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最終話 魔双国ゲッカダム①


 決戦前夜。


 秘密基地。


「はわ、ゲッコーさん自身の尻尾には、どのスキルを詰めとくです? やっぱり私の『爆弾』です?」


「詰めるとか言うなよー。缶詰みたいじゃん」


 まあ缶詰でもいいんだけどさ。いちおう『貯蔵』だからね。倉庫だよ?


 決戦前夜、最後の打ち合わせをしているとコロンが僕達に聞いてきた。僕自身の尻尾には森を出たあと、ずーっとマシラの『食いしばり』が入っていたのだ。あれを切り離してコロンに渡してからは、なんのスキルも溜め込んでないのである。


「コロンちゃん。お兄ちゃんの尻尾にはプラン3のためのスキルを入れておこうと思ってるよ。たぶん決戦兵器になると思う」


 プラン3、それはプラン2の心臓爆破でシュラが死ななかった時の保険──いや、プラン2から続く第二の矢だ。


 心臓を爆破したあと、そのまま心臓部に尻尾を『自切』して残しておく。尻尾にはあるスキルを『貯蔵』しておく。



「それじゃ、入れるねお兄ちゃん。『種子生成 《デビルズシード》』──」



 カジュが僕の尻尾をつまんでスキルを込める。


 尻尾が光ってぷくっと膨らんだ。成功だ。


「あとはコイツをシュラの心臓に残すだけだな」


 デビルズシードの発芽条件は『柔いところ&相手が弱っていること』だ。うまくすればプラン2からそのまま移行できるだろう。


「でもさーカジュ。ドラゴンでもあんなに大きな樹になったのに、魔王であるシュラを土壌にしたら、成長しすぎるんじゃないか?」


「そうだねーお兄ちゃん。たぶん大きくなりすぎて闘技場くらいは軽くぶっ飛ばすと思うよ」


 恐ろしいことを言うカジュである。


「そんなことになったらどうするんだよ?」


「うーん、とりあえずは……ダッシュ──かな?」


 ええー。


 ダッシュかよ。



 ………………


 …………


 ……



 現在。


 僕達はいま、もーれつにダッシュしている。


 正確にはカジュが、シュラの魔力によって気絶した、コロンとファロンとマヤの三人を抱え、もーれつにダッシュしている。


 僕はいつもの定位置(カジュの頭の上)である。楽! ヒャホー!



 ドドドドドーー!



 すさまじい地響きと轟音を立てながら、シュラを栄養にしたデビルズシードは成長している。カジュの『植物成長』が効いているのか、栄養がいいのか、成長がめっちゃ早い。


 やばい。ホントにやばい。


 巻き込まれる。


 すでに魔猿の森にあったドラゴンの樹よりも大きくなっている。さすがシュラである。これはかくじつに闘技場はぶっ壊れるな。うわー。


 たったったっ! とカジュは三人を担いでいるとは思えないほど軽快な足取りで走っていく。


「お兄ちゃん! ジャンプするよ!」


 走るのがめんどーになったのか。ジャンプすることにしたらしい。


「ああ! 分かった!」


「よいしょー!」


 カジュが三人を抱えたままジャンプする。


 めっちゃ跳んだ。雲にも届きそうだ。跳びすぎー。


 王都を見下ろすと、各地で行われていた戦闘は終わっているようだ。セバスチャンとマルマッドは無事だろうか……心配である。


 しかし、この大樹は終戦のいい合図になったのかも知れないなー。これだけの大きさなら王都のどこにいても見えるだろうし。なにか起こったことも伝わるだろう。



「お兄ちゃん! 闘技場が崩れるよ!」



 ドドーン! と大きな音をさせ、王城の隣に作られた闘技場が破壊された。成長する巨大な大樹に押し潰されたのだ。


 大樹の成長は闘技場を破壊すると、ちょうど止まったようだ。王城の壁は破壊したが建物にはギリギリ届いていない。ホント大きいなー。高さが200mはあるんじゃないか? 山みたいだ。



「カジュ、これで終わりかな?」


「うん! お兄ちゃん終わったねー!」



 シュラは死んだ。


 僕達の勝利だ。



 これでレジスタンスのバイトも終了だと思う。


 ようやく、兄妹二人冒険者としての日々をゆっくり始められるのだ。楽しみである。やっとカジュと冒険できる!


「ゲッコー様、カジュ様……地上に降りたら……お話があります」


 え? ファロンはいつの間にか目を覚ましていたようだ。僕達に言いたいことがあるらしい。なにかな? お礼かな? お金かな? 我々兄妹は常に金銭に飢えています!


