表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

第1話 楽園の様な日常

─「貴方を救う。だから今度は…」

少女が語る。誰だろう、知っているはずなのに、分からない。

()()()()()()…」

少女から光が溢れ、あたりが白んでいく。

「貴方の決断が全てを決める」─


「…はっ」

(またこの夢…)

いつからか、ずっと見ている夢。知っているはずなのに、顔が、名前が出てこない少女が語りかけてくる、いつも同じ所で目覚めてしまう夢。

(小さい頃の記憶、とかなのか?)

俺には十歳までの記憶が無い。まぁ、生活は出来るし、不便に感じたことはないが。

「さて…行くか」

一人暮らしなので、楽でいい。

(ちなみにちゃんと両親の事は覚えている、単に高校が寮生活だっただけだ)

チャリに乗り、寮を出る。

(今日授業なんだっけかな〜月曜だから…数学と〜あ国語か…サボろ。つーか寮なのに何で距離離れてんだよ面倒くせぇ…あ着いた)

到着した俺は渋々階段を上がり、席につく。

(さぁて、今週も頑張るか〜)


……………………………………………………………


三時間目の休み時間あたりで教室を抜け出し、部室へ向かう。

(部長は居るとして、あと誰が居っかな〜)

今の時代では珍しい旧校舎にある部室へ着くと案の定人の気配があった。

「おう双葉」

「やっぱ居たんすか部長」

部長と呼ばれた長い髪の少女が部屋の中央のソファーから身を起こす。

「今日は遅かったな」

「まぁ、流石に月曜なんでね。部長は?」

「そもそも教室行ってねぇ」

「聞いた俺がバカでした」

(この人が授業受けるわけねぇや)

そもそも俺達は()()で授業受けなくても良いんだが。

「部長一人っすか?」

「いや、おい玖音」

玖音先輩は部長と同じ二年で、部長とは古い知り合いらしい。

「んん~、あ圭〜おはよ〜」

「もう昼だボケ」

玖音先輩が自分のエリアから出てくる。ちなみに部室は部員ごと計5つのエリア分けがされている。(部長は無視してる)

「玖音先輩今日は何してたんすか?」

「ハッキング」

「え」

「冗談冗談、ヴァイズの調整。弾丸に込めてたんだよ」

玖音先輩が伸びた綺麗な金髪を後ろで纏めながら言う。

(ビビった〜)

この人の場合、前科があるから怖い。このナヨナヨした成りで。

「玖音、お前髪なんとかしろよ、男だろ」

「圭が言う〜?大体、男だって髪長い人いるだろ〜そんなこと言ったら圭だって結びなよ〜」

「そーいや鬱陶しかったんだよな。双葉、結べ」

「はいはい」

こう言われてしまっては俺に拒否権は無い。

「おい双葉、放課後開いてるか?」

嫌がらせ程度にツインテールにしていると部長が声をかけてきた。

「今んとこ」

「ゲーセン行くぞ」

「お供しますとも?」

「俺も行きた〜い」

「お前来ると取れねぇからダメだ」

すると外から何やらバイクのエンジン音が聞こえてきた。部屋の中に少しピリッとした空気が流れる。

カッカッカッ。

リズムよく歩く音が廊下から響く。

ダァン!!

部屋の扉が勢いよく蹴破られる。

「青春してるか?少年少女」

砂ぼこりの中にニカッと笑ってそう言う女性が立っていた。

「なんで毎回蹴破んだよ」

部長がヴァイズを展開し、飛んできた扉を受け止めて言う。

「私なりの挨拶だが?」

「挨拶ならしょうがないか…ってなるか!」

この人は空町都乙(からまちとおと)。一応警察官であり、俺達がこの()にいる原因でもある。

「そんな事はさておき本題だ」

「そんな事?」

(この人よく刑事やってるな)

「ある程度なら捜査の範囲内だからな」

「心の声に反応するのやめてもらっていいですかね」

「聞こえた、ってか感じたんだから仕方ないだろう」

(この人のヴァイズ面倒くさいな…)

