第十八話 ②
シュラは胸に大穴を開けたまま叫び続ける。
お兄ちゃんの攻撃で心臓を破壊され、そうとうダメージが入ってるはずなんだけどなー。まだ生きてるみたいだよ。
「マジかよ。なんだあれ、タフすぎだろー」
お兄ちゃんは私の肩に乗っかって、ダルそうにシュラを見ている。MPの使いすぎで頭まで登るのもしんどいみたいだ。
「なんだろね、お兄ちゃん。あれもスキルなのかな?」
心臓を破壊されて生きてるってどんなスキルなの? えぐいよ。
「こ、これが……父上が手に入れたという究極の再生スキル……『絶対無敵究極再生』でありますか!?」
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『絶対無敵究極再生』
[身体を再生し回復する。死亡すらも回復する]
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マヤちゃんが説明してくれた。
ありがとー。
「『絶対無敵究極再生』だと……!? カッコいいじゃねえか……!」
お兄ちゃん、名前に感心してる場合じゃないよね。それにそんなにカッコよくないし。むむむ。
「お兄ちゃん。そういえば、この世界のスキルって文字数が多い方が強いんだよ。知ってた?」
どうでも良いので忘れていたが確かそうだったハズだ。
「え!? そんな設定あったのか! 初耳!」
最終盤でとーとつに新設定。ひどい。
お兄ちゃんを驚かせてしまった。
シュラの体はどんどん回復していく。さすがにダメージが大きいのか治りは遅い。しかし着実に胸の穴はふさがっている。あと数十秒も経てば完全に回復するだろう。
「コロちゃん……みんな……ここから逃げよう……生きていれば、なんとかなる」
ファロンちゃんが撤退をすすめている。確かにシュラが再生中の今なら簡単に逃げられるかもしれない。
「そうであります! 逃げるであります!」
マヤちゃんも賛成か。
うーん、でも。
もう『プラン3』に入ってるしなあ──
瞬間、
「グオォォォォーーーーッッッ!!」
シュラが吼えた!
「ふ、ふはは! ふはははははー!!」
笑ってなさる。大丈夫か?
「たわけが! ははは! 逃がすハズなかろう! この俺様にこれだけの傷をつけおって! 貴様ら! ふははははー!! 生かして帰さん! 気分が! 気分が良いぞ!!」
これが戦狂のシュラか──
あたまおかしい。
胸に大穴を開けられたのが、たいそうご立腹かつ嬉しかったようだ。強者と戦えるのが本当に嬉しいんだね。へんたいだよー。でも怒るのか笑うのかどっちかにしてほしい。お兄ちゃんが軽く混乱してるし。あと、いいきになるのは早いよ!
「スキル──『六鬼神滅無双腕』!! 『三世万里宇宙眼』!!」
ドオオオーーー!!
まだ再生は終わっていないが、シュラがスキルを発動する。シュラも回復を待っている余裕がないのかな? 早く私達と戦いたいのかも知れない。それにしてもスキルの名前が長いなー。お兄ちゃんは敵のスキル名に感心しない!
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『六鬼神滅無双腕』
[腕が六本になる。攻撃力が六倍になる。魔力が大幅に上がる]
『三世万里宇宙眼』
[頭部が三つになる。『多重複思考』『千里万里眼』『近未来視眼』を得る]
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三面六臂のなんか前世で見たことあるような姿になった。
身体がムキムキにふくらんで、身長は二階建ての家くらいありそうだ。
マッチョ&ビッグ。
完全にパワー系の姿だ。
マッチョキモい!!
「ふははははー! 見るがいい! これがこの魔王シュラの本気だー!!」
シュラを中心に膨大な魔力が渦巻いている。闘技場が揺れる。風もビュウビュウ吹いている。魔力の圧力でこんな現象も起こせるんだね。膨大な魔力の風……この現象を『魔力風』と名づけよう! 正式名称あるならごめん! しかし、コロンちゃん辺りだと、この風を浴びているだけで死ぬかもしれない。このシュラの魔力風は弱者にはかなり毒になりそうだ。弱者には!
横を見るとコロンちゃんがコロンと気絶していた。ゲーしてる。
コロンチャーン!!
「弱者の、運命は……死ぬことだけだ」
シュラがゆらりと体を動かす。それだけで全身に鳥肌が立つような恐怖を感じる。マッチョキモい!
