第19話 ヴゥーキ
2週間後の狩龍団への総攻撃に向けて各々が実力を磨く中、ナノは大から拝借したフード付きパーカーの分析とその性質を使った新しい隊長服の製造に勤しんでいた。
コンコンコンコン!!!!
大の部屋の扉を誰かがノックした。
「はぁ〜〜〜〜い!!!!」
読書中だった大はページをめくる手を止め、ドアを開けに向かった。
「あのぉ・・・・」
扉の前にはデースが立っていた。
「デースちゃん・・・・、どうしたの????」
そこにはモジモジしながらデースが立っていた。
「これを・・・・、ナノちゃんに言われて持ってきたのです!!!!」
そう言って渡されたのは大がナノに半ば強引に奪われたフード付きパーカーであった。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!戻ってきたかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!俺の大切な大切なパーカーよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
大はパーカーに頬をスリスリして再会を喜んだ。
「じぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
はっ!!!!
大は我に返った。
やばっ!!!!デースちゃんがめっちゃ見てる!!久しぶりにパーカーが戻ってきて我を忘れて喜びすぎた!!これじゃ変質者だ!!!!
「あはっ!!あははっ!!なんだかいい香りがするなぁって思って・・・・、少し香りを味わっていただけだよ・・・・、だから・・・・ねっ!!別に変なことじゃないんだよ・・・・。デースちゃんも怖がらなくていいからね・・・・」
「じぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
大の必死の弁解(嘘)にも関わらず、デースの不思議なものを見るかのような視線は変わらなかった。
「じぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
・・・・と、その視線に対して大は違和感を覚える。
あれっ??デースちゃん俺を見ているわけではない・・・・??
そう。デースは大を変質者のように見ているわけではなかった。
「何??デースちゃん俺の部屋に気になるものでもあるの??」
「はい・・・・、あれ・・・・」
そう言ってデースが指差したのは、大の部屋に乱雑に置かれたいくつもの本であった。
「あぁ・・・・・・・!!!!本が気になっていたんだね・・・・」
大は自分が変質者のように見られているのではないとわかって安心した。
「デースちゃん本が好きなの????よかったら見ていく????」
「いいんですか????」
そう言って喜ぶデースの目は、貴族の舞踏会を照らすシャンデリアのようにキラキラ輝いていた。
「う・・・・、うん・・・・」
デースの迫力に反対に大が押されるような形になっていた。
「では、おじゃましまぁぁぁぁぁぁぁぁす!!!!」
トテトテトテトテトテトテトテトテ!!!!
サ●エさんのタ●ちゃんが歩くときのような音が脳内再生されそうなほど軽快な足取りで、デースは大の部屋に入り本の元へと向かった。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!すごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉいいいいいい!!!!大さん、こんな難しい本を読んでいるんですね????」
デースは本を手にとって大に見せた。
その本は医学書だった。
「いや・・・・、俺の魔法のパワーアップのために読んでいただけでさ・・・・」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ????本を読むと魔力がアップするんですかぁぁぁぁ????」
「いや・・・・、魔力ではないんだよね!!俺の魔法は特殊だからね、想像力が結構大事なんだよ!!!!その想像力を養うために見ている感じかな・・・・。俺の場合、デースちゃんやダーヨみたいに魔力を高めてもあまりパワーアップしないんだよね・・・・」
「そうなんですか・・・・??私も何度か見ましたけど、デコボって本当に不思議な魔法ですね????」
「まぁ・・・・、そうだね。だからこそ使い方次第で無限の可能性があるとも言えるんだけどね・・・・」
「わぁぁぁぁ・・・・、難しいことばかり書いてある・・・・、私には全然理解できませんね」
「はははははは!!!!俺も全て理解しているわけではないからね・・・・。知りたいところだけ知るために読んでいるような感じかな・・・・」
「こっちのは何ですか????」
デースは別の本に手を伸ばした。
「わぁぁぁぁぁぁ!!!!これは花の図鑑ですね!!こっちは動物の図鑑!!こっちは食べ物の図鑑!!」
デースは大の本を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返し、じっくり中を読むというよりは、ひとつひとつザッピングするような感覚で楽しんでいった。
「あっ!!!!これっ!!!!ヴゥーキ!!!!今日発売の最新号じゃないですか??」
デースはそのヴゥーキを手に取り大に見せた。
「あぁ・・・・それね!!!!それは、さっきダーヨが持ってきてくれたんだ」
「私も毎月買っているんですよ!!」
「そうなんだ・・・・、デースちゃんオシャレだもんね」
「いやぁ・・・・、それほどでもぉぉぉぉぉぉ」
愛嬌がたっぷり詰まった笑顔でデースは笑った。
「でも、それだけじゃないんですよ!!!!大さんは知らないかもしれませんが、ナノちゃんがこの雑誌のモデルをやっているんです!!!!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!マジ????」
「はい!!マジです!!」
屈託のない笑顔でデースが答えた。
「だってあいつ、いっつも白衣しか着てなくね????」
「やだもう、大さんったら・・・・、それはお仕事中なんですから当たり前じゃないですか!!ナノちゃんって、私服がとぉぉぉぉぉぉってもオシャレで可愛いんです!!!!私はいつもナノちゃんをお手本にしながら、可愛さを追求しているですよっ!!エッヘン!!」
デースは腰に手を当ててドヤった。
「ナノにそんな一面があったなんて・・・・、人は見かけによらないというけれど、まさにこのことだな!!」
「大さん!!一緒に見ましょうよ!!」
そう言うとデースはヴゥーキを持ったまま大に近づいた・・・・、近づきすぎなくらい。
ピトッ!!
ちょぉぉぉぉっと待てぇぇぇぇデースちゃん!!胸が・・・・、胸が当たっているんだがぁぁぁぁ!!!!自覚ありますかぁぁぁぁぁぁぁ!!積極的すぎるぞぉぉぉぉ!!はっ・・・・、落ち着け大!!こんなことに動じていてはいけないぞ!!平常心だ!!平常心だ!!すぅぅぅぅぅぅ、はぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜。
大は深呼吸した。
ふふふふふふ!!私は知っているのです!!大さんとダーヨちゃんはまだ正式な恋人同士ではないことを!!だったら、まだ私にもまだチャンスがあるのです!!男性は積極的な女性が嫌いではないと聞きます!!大さんもきっと同じはず!!ダーヨちゃんがゆっくりしている間に、私が大さんを振り向かせてみせるのです!!そして・・・・、大さんと2人であんなことやこんなことを・・・・・・ムフフフフフフフフフ!!!!
デースは満面の笑みを浮かべていた。
デースちゃんすっごい笑顔だ!!!!そんなにこのヴゥーキって雑誌が読みたかったんだな!!まぁ、今日が発売日だって言ってたしな。俺も週刊少年ジャ●プを発売日に買って、ワ●ピースを読むときこんな感じだったもんな・・・・。わかるよデースちゃん!!そのワクワクする感じ俺にもわかるよデースちゃん!!
はぁぁぁぁ、大さんとこんな近くで同じ雑誌を見るなんて、これってもう恋人同士なんじゃ・・・・、ムフフフフ、あぁぁぁぁぁぁ!!ワクワクするわぁぁぁぁぁぁ!!!!
ピラッ!!!!
それぞれの思いが交差しながら本日発売のヴゥーキがめくられていく。