第12話 コロロがコロコロ転がるようになったのです
「5年前に起きた大地震が全てのはじまりでした。実を言うとそれまで、私たちの住む世界がカントリードラゴンの胃の中だという考えは、誰一人として持っていなかったのです」
「地震がきっかけでどうやって世界の理を知るんだよ????」
「えぇ、順を追って説明しますとその大地震によって空の窓が開いたのです!!!!」
「そういえば、この異世界の空に窓がひとつあったな・・・・」
「えぇ、実はその窓こそがカントリードラゴンの口へと続く食堂への入口だったのです!!」
「タウンドラゴンの時は黒い太陽だったけど、カントリードラゴンの場合はそこに窓がついているんだな????でも、なんで窓なんてつける必要があるんだよ!!自由に外に出られるようにしておけばいいんじゃねぇの??」
「はい!!私も初めはそう思いました。正確に言えば初めて食道を通って口から外へ出ようとしていたその時間だけはそう思っていました・・・・。ですが、カントリードラゴンの外に出てすぐにわかったのです・・・・」
「ゴクリ・・・・」
大はマースの話に固唾を飲んだ。
「実は、このプラネットドラゴンは劣悪も劣悪、生活はおろか、歩くことさえも困難な環境の惑星だったのです」
「どんな風にだよ・・・・??」
「えぇ、まず1年中雷雨が降り続いています。それはどうやら2匹のカントリードラゴンの吐く息によってできた雲によるものらしく、その雲にはカントリードラゴンの胃酸の成分も含まれているため、この惑星に降る雨は、ありとあらゆる生命を溶かしてしまうのです。そのため、私がカントリードラゴンの口から初めて出た時は、ものの数分しか外の景色を眺められませんでした。そして、すぐに引き返したのです」
「・・・・・・・・」
大はマースの話を黙って聞いていた。
「しかし、私は口の外に初めて出た時、ある出会いを果たします・・・・。それが、私と同じタイミングで、もう1匹のカントリードラゴンの中から、同じように口の外へと出てきた、狩龍団のボス、ダカラでした」
「名前なんてどうやって知ったんだよ・・・・????」
「えぇ、今でこそ狩龍団は私たちを襲ってきますが、その時はまさかこんな事態になるとは思ってもいませんでしたので、何も怪しむことなくお互いに自己紹介をしたのです。ダカラはどちらかというと寡黙な人でした。しかし、ダカラにとっても、初めてカントリードラゴンの外に出たことや、そもそもカントリードラゴンの中に自分たちがいたという事実や、この惑星の環境や、もう1匹のカントリードラゴンの存在や・・・・など、私と同じようにワクワクドキドキする事実ばかりに出会えたことで、少しテンションが上がっていたのだと思います」
マースの話を聞く限り、今の時点では、なぜいがみ合うようになったのかのヒントの欠片すら見えてこない。本当にそんなに友好的な2人が命をかけて戦いあう仲になるような出来事が存在するのか????
「ダカラとお話しできたことで、この惑星の環境に触れたのは数分でしたが、とてもとても長い時間のように感じることができました・・・・。それが5年前の出来事です。そして時は経ち2年前。要するに大地震が起きてから3年後です・・・・。それは1つの気づきが発端でした」
「気づき・・・・????」
「はい・・・・、コロロがコロコロ転がるようになったのです!!!!」
「はい????コロロって、あのダーヨたちが持っている水晶みたいなレーダーだよな????」
「そうでございます!!」
「そのコロロがコロコロ転がるようになったからってなんだって言うんだよ!!」
「それまでは、コロロがコロコロ転がるようなことはありませんでした!!しかし、ある日を境に突然、コロロがコロコロ転がるようになったのです!!!!私はなぜコロロがコロコロ転がるようになったのか気になり、もしかしてコロロがコロコロ転がるようになった原因は、この建物が傾いているからではないかと考えました!!!!そしてコロロがコロコロ転がるようになった原因を探るため、私は少し上空から建物を見たのです・・・・。するとあることに気がつきました」
「何なんだよ!!!!コロロがコロコロ転がるようになった原因って・・・・????」
「コロロがコロコロ転がるようになった原因は、思った通り、この基地が傾いたためでした。では、どうしてこの基地が傾きコロロがコロコロ転がるようになったのか・・・・」
「ゴクリゴクリ・・・・」
「それは妊娠です!!!!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・??????誰の????????」
「誰のではありません!!!!カントリードラゴンのです!!!!!!」
