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第13話 なんだかマーベラス

「えっ??えっ??そちらのパーカーというお召し物が・・・・、ドラゴンの胃酸を弾く・・・・、それは本当ですか????」


 マースは(まさる)の言葉をにわかには信じきれない様子であった。


「マース!!本当だ!!」


 大が虚偽を言っているわけではないと諭すかのようにヨナがフォローした。


「本当なのか????」


 デーショも信じきれない様子であった。


「まぁ、嫌になるよな!!!!あれだけ私たちが悩んできた課題をどこの馬の骨とも言えない、こんな非力そうな男が、本人の自覚もなしに解決してしまったんだから・・・・」


 ヨナはそう言うと、両手をそれぞれ"Vの字"に軽く曲げ、"ふぅ〜やれやれ"といったジェースチャーをして見せた。


「ヨナさんはその瞬間を目撃されたのですか????」


「あぁ・・・・。ただ、その時はタウンドラゴンだったがな・・・・、まぁ、同じ体質をしているから、カントリードラゴンの胃酸も同じように弾くだろう!!!!」


「私も見たのだよ・・・・」


 ヨナの発言を後押しするかのように、ダーヨも口を開いた。


「ということは・・・・」


 そう言うと何かを目で合図するかのように、マースは白衣を着た緑色の髪の女性に目をやった。


「ちょっと、大くん!!!!そのパーカーとやらを僕に見せて欲しいの!!!!」


 白衣を着た緑色の髪の女性が大に話しかけてきた。


「ナノの血が騒ぎはじめているぞ・・・・」


 ヨナがナノをほんのりからかうように言った。


サスサスサスサスサスサスサスサス!!!!

バサバサバサバサバサバサバサバサ!!!!

ムギュムギュムギュムギュムギュムギュ!!!!

ビヨーーンビヨーーンビヨーーンビヨーーンビヨーーンビヨーーン!!!!


 ナノは大のパーカーを手当たりしだいにこねくり回した。ただここで一つ問題が発生。


 こいつ大胆すぎないか????


 そう、ナノは大がパーカーを着た状態のままでこねくり回していたのである。そのこねくり回し方も大胆で、大の後ろから覆いかぶさるようにして体を密着させ、大の方から前へ手を伸ばし、胸の"COFFEE (コーヒー)BEANS(ビーンズ)"と書かれたロゴの下あたりの生地を触るというもの。そして、その結果・・・・。


 当たってるって!!!!当たっていますって!!!!あなたのたわわに実ったマシュマロみたいに柔らかいお胸が、私の背中に当たってるって!!!!イヤイヤイヤイヤ・・・・、ちょっと待てよ!!!!こんなもん、はたから見たら前戯(ぜんぎ)じゃねぇか!!!!ちょっとやめろ!!!!いや・・・・、やめないでください!!!!どうぞこのまま私のパーカーをこねくり回してください!!!!・・・・なんて言ってる場合じゃないけれど!!!!なんだかマーベラス!!!!


 大は新しい性癖を手に入れかけようとしていた。・・・・が、次の瞬間。


ピョコン!!!!


 ナノは大から離れてしまった。


「触ってみただけではわからなかったの!!!!これは、もっと詳しく研究する必要があるの!!大くん!!ちょっと脱いで、そのパーカーを僕に渡すの!!!!」


 そう言うとナノは無理やり大のパーカーを脱がしにかかった。


「まぁ!!!!なんて大胆な・・・・、じゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!いきなり何すんだよ!!!!俺はこれしか服を持ってねぇんだよ!!!!」


「いいの!!いいの!!とりあえず脱ぐの!!!!」


「よくねぇよ!!!!こんなの追い剝ぎじゃねぇか!!!!お前、可愛い顔して、やっていること犯罪だからな!!!!」


ピタッ!!!!


 ナノの手が一瞬止まった。


「か・・・・、か・・・・、か・・・・、可愛い・・・・????」


「あぁ、可愛い顔してるだろうが!!!!」


「ぼ・・・・、ぼ・・・・、僕・・・・、が・・・・・????」


「他に誰がいるんだよ!!!!」


 顔を赤くしてうつむくナノ。それは明らかに喜んでいる表情であった。しかし、その喜びは一瞬にして"このパーカーの実態を知りたい"という欲求に追い抜かれてしまった。


「そんなことより、早く脱ぐのだよ!!!!」


 再びナノの手は大へと伸びた。


 えぇぇぇぇぇぇ、この娘グイグイくるんですけどぉぉぉぉぉ!!!!


 大は心の中でギャルのごときツッコミを披露した。


「ちょっと待て!!!!わかったから、ちょっと待て!!!!」


ピタ!!!!


