表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/41

第四話 ②


 むしゃむしゃ。


「やっぱり、お兄ちゃんのステータス上昇に比例して、皮の栄養も上がってるみたいだね。むしゃむしゃ」


 むしゃむしゃ。


 と、私が今、おつまみのようにむしゃむしゃ食べているのは、お兄ちゃんが『脱皮』して脱いだ皮である。


 これがなかなか美味しいのだ。


 うーん、濃い味のような、薄味のような。スパイシーなような、スイートなような。ジャーキーのような、ゼリーのような……奥深い味である。とにかくお兄ちゃんの脱いだ皮はめちゃ美味しい。


 栄養満点だし、これ完全な万能食材じゃないだろうか? 美味すぎる。美味しすぎるのですがなにか? 何本でもいけちゃうよ。美味しい! むむむ!



ーーーーーーーーーー


『栄養変換』

[栄養をMPに変換し回復する]


ーーーーーーーーーー



『果実生成』で作った果実では私自身のMPを回復できないので、こちらのスキルを使うことになる。『栄養変換』である。


 やっぱり樹の精霊だからこういうスキルあるんだろうね? 栄養を魔力に変換できるのだ。


 本来なら栄養を得るには肥料や水や日光が必要なのだろうが、お兄ちゃんの『脱皮』した皮は栄養満点なので、数本食べて『栄養変換』をすれば、軽くMPが全回復しちゃってるのである。


 しかも、味まで美味しいときたら、何からなにまで至れり尽くせり、神様ありがとう……と間違って言っちゃいそうなものである。


 むしゃむしゃ……


 この味は、お兄ちゃんーー!?


 はあー、ホント美味しいなあ……


「カジュ……回復したなら早く……『果実生成』作って欲しいんだけど……」


『脱皮』後のグロッキーなお兄ちゃんが私に催促する。


「あーー! お兄ちゃん私のMPが回復するまでは絶対に『脱皮』しないでって言ったでしょ! 危ないんだから!」


『脱皮』を行うとお兄ちゃんのHPとMPが極限まで下がってしまうため、非常に危険なのだ。HP1とかの状態で敵に襲われたら、とんでもないことである。


「ご、ごめん……つい流れで……」


 ひたすら『脱皮』をしていたらわけも分からなくなるかもしれないが、脱皮後はホントに危険なので気をつけてもらわないと困る。むむむである。


「『果実生成 《レプタイル・エルベリー》』!!」


 回復の果実を生成する。ちなみにレプタイル・エルベリーは爬虫類限定の回復果実である。効果のある種族が限定されている分、生成する時のMPが安いのだ。スキル『植物図鑑』を読み漁って見つけたのだ。



ーーーーーーーーーー


『植物図鑑』

[植物の情報を得る]


ーーーーーーーーーー



 ホント樹の精霊に生まれて良かった。


 ここ一ヶ月ほど、私達は毎日、この《お兄ちゃん無限成長コンボ》を繰り返している。


 一回の『脱皮』で上がるステータスは微々たるものだが、確実に上昇するというのはやはり強い。というか、めちゃ強い。


 しかも、このコンボなら時間さえあればほぼ無限に『脱皮』できるため、最初は弱かったお兄ちゃんも今ではかなり強くなっている。


「『脱皮』!」


 お兄ちゃんがまた、訓練という名の作業を開始する。でもこれで強くなるんだから何も問題ないよね!


「モグモグ……うーん、でもこれって努力してることになるのかな? 確かに強くはなってるけど、レベルは上がってないし……なんか、ずるくない?」


 お兄ちゃん、これが異世界転生モノなんだよ!


「もちろんお兄ちゃんがある程度強くなったら、次はレベル上げをする予定だよ。森の魔物の強さを考えて、安全を確保した上での話になるけど」


「うん、せっかく強くなったんだから、早く戦いたいなあ」


 お兄ちゃんは自分の成長を実感して、自信がついてきたみたいだ。良かった。


「そういえば僕もうカジュより強くなってるよね? どっちが強いか久しぶりにステータス確認しようよ」


「……え? う、うん……そだね……」



ーーーーーーーーーー


 ゲッコー・モリシマ


 LV 1 《種族・モリゲッコー》


 HP 5500

 MP 3300


 STR 3400

 DEF 3600

 MAG 3500

 LUC 57


[スキル]

『脱皮』

『脱皮《離脱》』

『脱皮《爆破》』

『属性変化』

『自切』



ーーーーーーーーーー



「すごいお兄ちゃん! めっちゃ強くなったね!」


 スキルも増えてるし、とてもレベル1の数字とは思えないよ。完全にバグってるよ。


「いやー、努力した甲斐があったわー。やっぱり俺天才だわー」


 ホントにあと一ヶ月もあれば、この森の魔物くらいなら余裕で倒せるようになりそうだ。お兄ちゃんすごい! かっこいい!


「まあ、俺は天才なんだけどさ、カジュのステータスはどんな感じ? そこそこ強くなってる?」


「あ、うん。私のステータスはね……」



ーーーーーーーーーー


 カジュ・モリシマ


 LV 52 《種族・ドライアド》


 HP 35000

 MP 49000


 STR 24000

 DEF 20000

 MAG 48000

 LUC 870


[スキル]

『植物図鑑』

『果実生成』

『種子生成』

『植物成長』

『植物操作』

『栄養変換』

『植物結界』

『木隠』



ーーーーーーーーーー



「うっそだろ……カジュ……」


 お兄ちゃんは色んな感情が込み上げているのだろう、プルプル震えている。分かっていたけれども、やっぱりこうなったか。


「な、なんか、お兄ちゃんの脱皮した皮を食べてたら、レベルがガンガン上がったんだよ。だから私のステータスはお兄ちゃんのおかげでもあるんだよ! ありがとう!」


 実際、お兄ちゃんのおかげなのは間違いない。脱皮した皮は栄養だけでなく、高い経験値を持っていたのだ。それは食べることにより吸収される。たぶんお兄ちゃんが強くなればなるほど皮の効果は上がるわけで……お兄ちゃん、すごい。すごいです!


「……と、とりあえず、あと一ヶ月くらい《お兄ちゃん無限成長コンボ》を続けようよ。そして魔物とのバトル! 本格的なレベル上げ開始だよ!」


「……なんか、もうカジュだけで全部何とかなりそうな気がするんだけど……」


 あちゃーです。


 お兄ちゃんのテンションが一気に下がってしまった。


 またしばらくは励ましの日々になりそうだ……


 でも、私だけでなんとかなるなんて、そんな寂しいこと言わないでよー。お兄ちゃん。








(^o^)/「カジュのポーチにはゲッコーの脱皮した皮がたくさん入ってます」

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