「!!!!!!!!!!!」
大は今日一番驚いた。
「はぁ????妊娠????カントリードラゴンが妊娠????」
「えぇ!!!!!!ここら一帯の土地が隆起したと同時に、近くに今まではなかった洞窟の入り口のような穴ができていたのです。私は気になってその穴に入ってみました。するとその先にはカントリードラゴンの卵があったのです」
「要するにこういうことか??俺たちがいる、このカントリードラゴンが妊娠して卵によりお腹が膨らんだことで、ここら一帯の土地が押し上げられ、それにより基地が傾き、コロロがコロコロ転がるようになったと・・・・」
「はい!!!!」
「というか????カントリードラゴンってどうやって繁殖するんだよ!!人間みたいに繁殖行為に及ぶのか????ハハハハハハ、そりゃないよな!!!!だってこんなにでかいドラゴンが2匹でそんなことしてみろ!!!!中にいる俺たちはとんでもなく揺れて・・・・・・・・・・・・、ま・さ・か??????」
「大さんは鋭い!!!!そのまさかです。5年前の大地震は2匹のカントリードラゴンによる繁殖行為が原因だったのです!!!!」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
大の今日一番驚いた大賞は早くも塗り替えられた。
「どうやら私たちがいるこのカントリードラゴンがメスで、狩龍団たちのいるカントリードラゴンがオスだったようなのです」
「あが・・・・あが・・・・あがあが・・・・・・・」
大の開いた口は全く塞がらない。
「私たちDRSはその事実を知った時、新しい命の誕生にとても幸せな気持ちになりました。・・・・ですが、狩龍団たちは違ったのです。彼らはこう考えました・・・・。新しいカントリードラゴンが生まれるということは、人々が安全に暮らせる領土が増えるということだ・・・・と!!!!」
「な・・・・!!!!まじかよ????」
「マジになります!!」
だんだん見えてきたぞ。
大の頭の中では今、プチアハ体験が連続で起こっていた。
「DRSと狩龍団、今まではお互い平等な環境条件の中で暮らしていたため、ひがんだり、ねたんだりということは全くありませんでした。しかし、2匹のドラゴンに性別が存在し、妊娠という事実が発覚したことで、平等が音を立てて崩れたのです!!!!それから狩龍団は、カントリードラゴンの卵を我が物にしようと、この胃世界へと攻撃を仕掛けてくるようになったのです!!!!」
「その一つがさっきの奇襲だったりするんだな????」
「そうでございます!!!!」
「なんでこっちから仕掛けに行かねんだよ????」
「それができるのなら、私たちもとっくにしている!!」
そう言ったのはデーショだった。
「できないのです!!!!なぜなら、カントリードラゴンの外は強力な胃酸の雨が降っているからです!!!!」
「いやいやいやいや!!!!それは向こうも一緒だろ!!!!」
「それが違うのです!!!!こちらのカントリードラゴンが妊娠するように、あちらのカントリードラゴンにも特別な部分が存在するのです・・・・。それが体内に咲く龍鱗草という草なのです。実は龍鱗草には、カントリードラゴンの胃酸を無効化する力があるのです!!!!彼らはその事実を知る前から、伝統料理の一つとして日頃から料理の材料として食していました。その結果、向こうの住人はカントリードラゴンの胃酸を受け付けない体質を自然に手に入れていたのです」
「なるほど!!!!だから狩龍団はこっちに攻めてこれるけれど、DRSは向こうに攻めていけないんだな・・・・・・」
「そうなります!!!!私たちは狩龍団と争いたくはありません!!しかし、このまま後手後手に回っていては、他の住民に被害が及びます!!そこでこの現状を打破する術をみんなで持ち寄って話し合おうと、今回の会議を決めたのです!!!!」
「そうだったのか・・・・!!!!だからヨナは俺を連れてきたんだな!!!!」
「あぁ!!!!」
ヨナは答えた。
「どういうことでしょうか・・・・????」
「あれ????ヨナから聞いていないのか????」
「・・・・・・はい」
「このパーカーだよ!!!!」
「パーカー・・・・????最初から気になってはいたのですが、その変わった服はなんなのですか????」
「これはパーカーっていう俺のいた世界での服なんだが、実はこれ、どうやら龍の胃酸を弾くみたいなんだわ!!!!」
「なるほど!!!!龍の胃酸を弾くのですか・・・・・・・・・・・・、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!」
マースは今日一番驚いた。