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僕を忘れた君へと紡ぐ。西編  作者: とかげになりたい僕
鏡のように 〜Espelhar〜
15/30

禁忌 〜proibido〜

 ※



 約束の時間はとうに過ぎていた。出された料理が冷めないうちに先にどうぞと勧められ、あまり気が乗らないながらもルエが食事をしていると。

「やぁやぁ、待たせたね」

 肩にコートをかけたレオが、あまり悪いとも思わないような軽い足取りで広間へと入ってきた。呼び出したのはあちらなのだし、時間くらいは守ってほしいと思わないでもない。

 しかし、それこそルエは紋の返還について話し合いに来たのだからと、あまり大きいことも言えず。口元を拭い「いえ」とぎこちない笑みを向けるのが精一杯だ。

「レオ様。ゼロ……私の剣の騎士(シュヴェルトリッター)はどうでしょうか?」

「あぁ、あれね」

 あれ、と言われたことに表情を曇らせるが、腹を立てて機嫌を損なわれても困る。仕方なしに、ルエはなるべく気にしていないように取り繕い、レオに頷いてみせた。

「あれ呼ばわりされて、少しは乱れるかと思ったんだけど……。意外に冷静だね、ルエディア。ご褒美だよ」

 レオは扉に向かって手招きした。すると、扉から顔を覗かせ苦笑いするゼロが見え、ルエは安心したように胸を撫で下ろす。隣で食事を摂るハヤトも、ちらりとゼロに視線をやると、何事もないように食事に戻る。

「ルーちゃん、心配かけてごめんなー。いやー、慣れない土地で気候が合わなかったのかなー」

 いつも通りのへらへらした笑顔でルエの隣に座ると、ゼロも用意された料理を口へと運んでいく。いつもの行儀の悪い姿ではなく、ナイフとフォークを礼儀正しく使いこなすそれに、ルエは違和感を感じ、ついゼロに見入ってしまう。

「……ルーちゃん?」

「あ。い、いえ……」

 慌てて視線を自分の料理に戻す。

 いや、彼も礼儀作法くらい身につけているだけだ。自分が知らなかっただけかもしれない。現にハヤトはそれに対し、何も言っていないではないか。

「じゃ、本題に入ろうか」

 レオの声で我に返る。手元の料理はあまり進まなかった。

「ルエディア。キミは(ノウス)を知ってる?」

「はい。初代の神女(みこ)が封印したと聞いています。力を求めたヒトを大地(ガイア)ごと……」

 ルエの答えに、レオはフォークで肉を思いきり刺し「そう」とにやりと笑う。

「ではそのヒトとは誰なのか。王族だよ、知ってたかい?」

 肉をぺろりと一口で平らげ、レオは次の肉をまたもやフォークに刺す。

「まぁ、その王家の名はもう残っちゃいないし、ボクでさえわからない。当時の他の王家、ボクらのご先祖様は、禁忌に触れたかの王家を追放、そして封印することを決めた」

「禁忌、とは?」

 食事を摂り終えたハヤトが、口元を拭い、冷ややかな目つきをレオに向ける。大して気にもせず、レオは刺したままのフォークを掲げると、

「神を、殺したんだ」

「……陛下、流石にそれは信じられません。ならばなぜ元素が満ちているのですか」

「神がいないから神柱(じんちゅう)とかいう胸糞を今でもしているんだよ。神がいれば、それをする必要は全くない。いいかい?」

 レオは肉を頬張り飲み下すと、椅子の上に立ち、フォークを1人1人に突きつけていく。あまり気分がいいものではないが、何やら気持ちよさげに話しているので黙っていることにする。

「逆なんだよ、逆。神がいれば元素は満ちたまま。いないから元素を満たす為に神柱(じんちゅう)を造る。神を殺し取り込んだ、名も忘れられた王家から神を戻せばいい。封印されたままの(ノウス)からね」

 話し終え満足したのか、レオは鼻歌まじりに席へついた。知らなかったことが多すぎて、正直理解が追いついていないのは確かだ。隣のハヤトも同じようで、何かを考え込んでいるようだった。

