第10話 本部に集う強者たち
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!!!!!!!」
ヨナは小さな体でダーヨをおんぶしながら、大を脇に抱え、納得できない表情を浮かべたまま本部へ向かっていた。
「もういい加減機嫌なおしてくれよ!!!!」
たんこぶをさすりながら大がヨナの機嫌を伺う。
「あんなことされて許すわけねぇよな!!!!一生恨み続けるよな!!それが普通だよな!!!!」
「はぁ・・・・・・・」
大はとっくの昔に自分のしたことへの反省をはじめていたのだが、時すでに遅し。ヨナにはその態度が届かなかった、
「ところで、どうして急に俺を本部に連れて行こうと思ったんだ????」
「・・・・・・」
ヨナは大を軽く無視した。
「っていうか、それよりもまずは自己紹介からだな!!俺の名前は大!!!!小豆 大っていうんだ!!異世界から転生してきたんだ!!よろしくな!!」
かぁぁぁぁ!!!!なんだこの自己紹介!!異世界から転生してきたんだなんて中二病全開じゃねぇかよ!!言った後になって恥ずかしくなってきた。
大は学校で先生のことを"お母さん"と読んだ時以上の恥ずかしさを感じていた。
「異世界から転生・・・・??」
ヨナは大の一言に引っかかり、大のことを無視できなくなってしまった。
「まぁ、よくわからんがいいよな??私の名前はヨナ!!ダーヨと同じDRSに所属している!!!!」
「DRS・・・・????」
「なんだお前????知らないのか????」
「知らねぇよ!!だから俺は、こことは違う世界から来たんだって!!!!」
「そうか・・・・。ダーヨは何も話してなかったんだな・・・・!!まぁ、もう直ぐ本部につくから、ついてから話すとするか!!!!」
「で、俺を連れて行く理由は????」
「そうだったよな!!まぁ・・・・」
ヨナは言葉に詰まった。
「まぁ・・・・、隠しても直ぐに分かることだから言わせてもらうが・・・・」
「大のパーカーなのだよ!!」
ヨナの話の間を縫って大に真実を告げたのはダーヨだった。
「ダーヨ!!もう体は大丈夫なのか??」
「だいぶ良くなってきたのだよ!!ヨナちゃんが助けに来てくれたおかげなのだよ!!」
「へへへへ!!!!まぁ・・・・それほどでもないよな!!」
「それよりも・・・・、俺のパーカーのせいで本部に行く羽目になったって、一体どういうことなんだよ??」
「大のパーカーがドラゴンの胃酸を受け付けなかったからなのだよ!!!!」
「はぁ・・・・」
大はイマイチしっくりきていないようである。
「でも、タウンドラゴンの胃酸って滅多に噴出したりしないんだろ????だったら、パーカーいるか????」
「かぁ〜〜〜〜、やっぱりお前はなぁ〜〜〜〜んにも知らねぇよな!!!!」
「そのパーカーを量産できたら・・・・、っと思ったら本部に着いちまったな!!!!」
ヒュン!!ヒュン!!スタン!!
「ほら着いたぞ!!!!」
DRS本部の入り口でヨナは脇に抱えていた大を下ろした・・・・。というよりも落とした。
ドスン!!!!
「痛ってぇなぁぁぁぁぁぁ!!!!もうちょっと優しく下ろしてくれてもいいんじゃね????」
「ふんっ!!!!」
ヨナはぶっきらぼうに大から顔を背けた。
それにしても、このヨナっていうやつ一体何なんだ????俺とダーヨを抱えたまんま息ひとつ切らさずに、しかも会話しながら何十キロという道のりを岩から岩へとジャンプしながらここまで来やがった!!とんでもねぇ体力だ、こんなのバケモンだぞ!!
「ヨナちゃんありがとうなのだよ!!私も、もうここで下ろしてもらっても大丈夫なのだよ!!」
「馬鹿野郎!!!!」
「ひやっ!!!!」
ダーヨはヨナの突然の大声に可愛らしい声を出してしまった。
「お前はDRSの大切な仲間だ!!無理はさせられねぇ!!」
そういうとヨナは玄関についたインターホンを押した。
「ヨナだ!!!!ダーヨを無事救出してきたから開けてくれ!!!!ついでに面白いもんも連れてきたぞ!!!!」
ガゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!
ヨナの呼びかけに反応して玄関が開いた。
コツコツコツコツコツコツコツコツ。
コッツコッツコッツコッツコッツコッツコッツ。
慣れた足取りで本部内を進んで行くヨナを後ろからつけるように大も進む。
コツコツコツコツコツコツコツコツ・・・・ピタ。
ヨナはとある部屋の入り口で止まった。
「ほらダーヨ!!!!ついたぞ!!!!」
そこはダーヨの部屋だった。
ウイィィィィィィィィィンンンンンン!!!!
