表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/41

最終話 ②


 朝日が窓から差し込み、鳥達はチュンチュン鳴いている。


 はっ! 朝チュン!? 寝坊だよ!!


 私は自室のベッドで目覚めた。


 ここは地上200m。


 私達が『シュラの樹』と名付けた大樹の天辺に、この部屋はある。


 とても見晴らしがよく安全なので、私達兄妹はここに王室を作ってもらったのだ。


 お兄ちゃんは部屋にいない。


 私が寝てたから先に王都に行ったのかな?


 起こしてくれても良かったのに。むむむ。


 私とお兄ちゃんは王様になった。


 魔王である。


 二人で一人。この国には魔王が二人いる。



 国の名前は【ゲッカダム】。



 お兄ちゃんの名前と私の名前を合わせたらしい。コロンちゃんが考えた。正式名称は【魔双国ゲッカダム】。いい名前だよ。さすがコロンちゃん!



「さーて、今日もがんばって、復興するよー!」


 私はうーんと、体を伸ばす。


 あの戦争から一ヶ月が過ぎた。泥兵軍団による進行は王都に大ダメージを与えた。半壊どころではない。ほぼ壊滅だ。爆薬の量が多すぎたのだよ。爆薬の量が。


 あのあと、王都の惨状をみたファロンちゃんはめっちゃ怒っていた。プンプン言ってた。素になってた。


 そんなこんなで、王都民総出で復旧工事を行っているところなのである。


 もちろん私もお兄ちゃんも連日作業を手伝っている。



「しゅっきーん!」


 私は窓から外に向かって飛び降りる。地上200mからの飛び降りだけど、魔王にとってはなんということもない日常だよ。



 ヒューーーーン!


 てし。


「着地!」


 最初は地面にクレーターができていたけど、最近は音もさせずに着地できるようになりました。さっそく工事現場に行こうっと。今日は王都の北側だったかな?


 私はお兄ちゃんの脱皮した皮をムシャりながら(朝ごはん!)、現場へ向かうのであった。よし。



 ………………


 …………


 ……



「おう、カジュ! おはよー!」


 現場に到着した私を見つけて、お兄ちゃんがさっそく声をかけてくる。


「お兄ちゃん。手伝いに来たよー」


 寝坊したことをおくびにも出さず、お兄ちゃんに挨拶する私。堂々としている! これぞ王の風格!


 まあ、お兄ちゃんも王様なんだけどね。



「カジュ、もうちょっと早くこような? もうお昼だぞ?」


 もう昼だったか。


 朝チュンではなかったようだ。


「カジュ様、おはようーであります!」


「おはよー、マヤちゃん!」


 マヤちゃんはメイド服を着ている。なんとメイドさんに転職したのである。戦うことも嫌いではないが、メイドさんにすごく憧れを持っていたらしい。親から自由になってさっそくメイドに転職したのである。今では王つき(お兄ちゃん&私)の専用メイドに任命されている。


 うんうん、幸せにしてやるぞよ。うふふ。


 ちなみに、お兄ちゃんは現在マヤちゃんの頭の上に乗っかっている。


 くそー、その役目は私のモノなのにー!



「よっこいしょっと」


 ぴょーんと、お兄ちゃんがマヤちゃんの頭から私の頭に跳び移ってきた。やっぱり私の頭の方が良いみたいだね。くふふ。新米メイドさんには負けないよ!


「んじゃ、マヤはさっき頼んだことよろしくー」


「はいであります!」


 元気よく返事をしてマヤちゃんは去った。


 え? 仕事を頼んでいたから乗り換えただけとか? お兄ちゃん、そんなことないよね? 私の頭が一番だよね!?