「……レオ様、それはどこで知ったのですか?もし書物等があれば、私も拝見したいのですが」

「ふーん、勤勉だねぇ。いいよ、明日案内してあげるよ。だからルエディア」

 名前を呼ばれ緊張が走る。

「お残しは、ダメだよ?」

「……はい」

 にやりと笑うレオに、ルエは渋々と食事を口に運び出した。結局食べられなかった分は、ゼロに食べてもらったのだが。




 ハヤトに割り当てられた部屋にて、3人は先程の内容を話し合うことにした。ベッドの縁にハヤトが座り、ソファにルエ、簡素な椅子にはゼロが腰かける。

「ハヤトくんはどう考えました?私は突然過ぎて、何がなんだか……」

神柱(じんちゅう)については、恐らく間違いではないだろう。ならば神女(みこ)は何の声を聞いているのか、王の証である石とは一体なんなのか。封印が解かれようとしていると、ルドベキア陛下は言っていた。なぜ今になって……」

 無言が続く。結局のところ、明日レオに案内されるしかないのだろうと結論づけ、ハヤトは2人を部屋に戻そうと声をかけようとし。

「なぁ、神柱(じんちゅう)を失くすには、神サマを戻すしかねーんだろ?で、それをオレたちはやりたいわけだ。なら解けばいーじゃん、封印」

 いつもの軽口を叩くようにしてゼロが言うが、その表情はいつもと違い、なぜだか感情が読み取りづらい。やはり違和感を感じ、ルエはゼロへと歩み寄った。

「ねぇ、ゼロ。まだどこか悪い、とかじゃないですよね?確かに神柱(じんちゅう)を失くしたいです。けれども、そんな簡単に言えることでは……」

「そーだよな。ごめんな、ルーちゃん」

「いえ……」

 へらへらと笑うゼロ。それを不安げに見つめるルエ。

 ハヤトはため息をひとつつき、扉へと歩いていく。

「今日はもう休もう。明日陛下についていけばはっきりするだろう」

 扉を開けてやると、ゼロが伸びと欠伸をしながら出ていった。その後ろ姿は変わりがないように見えるが、ハヤトもまた違和感を感じるのも確かで。ゼロが部屋に入るのが見えたところで、ルエは「あの」と切り出した。

「ゼロ、おかしいですよね?」

 その問いに、ハヤトはどう答えるべきか少し迷い、言葉を選びつつも口を開く。

「……ルエ、陛下は知識と技量も持っている。同時にあの方は、自分の知識を増やすことに対して貪欲だ。例えば、自分と違うヒトはどういった行動、感情を持っているのか。加護を受けたヒトはどれだけ元素に耐えられるのか。白髪は他のヒトとどう違うのか」

「ハヤトくんもゼロも、なんら私たちと変わりないです……!」

「変わりないことを知るだけでも、あの方にとっては知れたという結果に過ぎない。ゼロも、何かしら」

 そこまで話し、ハヤトははっとしたように顔をあげた。手の平サイズの正方形の箱のようなものが、宙に浮いていた。ハヤトに気づかれたとわかると、それは逃げるようにして暗闇へと溶けていく。

 小さく舌打ちし、ハヤトは手元にあったペンを鋭く投げつける。ペンは箱を貫通し、そしてヒビが入ると力なく床へと落ちていった。

「これって……」

「映像を記録し、後から見れる神機だろう。相変わらず、悪趣味なものを造っているようで何よりだ」

「監視、ですよね」

「あまりいい気分でないのは確かだがな。明日も早い、お前もそろそろ休むといい」

 そう促すも、ルエはなかなか自室へ向かう気配がない。

「……一緒に寝たいのか?」

 まさかとは思うが一応聞いてみる。

「ち、ちがっ」

 真っ赤になって反論してくるが、それではまるで肯定しているみたいではないか。仕方がないと、ハヤトがルエを中へ招き入れようとするも、ルエは真っ赤なままで手をすり抜けていく。

「ハヤトくんの頭の中こそ、1回リセットしてもらったほうがいいと思いますよ!」

 振り向きざまそれだけ言い残し、ルエは逃げるようにして部屋へ入っていく。ハヤトもまた、小さくため息をつくと扉を閉めた。


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