弱小野球部レベルアップ!! ~少年野球編~
僕らの少年野球チームはとにかく弱い。
春の地方大会初戦は43対0で大敗。
その上、エースのタカシは相手選手に八つ当たりをして乱闘騒ぎにまで発展するしもう最悪だ。
そんな弱小チームに新しい監督がやって来た。
そして驚くことに彼女を一言で表すと "ギャル" だった。
「はーい、みんな集合案件ー!」
練習場の隅から黄色いメガホン片手に部員を集める監督。
今日も学校帰りで直行したらしく、相変わらず竹下通りとクレープがよく似合いそうだ。
「みんなアップはおk?」
「「「はい!!」」」
「おー、元気な返事だ。良き良きー。それじゃ今日の練習内容発表会~~。題して、 "脱ドア! パーペキスイングを身に着けろ!!" 練習ー。わーぱちぱちぱち」
監督は後ろのビール箱からバットを引き抜く。
「脱ドアは "ドアスイング系キッズ脱却" の略。とりまお手本見せる適な? それじゃあタカシお手本依頼」
「よっしゃ任せろ! オレが完璧なスイングを見せてやるぜ!!」
監督からバットを受け取るタカシ。そして3回素振りをすると。
「どうよオレの完璧なスイングは」
「お、さすがタカシやるぅ。期待を裏切らない男」
「そうだろ、そうだろ」
「これがドアスイング系キッズだからみんな真似しないようにー」
「「「はい!!」」」
「えー! 嘘だろ!?」
「タカシ、残念だけど監督の言う通りだよ」
と、部員の一人。
「タカシ、ドンマイ」
「くそ、オレ恥さらしじゃねーかよ!!」
するとタカシに目線を合わせる監督。
「良いかいタカシ、人は間違いを認めた時、キッズを脱却するのだよ。大人の私には分かる」
「うん。……って監督もまだ未成年じゃねーか!!」
なんやかんやで脱ドアを果たした僕らは一つレベルアップしたのだった。