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第3話 異端な部活のメンバーズ

木曜日。昼頃に部室に行くと、珍しい顔があった。

「おー双葉、よっすよっす」

「衛利、珍しいな」

衛利はうちのメンバーで唯一まともに授業を受けている。だからこの時間に部室に居るのは珍しい、というか普通はない。

「ん〜ちょっとな、休憩よ休憩♪」

まぁ気にすんな♪と、おどけたように衛利が笑う。

(いつもこんな調子だけど、()にいるってことはこいつにもいろいろあるんだろう)

双葉もそれ以上は聞かずに、そのまま衛利と雑談していると、部屋の隅からガサゴソと音がなった。玖音先輩のスペースだ。

「ん、んあ〜、あれ衛利くん、珍しいね〜」

のそっと、玖音先輩が起き上がる。

「玖音パイセン、いたんすね」

「いたよ〜昨日から」

あくびしながら玖音先輩が答える。昨日からってことは、この人あのまま残ってたのか。

「また徹夜すか?」

「いや?帰ってないだけでちゃんと寝てるよ」

(何時間寝たんだ?)

昨日俺達が帰ったのが七時頃で…ダメだ分からん。

なんでも、集中し過ぎると時間感覚がなくなるらしく、玖音先輩は学校に泊まっていることが多い。

「警備とかに見つかんないで下さいね」

「大丈夫だよ〜、旧校舎(こっち)までは滅多に来ないし」

まぁそれもそうか。というか…

「てか玖音先輩、部長は?」

そう、部長がいないのだ。いつも絶対居るのに。

「しびれを切らしてゲーセン行ったよ」

「ゲーセンって、中央通りの?」

「うん」

「俺行ってきます、一人だと心配なんで」

あの人をゲーセンなんて治安が良くないところに一人にするのは心配だ。()()()()もあるし…

「分かった、『今日はこもる』って言ってたから行けば会えると思う」

「あざます」

そう言って、双葉は足早に部室を出ていった。

「…あれで本人にその気が無いってマジすか?ほぼ恋人でしょ」

双葉が出ていったあとも会話は続く。

「外から見たら相思相愛なんだけどね〜」

「双葉は鈍感なとこがあるからな、昔から」

「そうなのかー、って真姫!?いつから!?」

「真姫ちゃん!?」

気づけば背後にいた真姫に二人は驚いて飛び上がる。

「衛利が部屋来る前」

「いたなら喋れや!」

「ごめんごめん、『せっかく来たのに一人かよ…』ってボヤくの見てたら面白くて」

はははと笑いながら真姫が答える。

「ずっといたの?」

「はい、先輩の芸術的な寝顔も拝ませて貰いました」

真姫がニヤ〜っと笑ってスマホを振る。

「この子怖い…」

「こいつ、こういうとこありますよ」

真姫と同じクラスの衛利は、玖音にそう言い、ため息をついた。


……………………………………………………………


ゲーセンについた双葉は圭を探していた。

(いねぇ…)

見渡す限りゲーム筐体に覆われていてとてもあの身長の圭を見つけられる気がしない。

(ん?)

クレーンゲームの通りに見えた、小さな背中。大量のぬいぐるみを抱えていた。急いであとを追うと、その先に圭がいた。

「圭」

「ふ、双葉!?なんで!?」

圭が乙女のような驚き声を上げる。

「心配で見に来たんだよ。ったく…」

この人は自分のその小さな体躯がどれだけ一部の人間に刺さることを分かっていない。

「悪いな、てか、そんなに心配すんなって」

「なんかあってからじゃ遅いだろ」

「それもそうか、ありがとな双葉」

双葉は圭からぬいぐるみやらフィギュアやらを受け取り、帰路についた。学校へ向かう道すがら、「今日は大収穫だぞ♪」と獲ったぬいぐるみやフィギュアを見せてくる圭はまるで子供のようだった。 


〜〜〜


「たっだいまー!」

「おかえり圭〜、戦利品は?」

「これっす」

双葉は持っていた大量のぬいぐるみやらフィギュアやらを圭のソファに置く。

「なんか欲しいのあったら持ってっていいぞ」

「いいんすか!?」

「私はクレーンゲームしたいだけだからな、基本。ってか衛利居たのか」

「俺の印象薄くない!?」

「衛利のキャラが確立したね、あ、これ被写体にいいな」

「だな」

「双葉まで!?」

衛利がガクッと肩を落とす。

(こいつはいちいち反応が面白くていじり甲斐があるな)

「双葉もいるか?」

大量のぬいぐるみの中から顔を出し、圭が言う。自分の分のぬいぐるみは確保していたらしい。

「じゃあ…」

双葉は、残っているものの中の、耳の垂れた犬のぬいぐるみに目が留まる。

(なんとなく部長に似てるな…)