でもこの人には最適か。

「さてさて今回のターゲットだが、最近街を騒がす銀行強盗だ名前は三輪秋則」

「ヴァイズは?」

「詳しくは分からんが肉体系(フィジカリア)だろう。素手で金庫破ってんだから」

おもしろwと都乙が笑う。

「で?こいつを引っ捕らえればいいわけ?」

「そういう事だ」

「自分で行けばいいのに〜」

「そう言ってくれるなよ玖音。この私のヴァイズは戦闘向きじゃあ無いんだ。あ、来るぞ西交差点の信頼金庫だ」

都乙の左目が光っている。ヴァイズの力だ。

「さっさと片付けてゲーセン行くぞ」

「オイッス」

「俺留守番〜」

「あ?」

「まだ弾丸込めきってないも〜ん」

「まぁ双葉と圭がいれば大丈夫だろう。ほら行った行った」

都乙がタバコに火を点けながら手をひらひらとさせる。

「この人…」

「双葉行くぞ」

()()()に着替え、双葉と圭は西交差点へ向かった。


……………………………………………………………


「…あいつか?」

「多分な」

銀行の向かいのビルの屋上からターゲットと思しき人物を捕捉する。銀行の路地裏でウロウロしている。

圭がヴァイズ〈微細集合体(ナノ・クラスタ)〉を展開し、戦闘態勢に入る。

「ん、ん〜よし!いくか双葉」

圭がぐ〜っとのびをする。双葉も手袋をしっかりはめ、気合を入れる。

「あいさ部長」

「外で部長って呼ぶな」

圭のヴァイズ…ナノでつくった足場をつたい、下へ降り、ターゲットの後ろへつく。

「ちょっといいかいお兄さん」

部長がターゲットに近づき、声をかける。

「あん?なんだ小娘」

「あんた、連続銀行強盗犯だろ?」

「!!!なんで!?」

「はい認めた〜。ヴァイズ犯罪特別法違反で逮捕ね」

部長が手錠を生成しようとしたその時…

「っクソ!」

ターゲットがヴァイズを発動した。図体が先程の倍以上になっている。

「部長!」

「大丈夫だ。こりゃ金庫も素手で破れるわ」

ナノでつくった壁で、圭は無傷だった。

「こんな小僧どもに捕まってたまるかぁ!!」

そう雄叫びを上げ、ターゲットの拳が飛んでくる。

「っと、H(ハザード)C(クラス)はキロス位ですかね」

「だな」

圭が展開したバリアによって、相手の攻撃は全て防がれていた。

「ぐぉぉぉ!」

ターゲットが拳を握り締め、渾身の一撃を振り下ろす。

「ぐっ…」

バリアが負荷に耐え切れず所々噴霧していく。

「は…はは!おらどうした!」

勝ちが見えたと思ったのか、ターゲットが次々と拳を叩き込む。

ファッという軽い音と共にバリアが消滅する。

同時に回り込んだ双葉が手袋を投げ捨て、ターゲットの背中に触れる。

「オラァ!ってあれ?」

バリアが溶け、無防備になった圭に殴りかかったターゲットは通常のサイズに戻っていた。

「なんでだ!ヴァイズが発動しない!?」

驚くターゲットを尻目に、双葉は圭に手を伸ばす。

「大丈夫か?圭」

「ちょっと尻もちついたぐらいだ」

尻もちが嫌だったのか、圭の顔は真っ赤だ。

「良かったです部長」

「おま…急に名前呼ぶなし…」

「へ?」

「おい!」

ターゲットが何やら怒鳴っている。

「どうなってんだ小僧!俺に何をした!」

「俺のヴァイズを使ったんだ」

「お前のヴァイズ…」

楽園の失墜(パラダイス・ロスト)…俺が素手で触れた相手のヴァイズを永久に消す」

「は?永久って…俺のヴァイズは!?」

「無い」

「ふ、ふざけやがって!!!」

ターゲットは怒り狂い、双葉に殴りかかる。「はい、逮捕」

その手に圭が手錠をかけた。

「クソっクソっ!」

その後わざとらしくやって来た都乙に男の身柄を引き渡し、事件は終息した。


……………………………………………………………

「ねぇねぇ見た!?あの子だよ!」

「ですね、触れただけでヴァイズを消し去った、早速報告しましょう」

「え〜今行こうよ!」

「ダメですよ、警察もいる。帰りましょう」

「ざ〜んねん」


……………………………………………………………


「結局ゲーセン行けなかった」

「まぁまぁ」

不貞腐れる部長を後ろに乗せ、寮へと向かう。

「いっそのこと寮にゲーセン造るか」

「流石にだめでしょう」

「てか双葉、部室の外で部長呼び禁止な、敬語も」

「なんですか」

「なんでもだ!」

そう言えば前に玖音先輩が『圭は双葉の事、相当気に入ってると思うよ〜』と言っていた。

(関係あんのか?)

「分かった、敬語はやめる」

「部長もやめろ」

「やめねぇ」

「やめろ!」

「やめねぇ」

言い合いをしながら、寮へと向かう坂を下っていった。

大谷双葉

おおたにふたば

身長 176cm

ヴァイズ 楽園(パラダイス)失墜(ロスト)

素手で触れた相手のヴァイズを永久に使用不能にする。

備考 とある事件がきっかけで都乙に部へ入れられた。口と目つきが悪い。


楓佐里圭

かえさりけい

身長 146cm

ヴァイズ 微細集合体(ナノ・クラスタ)

自身から生成した細胞サイズの物質〈ナノ〉を操り、あらゆる物体を創り出す。

備考 口が悪い。ギフテッド。ある件で都乙の厄介になり、部に入った。


空町都乙

からまちとおと

身長179cm

ヴァイズ サブリミナル・アイ

左目で対象の行動などの予知、右目で感覚の視覚化にを行う。

備考 扉を蹴破るのは挨拶だと思っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