンの方が上位。


 オリバーとアルトが勝てたのは、ルフと同じく両手使いと魔力によるサポートをすぐに真似することができたから。


 いわゆる小手先勝負、器用さにおいての勝利だった。


「使っていない部屋は修繕をしていないそうですね? こちらで修繕して宿泊室にするのはどうでしょうか? 来客が来た時に使えるようになります」


 スカイも提案した。


「元々宿泊施設を作る計画はあった。ゼノンに相談しないとだな」

「駄目だ! 断れ! 私の方で改装費用を出す!」

「そうだ! ドラッヘンの者達だぞ? 王族もワイバーンもいる。極めて厄介だ!」


 オルフェスも大反対。


「俺に決定権はない。スノウにある。ここの院長だ」


 全員の視線がスノウへ向けられた。


「スノウ、ここで療養したいよ。病気が治ったばかりだし、もう少しだけゆっくり過ごしたい。助けて!」


 レオはスノウにギュッと抱きついた。


 子供かつ大病から治りたてであることを最大限に活用した懇願だった。


「私からもお願いします。レオの体は良くなりましたが、心の方はもう少しかかるでしょう」


 ドラッヘンの者達は第二王子が病気から快復したことを喜んでいる。


 だからこそ、余計に周囲が騒がしい。


 王子としての勉強と修練を早速開始し、遅れを取り戻すべきだという声もある。


 そういった環境がレオに過度のプレッシャーを与えていることをスカイは説明した。


「レオは急激な変化に疲れています。ゆっくり過ごせる場所が必要なのです。スノウの側であれば安心できます」

「狡いぞ! 別の場所でもいいはずだ!」

 

 オルフェスはそう言ったが、


「わかりました。しばらくの間、ゆっくりしていってください」


 スノウは優しい。そして、神職者だ。


 助けを求める者を拒むわけがなかった。


「但し、修道院における奉仕活動をできる範囲で手伝っていただきます」


 スノウとルフは農作業だけでなく王都への出勤で不在にすることもある。


 ホテルのような世話も配慮もできない。


 自分のことは自分ですることになるとスノウは説明した。


「それでもよろしいでしょうか?」

「大丈夫です。ありがとう」

「必要なものは全て持ち込む。ドラッヘンの者は王族であっても野営や自炊に慣れている。問題はない」


 魔物討伐業をしているからこその技能と耐性があった。


「スノウさんは寛大で慈悲深くて、本物の聖女だわ! そうよね、貴方?」

「そうだな。重ね重ね礼を言う」


 こうして、オクルス修道院にドラッヘン一行が滞在することが決まった。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] まさかの修道院民泊計画が外資導入で実現の運びになるとは。 確かにあっちの言い分はごもっとも。ジークフリートとオルフェスが組んでも分が悪いのがとても新鮮。 [一言] 民泊が本当に民泊…ど…
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