「じゃあこれにします」

「おうよ」

真姫はさっき選んだフィギュアをモデルに絵を書き出していた。

「衛利、取って」

「雑用させんな」

「"取って"」

「こいつ…」

衛利はいやいや雑用をやらされている。

「俺も続きやろ〜」

玖音先輩もゲームに戻り、部室の中に静けさが戻る。

「暇ですね、部長」

やることが無くなり、暇になった双葉は圭に話しかける。が返事がない。

「…部長?」

「zzz……」

見るとぬいぐるみの中ですやすやと寝息をたてていた。

「………」

無防備すぎるだろ…

「圭は小さいからね〜、体力が少ないんだよ」

玖音先輩がパソコンからは目を離さずに言う。

「午前中も双葉が来るまで寝てることあるし、なんでも睡眠十時間は欲しいらしいよ〜」

「そうなんすか…」

双葉はいつも圭が座っているソファへ圭を寝かせ、毛布をかける。

しばらくすると、廊下からハイヒールの音が聞こえる。

ガァーン!

「さぁさぁ仕事だ少年少女…おい双葉、なんで睨む」

「…別に」

(部長が起きるだろうが…)

「あーそういうことか、すまんすまん」

「圭寝起き悪いからね〜」

「そうなんすか」

「少し興味があるな、寝起きの部長」

真姫が圭の寝顔を写真に撮りながら言う。

「やめておいた方がいいよ〜」

「そんなにすか」

「衛利くんやってみる?」

「…遠慮します」

「で都乙さん、今日のターゲットは?」

「ん?あぁ、名前は門崎雄二、罪状は窃盗だ、被害者宅の金庫をごっそりだ。H(ハザード)C(クラス)キロス、ヴァイズは不明だ」

「不明て」

「厳密には〈透明化〉のはずなんだが、それだけじゃ説明がつかないことがある。いくら透明になっても鍵のかかった部屋の貫通はできないだろ?よって不明」

「なるほど…じゃああたしと衛利、玖音先輩で行きますか。双葉は部長を見てみてくれ」

三人は立ち上がり、各々準備を始める。

「悪いな、頼む」


……………………………………………………………


「都乙さんによると、ターゲットの能力は透明化プラスα、なんなんだろうね」

「透明ってのが厄介だな」

いつもの様に屋上からターゲットを探す。都乙から行動予測は聞いているが、相手が見えないのであれば探すのも困難だ。

「う〜ん…なんかいいの…」

玖音がバレットケースを漁る。

「この前のサーチの弾丸、無いんですか?」

「玖音パイセンの弾丸は一発撃ったら同じのは使えねえんだよ」

「なるほどね」

真姫は思考を続ける。

(あの弾丸が使えないなら…うん、試してみよう)

「衛利、ほら」

「何だ」

真姫はそう言って衛利にカラーボールを渡す。

「なんだ?おいこれ…」

「"当てろ"」

「うぉ!?お、おりゃ!」

衛利が投げたカラーボールは複雑な軌道を描き、下に居た一人の男に当たる。

「あいつだ、"行くよ"」

「言われなくても行くっての!」

「レッツゴー!」


……………………………………………………………


下に降りた三人は、カラーボールが当たった男を追いかける。透明になるが、カラーボールのおかげでしっかり追えた。

「あたしのナイス判断のおかげだね」

「そうだね〜」

「あんた、窃盗容疑で逮捕させてもらうぞ」

ターゲットを裏路地に追い詰めた衛利達は、ターゲットに詰め寄る。

「くそっ!俺は()()()に力を貰ったんだ!お前らみたいなガキに捕まるか!!」

そう言ってターゲットは再び透明化する。

「なんであんな小物発言ができるのかね?」

「そんなもんだろ」

カラーボールの軌道を追い、逮捕を試みるが…

突如としてカラーボールの跡が消えた。

「な!?消えた!?」

「こっちは見てたよ!?」

(出入り出来る場所は玖音先輩が見張ってた…なら上?いや、流石に無いか…)

「おら!」

「真姫!」

衛利が飛んできて真姫を庇う。

「どうなってんだおい!あっちは壁だぞ!?」

「………」

(透明化…プラスαの能力…あの方…力…)

「衛利、玖音先輩。ターゲットの追加能力は恐らく透過」

「透過?じゃあそれで壁とか貫通してるのか?」

「多分な」

「よし!タネが解れば何とかなる!」

衛利は落ちていた鉄パイプを拾い上げる。

「俺のヴァイズが火を吹くぜ!」

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