 まるで子犬のように大の言葉でナノは手を止めた。


「この場に女性しかいないから、こんなこと聞いても無駄かもしれないが、念のため聞かせてくれ!!!!ここに俺が着れそうな服って何かあるか????それがあれば、俺は今すぐにでも脱いでナノにこのパーカーを渡してやる!!!!」


 そう言って大は周りの隊長たちを見回した。


「えぇ・・・・、あります・・・・。ありますが・・・・」


 マースは歯切れ悪くそう言うと、ダーヨの方をチラリと見た。


「大丈夫なのだよ!!あの服を大に貸してあげてるのだよ!!」


 なんだ????今一瞬、会議室の空気がピリッとしたように感じたが・・・・、気のせいか????それにしても男物の服があるのかよ??なんで????


 大の中に新たなる謎が生まれた。


「いいのかよ????」


 ヨナがダーヨに問いかける。


「いいのだよ!!大とDRSのためなのだよ・・・・!!!!」


「そっか・・・・」


 ヨナは淡々とした様子で納得した。


「ちょっと待っているのだよ!!!!」


 そう言って、ダーヨは席を立った。





 うぅぅぅぅぅぅぅ、気まじぃぃぃぃぃぃぃぃ、早く帰ってきてくれよ、ダーヨォォォォォォォォ!!!!


 ダーヨが席を立ってから、かれこれ20分が経っていた。その間、誰一人として口を開くものはいなかった。大はその様子に違和感を感じていたのだが、それよりも気まずさと息苦しさの方が強く、わざわざ違和感の正体を探るための会話や行動を周りの隊長たちに対して起こす気にはなれなかった。


ウイィィィィィィィィィィィィィィンンンンンンンン!!!!!!!!!


 救世主の登場とも言えるタイミングでダーヨが戻ってきた。


「持ってきたのだよ!!大、これを着るのだよ!!!!」


 ダーヨは会議室に戻ってくるや否や大に持ってきた服を渡した。


「本当にいいんだな・・・・ダーヨ????」


「いいのだよ!!ヨナちゃん!!!!」


 大はそのやり取りを見ていて、やはりいくつもの引っ掛かりを感じたのだが、今はそのことには触れずに素直にダーヨが持ってきてくれた服を着た。


「まぁ!!!!ぴったりですわね!!!!」


 あまりのフィットした様子にマースが思わず声をあげた。


「なんだか、こういうのは失礼かもしれませんが・・・・、この隊長服、俺のために用意してくれたかのようにちょうどいいです!!!!」


 大が今言った"失礼かもしれませんが"には"詳細まではわかりませんが、色々汲み取った上で言わせていただきます"という意味が詰め込まれていた。


 本当にピッタリだ!!!!


 と、大は改めて実感していた。


「じゃあ、僕はこのパーカーを大切に使わせていただくの!!」


 そう言うとナノは大から預かったパーカーに頬をスリスリした。


「ナノさん!!!!そちらのパーカーの素材解明にはどのくらいの時間がかかりそうですか????」


「う〜〜〜〜ん・・・・・、僕も、このパーカーっていう服を見るのは初めてだから、なんとも言えないけれど・・・・、1週間もあれば大丈夫だと思うの!!!!」


「では、解明に1週間!!!!そして、その性能を盛り込んだ私たちの新しい制服を製作するのにもう1週間!!合計2週間といったところでしょうか????」


「ハイなの!!」


ダンッ!!!!


 マースは気合を入れる意味と、隊長たちの注目を集める意味を込めて、机を両手で力強く叩いた。


「それでは計画通りに行けば2週間後!!!!私たちは狩龍団の基地、オスのカントリードラゴンの体内への攻撃を結構します!!!!異論はありませんね!!!!」


「あるわけねぇだろ!!!!こちとら暴れたくてウズウズしてるんだよな!!!!」


 ヨナが言った。


「久しぶりに本気でやれるんだ!!!!文句なんてないに決まってるでしょ!!!!」


 デーショが言った。


「私の魔法と姉さまの力があれば、恐れる敵など存在しないのです!!!!」


 デースが言った。


「早くパーカーを解明したい!!!!今はそれが僕の全てなの!!!!」


 ナノが言った。


「これ以上、人が傷つくのは見たくないのだよ!!!!私も覚悟を決めるのだよ!!!!」


 ダーヨが言った。


「では!!!!2週間後までに各々今まで以上の力をつけておくようにお願いします!!!!」


『ハイ!!!!!!』


 隊長たち全員の声が揃い、会議は幕を閉じた。




コツコツコツコツ!!!!


「俺も絶対に強くなってやる!!!!」


 会議が終わりマースから教えてもらった自分の部屋に向かう廊下で、大は強く覚悟を決めた。

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