「分かったファロンちゃん。とりあえず王城の庭に降りるね」


 カジュが植物を操作して、羽を作りだす。


 さすカジュ。


 トカゲも便利だけど、樹霊のカジュはそれをはるかに超えて万能すぎないだろうか? 誇らしいけど。


「はわ、はわー! そ、空です!」


「え!! う、うわーであります!」



 その後、目を覚ましたコロンとマヤが空でアワアワして、だいぶ危なかった。



 ………………


 …………


 ……



 僕達は王城の庭の広場になっているところに降りた。とくに荒れているようすもない。王城までは戦火も届いていないようだ。


 カジュがファロン達を下ろすと、ファロン達三人はそのまま僕達の前にひざまずく。


 え? なにしてんの?


「ゲッコー様……カジュ様……シュラ討伐に御助力いただき……誠に感謝します」


 えー!?


 そんな改まってお礼言ってくれなくていいよー。友達じゃん!?


「はわ。われわれホーロン姉妹、貴方様方お二人に、忠誠を誓うです!」


 は?


 は?


 忠誠ってなに? 洗剤?


 コロンどーしたの? 言葉使いも変だし。


「は、はい! 私、オーガ族のマヤも。お二人に一生ついていくであります!」


 マヤも一生ついてきてくれるようだ。


 でもマヤとは、ずっ友だし。改めて言うことなの?


「えーと、三人がなにを言ってるのか意味が分からないのだけど……カジュ分かるか?」


「お兄ちゃん……そりゃあ分かるよ。この国の魔王を私達が倒しちゃったんだから、次の魔王は私達になって欲しいんでしょ?」


「はあー!?」


 えーーーー!?


 たしかにシュラを倒したのは僕達だけどさ。みんなの力っていうか。レジスタンスのみんなのお陰でしょ? 僕達兄妹だけで倒したと言うのは、ちょっと図々しいのじゃないかな? うん。


「ゲッコー様とカジュ様は……すでに『魔王の証』を持っています……魔王になる資格がある」


 え!? 『魔王の証』ってなに? どゆこと?


 僕は自分のステータスを確認してみる。たしかにちょっと表記が変わっていた。



ーーーーーーーーーー



 ゲッコー・モリシマ


 LV 魔王 《種族・サタンゲッコー》



ーーーーーーーーーー



 レベル表記が魔王になってた。


 種族もサタンゲッコーになっている。なにこれ?


「カジュなにこれ?」


「うーん、シュラを倒したことでレベル上限が突破したのかな? 私も少し変わってるよ」



ーーーーーーーーーー



 カジュ・モリシマ


 LV 魔王 《種族・サタンドライアド》



ーーーーーーーーーー



 なにこの世界観? 魔王になると種族にサタンがつくの? わりと雑じゃない?


 ファロンの言う『魔王の証』というスキルもたしかに持っていた。いつの間にかあった。スキルのところに勝手に資格証明を足さないで欲しいんだけど。



ーーーーーーーーーー


『魔王の証』

[レベルが限界突破し、恩恵を得る]


ーーーーーーーーーー



「でも僕達が王さまをやるよりも、ファロンが王さまになった方がいいと思うけどなー」


 どう考えても有能だし。


 コロンのためなら最高の国を作れるだろう。


 いいおねーちゃんだ。


「それは無理……私は弱い。ゲッコー様、カジュ様……お願いします。この国は今とても危険なの……た、民の……ために」


 え?



 コロンのためでしょ?



「うーん、どうしよっかなー? お兄ちゃん。私はお兄ちゃんの決定に従うよ」


 カジュは僕に任せるそうだ。


 こういう時だけ僕に投げてくるんだよな。困るなー。



 うーむ、



「はっきり言って僕達は国のことなんかなーんにも分からないよ? だから政治のことはぜんぶファロンがやってほしい。もし敵が攻めてきたら僕達も守りを手伝う。それぐらいしかできないし、やるつもりもない。それでいい?」


 国の仕事とかめんどくさいし。やりたくない。


 でも友達の頼みだし仕方ない。あとお金もらえそうだし。


「うん、お兄ちゃん。私もそれでいいと思うよ。ファロンちゃんが完全メインでやってくれるなら、私も王様になるよ」


 うん、カジュのオッケーもでたし。兄妹二人でやるならなんとかなりそうだ。


「もちろん……私もお手伝い……します」


 ファロンのオッケーもでた。



「それじゃあ、僕達兄妹は、今からこの国の王さまになりまーす!」



「「おーーー!!」」



 僕とカジュは腕を突き上げ高らかに宣言した。軽ーい。でもいいよね? 国なんてよく分からないし。



 ふと、気づくと──王城の庭広場には僕達を遠目に囲むように、たくさんの魔人達の姿があった。


 この国の魔人達かな? セバスチャンやマルマッドの姿もある。みな同じように僕達に向かってひざまずいている。


 新しい王さまの誕生を歓迎してくれているようだ。


 うーむ、でも僕達そんなに良いものじゃないよ?


 悪いものでもないけど。



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