「はー、やっぱりカジュの頭は落ち着くなー」


 お兄ちゃんが私の頭をさすさすしてくれた。


 良かった。


 良かったのだ。



「ゲッコー様、カジュ様……おはようございます。親方様が二人にご用事があるそうです。お時間はありますか?」


 執事さんがファロンちゃんに頼まれて、私達を呼びに来たようだ。ファロンちゃんは変わらず宰相兼、ホーロン領主をやっている。


 立場的に「王様を呼ばずに宰相が(おのれ)で来い!」と言われそうだが、この国では問題ないのだ。ファロンちゃんは多忙だから。そして、私達はひまだから!


 この国を管理しているのは私達魔王ではなく。実質ファロンちゃんなのである。こんな状態で、なぜ自分達がえらいと思えようか!?


 我が王室は完全な傀儡(くぐつ)政権なのである!!


 指示待ち王室なのである!!


 楽だから問題なし!!



「それじゃ、ファロンのところ行くかー。頼むぞカジュ」


「うん。分かったお兄ちゃん!」


 私とお兄ちゃんと執事さんは、ファロンちゃんの待つ王城の執務室へ向かうのであった。



 ………………


 …………


 ……



「はわ!? ゲッコーさん! カジュさん! 私ですー!!」


 王城の門をくぐった先で、見慣れた可愛い顔のコロンちゃんが話しかけてきた。全身泥まみれで重そうな土石をよろよろと抱えている。似合う! 石運びが!


 何人かの魔人と一緒に、土砂を運んでいるようだ。コロンちゃんはここで復旧工事を行っているのだろう。


「よー、コロン。今からファロンのところに行くんだけど一緒に行くかー?」


「は、はわ! でも仕事が!」


 コロンちゃんは真面目可愛い。


 王城に泥兵爆弾の被害はなかった。しかし隣接している闘技場で発生した大樹が、お城の城壁を大きく破壊していたのだ。この部隊はそれを修繕していたのだろう。


「コロン隊長! 問題ないにゃ! 行って下さいにゃ!」


 ネコの魔人と思われる女の子がコロンちゃんに話しかける。


「はわ、で、でもですー……」


「問題……ないです!!」


「問題ないっす、コロン隊長! というか、お願いですから行って下さいっす!」



「「「邪魔です!!」」」



 コロンちゃんの部下達かな? すごく連携が取れてて良いね。


 はー、コロンちゃんそういえば出世して『魔王四天王』になったんだよねー。こんなに部下から慕われてるなんてえらいよー。さすが『爆愛のコロン』だね。可愛いよー。



「は、はわ! なんですその言い方です! 私はいない方が良いです!?」



「「「はい!」」」



「はわですーーーー!!」


 泣いているコロンちゃんを見てその部下達はホッコリしている。恐ろしい部隊だよここ。しかし、命をかけてコロンちゃんを守ってくれそうなオーラを感じる。謎の忠誠心ありそうだし。コロンちゃんの人心掌握術半端ないよ。



「ほら、行こうぜ。コロン」


「えぐ、えぐ……は、はわですー……」



 泣きながら鼻水をすするコロンちゃんが仲間になった!



「素晴らしい……素晴らしいです……コロン様……」


 なぜか執事さんも泣いていた。



 ………………


 …………


 ……



 ノックをして執務室に入る。


 ファロンちゃんは仕事中だった。


 ファロンちゃんの机には大量の書類が積まれている。それを右から左へとバンバン片付けている。本当に処理しているのかというスピードで書類が流れていく。すごいよファロンちゃん、神技だよ!


 ファロンちゃんは最近は顔色も良くなり、かなり健康的になった。だいぶんストレスが緩和されたようで嬉しいよ。王様冥利につきるよ。



「親方様……お二人をお連れしました」


「ん。ゲッコー様、カジュ様……ご足労……ありがとう」


 ファロンちゃんが私達に気づいて仕事の手を止める。うーん、まだ『様』付けだねー。『ちゃん』って呼んでくれて良いのになー。


 王都爆破で怒った時のファロンちゃんは素が出てしまい、私とお兄ちゃんのことを『ゲッコーちゃん』『カジュちゃん』とちゃん付けで呼びながら説教したのだ。プンプンファロンちゃんは可愛かった! 正座はきつかったけど!


