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第1話 大の大冒険

 豆腐の角に頭をぶつけた・・・・。


 それが僕がこの世を去った理由だ。


 享年 17才


 もちろんぶつけた瞬間に走馬灯も見た。ホカホカのご飯を眺めながら納豆をこねくり回していた時の映像や、蒸し暑い夏の昼下がりにキンキンに冷えた冷奴にかつおぶしを乗せ醤油を垂らした時の映像や、初めて飲んだ豆乳の美味しさに大きな感動を覚えた時の映像など・・・・。まぁ、そんなお腹がグッとなってしまいそうな映像ばかりであったが、一応見ることはできたのだ。


 ・・・・申し遅れました。

 僕の名前は

 

 小豆 大(あずき まさる)と言います。


 ちなみに言うと、今自分がどういう状態なのか全くわかっていません。こうして話ができているのも実は僕が生きているからなのではないのか?ふとした瞬間に目が覚め、そこは病室で、僕はベッドの上にいて、周りには家族たちがいて・・・・なんてことになるのでは?など、いろいろと妄想・想像しながら、だけど、そのどれもきっと違うだろうなどと思っています。


「そのとぉぉぉぉり!!!!」


 ん??なんか声が聞こえてきましたね。いきなりで怖いので、少し無視をしてみましょう。


「おぉぉぉぉいいいい!!!!その声はわしにも聞こえておるぞぉぉぉぉ!!!!」


 ん??やっぱり声が聞こえてきますね。なんだか不気味ですね。やっぱり無視してみましょう。


「だから、全部聞こえておると言うとるのがわからんのかぁぁぁぁぁ!!!!」


スパコォォォォォォンンンンンン!!!!


 僕は何者かもわからないやつにスリッパで頭を叩かれました。ひどいと思いませんか??ついさっき、豆腐の角に頭をぶつけたばかりなのにですよ!!これはあんまりですよね!!なので、言い返してみましょう。


「痛ってえなぁぁぁぁ!!!!人がせっかくノスタルジックな気持ちに浸っていたのになんで邪魔すんだよぉぉぉぉ????」


「うるさい!!貴様がわしを無視するからじゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「今、自分がどんな状態かもわからないっていうのに、いきなり声をかけられても、すぐに対応出来るわけねぇだろうがぁぁぁぁ!!」


 ・・・・とまぁ、一瞬にして俺の化けの皮は剥がれてしまったわけだが。しかし、こいつはなんだ??


 (まさる)に声をかけてきたのは女性ではあった。それは声質から判断されたものである。今の自分の状況を理解できない(まさる)は、見る、聞くなどの五感を使うことにすら無頓着になっていたのだ。


 そこで改めて目を凝らし、その声の主をじっくり見てみた。


「天使・・・・????」


「察しがいいな小僧!!!!」


 (まさる)の目の前には天使がいたのである。両翼を持ち、頭の上には輪っか・・・・、まぁそれだけ揃っていれば、直感的に相手を天使と認識してもおかしくはない。それに自分自身が命を落としたという実感を持っているのであれば、なおのこと見た目と予想はリンクしやすかった。

 

 しかし、(まさる)の知っている天使とは違う部分もあった。


「天使の割には服が現代風・・・・??というか派手・・・・??というか攻めすぎ・・・・??」

 

 天使は胸元の大きく開いた白のワンピースを着ていた。その大きく開いた胸元からは天使のグラマラスさが顔を覗かせていた。


「でも、よく見ると凄く可愛い!!」


 そう。目は大きく、口元には黙っている時も八重歯が見える、肌も白く身長は160cmくらい。体型は普通よりも若干瘦せ型かなといった印象。その上でボン・キュッ・ボン。・・・・・・申し分ない。と(まさる)は鼻の下を伸ばしていた。


「貴様!!わしをいやらしぃぃぃぃ目で見ておるな????」


「は??・・・・見てねぇし!!全然、見てねぇし!!・・・・はぁ!!全然だし!!・・・・はぁ??見るわけねぇし!!!!」


 は??・・・・見てねぇよ!!全然、見てねぇよ!!なんでそんなこと言ってくるの!!信じられねんだけど・・・・。はぁ、全然だし!!見るわけねぇし!!!!