ダーヨに反応して部屋のドアが開いた。
「よいしょっと!!!!」
そう言ってヨナはダーヨをベッドの上に下ろした。
「んぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ!!!!!!」
ベッドに降ろしてもらうや否や自力で立ち上がろうとするダーヨ。
「ダーヨ!!無茶するなって!!!!」
ヨナより先にダーヨを止めたのは大であった。
「ごめんなのだよ!!大をこんなところに連れてきてしまったのは、私のせいなのだよ!!!!」
申し訳なさからか、ダーヨは少し俯いた。
「大丈夫だって!!気にするな!!ここまで来ると、なんだか面白いことがはじまるんじゃないかと思ってワクワクしているくらいだ!!!!」
「大!!!!そんな楽しい話ではないのだよ!!」
「いいっていいって!!!!」
プックゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!
事の重大さが全くわかっていない大にダーヨはほっぺたを膨らまして怒った。
「じゃぁ・・・・どうすんだダーヨ????お前もこのまま会議に出るのか????」
そんな空気を一気に払拭してヨナがダーヨに話しかけた。
「もちろんなのだよ!!」
「そこの変態はどうする????」
「な??誰が変態じゃぁぁぁぁぁぁ!!!!俺もその会議に参加するぜ!!!!この世界がどんなところなのか少しは理解できそうだしな!!!!」
「よし!!じゃあみんなで会議室に行くしかないよな!!!!今日は久しぶりに全員揃っているみたいだからな!!」
コツコツコツコツ!!!!
大とダーヨは、ヨナの後ろをついていくかのように歩きながら会議室を目指していた。そんな途中の曲がり角で・・・・。
ドーーーーーーンンンンンンンン!!!!
大は何か大きな岩にでもぶつかったかのような衝撃を受けた。
「痛てててててててててて!!!!!!」
そう言いながら前を見るとそこに大きな岩などはなく、いたのは痩せ気味でも太り気味でもない、いわゆる標準的な体格をした、黒髪ポニーテールの女性だった。
「おう!!!!デーショじゃねぇか!!!!」
「ヨナ!!!!お前以外と早かったな!!」
「まぁな!!!!あれっ????デースは一緒じゃねぇのか??」
「あぁ!!あいつは化粧に時間がかかっているらしい・・・・」
「化粧・・・・????」
「あぁ、なんだかこの本部に男が来たって話を聞いたみたいで、いつも以上にメイクを張り切っているみたいだ!!!!・・・・ん??????君がその男の子かな????」
デーショが大を見ながら言った。
「あぁ!!!!俺は大って言うんだ!!!!異世界から転生してきたんだ!!よろしくな!!」
くぅぅぅぅ!!!!恥ずかしすぎるリターーンだぜ!!!!
そう思いながら大はデーショに握手を求めて手を差し出した。
「私はデーショ!!よろしくな!!」
ガシッ!!!!!!
デーショは大の差し出した手を握った。
ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!
「痛たたたたたたたたたたたた!!!!!!」
「おぉ!!!!!すまんすまん!!つい力が入りすぎてしまった!!!!」
なんちゅう力だ!!!!腕がつぶれるかと思ったぞ!!!!しかも顔を見る限り、悪気はなく本当に自然と力が入ってしまったみたいだし・・・・。とにかく体力自慢なのかなんなのかおっかなすぎるぜ!!!!・・・・ってことは、さっきぶつかったのも、やっぱデーショなんだよな????体幹??パワー??とにかく凄すぎるぜ!!!!・・・・・・にしても、俺、今日ずっと痛がっている気がする。
コツコツコツコツ!!!!
「ふぅ・・・・やっと着いたぜ!!!!」
大、ダーヨ、ヨナ、デーショの4人は大きな扉の前に立った。
ギィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!
扉を開けたのはヨナだった。部屋の中には長机があり、その真ん中にはウェーブがかった肩くらいまで髪のある女性が座っていた。その両サイドには真ん中の女性からそれぞれ2つずつ席を空けるようにして、右に白衣を着た緑色の髪の女性と、左にピンクの髪をしたロングヘアーの女性が座っていた。緑色の髪の女性と真ん中の女性との間、その真ん中の女性よりにダーヨが、その隣に大が座り、ピンクの女性と真ん中の女性との間、その真ん中の女性よりにヨナが、その隣にデーショが座った。
「え????え????全員女性じゃね????しかも美女揃い!!!!ここはハーレムですか????」
大は不謹慎な妄想を膨らませながら周りをキョロキョロし続けた。
「コホン!!!!」
そんな大を含め、全員の視線を意図的に集めるかのように、真ん中に座った女性が明らかに"コホン"と発音してわざとらしく咳払いをした。
「それではこれよりカントリードラゴン攻略に向けた作戦会議をはじめます!!!!」
「・・・・・・・・カントリードラゴン??????」
ゴクリ!!!!
大はなんだか凄まじい会議がはじまりそうな予感を感じ生唾を飲み込んだ。