 普段もちゃん付けで呼んでって何回も頼んでるのに、なかなか実行されることはないのだった。残念なのだった。


「ファロンどうした? おまえが僕達を呼ぶなんて珍しいじゃん」


 お兄ちゃんが質問する。


 たしかに。この一ヶ月で予定なく急に呼ばれたのは始めてだった。


 何かあったのかな?



「はわ、お姉ちゃん何か問題です?」


 コロンちゃんも心配している。


「問題ではなく……大問題」


 え!?


 大問題!? なにそれ!?



「この書類を……読んで……ほしい」


 ファロンちゃんが私に紙を一枚渡してくる。


 えーと?


 なになに?


「『我が国、魔海国シーラクーンは、魔双国ゲッカダムに戦争開始を宣言する』」


 ん?


 戦争開始?


 どゆこと?


「なんだ? カジュどういうことだ?」


 お兄ちゃんもよく分かっていないみたいだ。


「えーと、ファロンちゃん。説明お願い」


 とりあえず、一番分かってそうな人に聞いてみる。



「シーラクーンは……この国の南東に……隣接する国」


 ラグーンじゃなくてラクーン? アライグマ的な?


「ゲッカダムは……その国に『宣戦布告』された」


 宣戦布告……?


 え!?


 戦争するってこと!?


「はわ!? どうして宣戦布告されるです!? シュラは死んだです! この国は安全になったです!?」


 コロンちゃんもビックリだ。


 戦闘狂魔王シュラは死んだ。他国にはわりと迷惑かけたかもしれないが、こちらは国名と国王が代わったんだよ? いま国もボロボロで忙しいし。わざわざ戦争しなくていいよね? あれ? だからなのかな?



「書類は……あと三枚ある」


 ファロンちゃんがさらに不穏なことを言う。



「え? ファロンあと三枚なにって?」


「お兄ちゃん、まさか……」


「その……まさか……大問題」


 ファロンちゃんは三枚の書類を渡してきた。紙面は三枚とも、私達の国ゲッカダムに対する宣戦布告だった。



「うそだろ……カジュ……」


「お兄ちゃん、隣接四ヶ国が同時に宣戦布告ってことは……」


 私達の平穏は?


 スローライフは?



「その通り……やられた、」


 ファロンちゃんはハーっとため息をついて言った、



「これは……ゲッカダム包囲網!」



 私たちの預かり知らぬところで、ゲッカダム包囲網はすでに完成していたようだ。



 むむむむむ。



「ゲッカダム包囲網!? なにそれ!? なんかカッコいい!」


 お兄ちゃん、国がピンチなのにカッコいいとか言っちゃダメだよ。不謹慎お兄ちゃんだよ! ダメだよ!


 そもそも包囲網という言葉を理解してないよね? あとで説明しないとだよ。



 それにしても、ゲッカダム包囲網かー。


 隣国四ヶ国による同時の宣戦布告。


 これって合従軍(がっしょうぐん)が来るってことだよね。


 それぞれの国に魔王がいるとして、四人の魔王と同時に戦うってこと?


 こっちはお兄ちゃんと私の二人なのに?



 うーーーーん、



 私達兄妹もようやく平穏に暮らせると思ってたのになー。



「カジュ……どうする?」


 お兄ちゃんが聞いてくる。



 もちろん、やるべきことは一つだ。



「決まってるよ、お兄ちゃん!──」



 私達はどんな困難も乗り越えてきた。


 これからも、きっと大丈夫。



「──作戦会議だよ!!」



 私達兄妹に幸あれ。








(^o^)/「完結しました! 最後までお読みいただきありがとうございます!」


o(^-^o)「ご意見、ご感想、ご評価などいただけましたら大変喜びます!」


(^◇^)「ありがとうございました!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