 

 口に出した言葉、心の声、どちらも踏まえて(まさる)は泣けてくるほど動揺した。


「まぁ良い!!わしが魅力的なのはわしが一番よく知っておる!!」


「・・・・あ、・・・・そうですか??」


 (まさる)は天使の態度に少し萎えた。


「それはいいとして、あんたは一体誰なんだ??」


「そうであったな!!これはこれは、わしとしたことが・・・・」


 天使は一度ピシッと姿勢を正して語りはじめた。


「わしの名前はフラボン。まぁ、貴様がさっき言った通り、天使じゃ!!」


「・・・・・・そうか」


 その言葉を聞いた瞬間に、(まさる)はやはり自分が死んでしまったのだということを実感して、少し寂しくなった。


「でも待てよ!!お前が天使ということは、俺は今から天国に行けるということか??」


「いや!!天国へは行けん!!」


ガーーーーーーーーーンンンン!!!!


 (まさる)はショックを受けた。


 え??この流れで天国に行けないとかあるの??なんで天使出てきたし!!もしかして、俺の聞き間違えなんじゃないか??よし!!もう一度聞いてみよう。


「とか言いながらも、実は今から天国に行けるんでしょ??」


「だから!!行けんと言うておる!!」


ガーーーーーーーーーンンンン!!!!

ガーーーーーーーーーンンンン!!!!


「じゃぁ!!なんで俺の前に出てきたんだよ!!」


「まぁ落ち着け!!天国へは行けん!!しかし、今からすぐに違う人生をスタートさせることはできる!!」


「え????それって俗に言う転生って奴ですか????」


 (まさる)の瞳に明かりが戻った。


「そうそうそれじゃ!!」


「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!なんだ、死んでもすぐに人生ってやり直せるんだな!!」


「それは違うぞ!!実は今回は特別措置なのじゃ!!」


「特別措置??」


「そうじゃ!!実は、貴様の死因はわしら天使の間でも大きな問題になっておってな・・・・。豆腐の角に頭ぶつけて死ぬなんてある??・・・・と」


「・・・・・・」


 (まさる)はなんとお答えすれば良いのかと言った顔をした。


「貴様があまりにも不憫でな・・・・。じゃから、生き返らせることはできんが、代わりに別の人生を謳歌してもらおうということになったのじゃ!!」


「マジかよ!!ラッキー!!豆腐の角に頭ぶつけてみるもんだな!!・・・・ということは、俺は今から異世界に行って大活躍できるってことですね????」


「なんじゃ??貴様はそんなものに興味があるのか??」


「もちろん!!だって転生って言えば異世界でしょ!!」


「そうなのか・・・・??」


「そうだよ!!異世界に転生して、チートクラスの力をもらって、たくさん可愛い女の子に出会えて、一緒に冒険なんかしちゃったり、エッチなハプニングに遭遇したり・・・・。ムフフフフフフ」


「貴様!!気持ち悪いな!!」


 (まさる)はフラボンのその言葉にふと我に帰り、キリッとした顔立ちを取り戻した。


「いや!!俺は異世界に行って困っている人たちを助けてあげたいんだよ!!」


「おぉ!!!!素晴らしい!!やはり貴様はこのまま死なせてしまうにはもったいない男じゃ!!」


「だろ!!だろ!!」


「じゃあ、そのまま大掃除などもお願いしてもらってもいいのかのぉ??」


 大掃除・・・・??あぁ、異世界の悪い奴らを討伐して一掃してくれっていう、あのお決まりのパターンね。いいじゃない。面白そう。なんだかワクワクするな。


「もちろん!!俺に任せておけ!!異世界で大掃除してきてやろうじゃねぇか!!」


「おぉぉぉぉぉぉ!!貴様!!頼もしすぎるぞ!!となれば、早速転生の準備じゃ!!善は急げというからなぁ!!」


「あぁ!!そうしてくれ!!俺も早く行きたくてワクワクが止まらなくなってきたぜ!!」


「よし!!では、準備ができたので、今から貴様を転生させるぞ!!」


「おう!!よぉぉろしくぅぅお願いぃぃぃぃしまぁぁぁぁす!!!!」


 (まさる)はテンションがぶっ壊れるくらいに上がっていた。


「ではいくぞ!!!!」


パクパクモグモグゴックンチョ!!!!


 フラボンがそう魔法を唱えると、(まさる)の転生がはじまった。


シュワァァァァァァァァンンンン!!!!


 そして、(まさる)は無事転生を終えた。




ツンツン!!

ツンツンツン!!


 (まさる)は自分の頬に、何かでつつかれているような感触を受け目を覚ました。


 目の前には杖を持った少女が立っていた。

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