「最強である俺様にとっては万物が弱者なり。俺様に挑むということは、生をあきらめることなり。俺様に出会うということは、死に出会うことなり。絶死絶命! これが俺様以外の者に与えられた運命である!」
シュラが六本の腕をうねらせて戦闘の構えをとる。
「さあ! 俺様を受け入れる準備はできたか! 運命からは逃れられんぞ!!」
ふあー強そう。たまらんね。こわー。
ファロンちゃんとマヤちゃんは完全に恐慌状態になっている。恐怖で身体がまったく動かせないようだ。コロンちゃんはゲーコロンだし。お兄ちゃんは……あ、あくびしてる!?
これ、プラン3が失敗すると私達死ぬかもだけど、お兄ちゃんそこのところ分かってるのかな? それだけ自信があるのかもしれないけど。私もあるけど。
「弱者とか運命とかよく分からんけどさー」
お兄ちゃんがシュラに話しかける。シュラの魔力風などどこ吹く風だ。さすがお兄ちゃん! 胆力です!
「一人で最強最強言ってて、バカみたいなんだけど?」
うん、お兄ちゃん正論。自分で自分のこと最強って言うのはカッコ悪いよね? 滑稽だよね? ダサいよね?
「そもそもさー、」
お兄ちゃんが私の顔を一瞬、チラッと見て言った。
「最強って僕達兄妹のことなんだけど?」
はわー。
前言撤回。
自分で最強と言ってもカッコいいコトもある。
お兄ちゃんサイコー!
そうなのだ、私達兄妹は最強なのだ。
弱者とか運命とかどうでもいい。
二人で最強。二人で無敵なのだ。
「ふ、ふははー! まだ笑わせてくれるのか!」
シュラがまた大笑いする。もしかして笑い上戸なのかもしれない。『プラン6』に『笑い殺す』をいれておこう。
「この俺様を見てみろ! 俺様こそが最強だ! 全てを砕く六本の腕! 万里に渡る感知能力! そして、未来すらも見通す────、」
そこで、シュラの動きが止まった。
「……な、なんだと!?」
どうしたのかな? たいそう困惑しているね。
シュラは言葉に詰まり、声も出せない。
顔も青くなっている。
うふふ。
どうしたのかな?
どうしたのかな?
もしかして。もしかして。
「あれー? もしかして『未来』が見えないんですかー?」
どうやらプラン3で終わってるらしかった。
完全勝利。
「な、なんだと……!? バカな……!!」
シュラは完全に動揺している。未来視の結果が何も見えないというのはよほど恐怖なんだね。そろそろ胸のキズも完治するんだから元気出さないと。ほら元気出さないとだよ。病は気からだよ。
「おまえ、植物には詳しいか?」
私の肩に乗っているお兄ちゃんがシュラに問いかける。ちょこんと座っているが、いつもより少しだけ体重が軽い。
尻尾がないのだ。
「うちの妹は植物に詳しいんだけどさ。この世界には《デビルズシード》っていうのがあるらしいんだよ」
うん、あるよ。マシラさんのお家のやつだね。
「これ、魔物を土壌に成長するらしいんだけどさ。魔力を多く持ってる魔物に植えるほど大きく育つらしいんだ」
お兄ちゃん尻尾がないのでバランスが悪いよ。フラフラしてる。早く再生すればいいのに。もしかして忘れてる?
「魔王だったらどれくらい巨大な樹になるんだろうなー」
「な、なな……だから、貴様は何を言っているーー!!」
「いい樹になれよ」
──貯蔵解放。
「『種子生成 《デビルズシード》』!!」
お兄ちゃんがシュラの心臓部に残してきた尻尾から、私のスキルを発動する。尻尾に『貯蔵』されたスキルは私の『種子生成』だ。
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『貯蔵』
[尻尾に蓄える(魔力、スキル等)]
『種子生成』
[任意の種子を作り出す。成長するかは育て方による]
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「あーんど、『植物成長』だよ!!」
私もスキルを発動する。
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『植物成長』
[任意の植物を成長させる]
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成長させるのはもちろん、シュラの体内にある《デビルズシード》である!
トカゲと樹霊、兄妹二人による協力コンボ。
「な、なにーーーー!!」
シュラは断末魔の叫び声を上げて、
立派な木になったのだった。




