第十五話 ②
魔王四天王『大風のポルス』。
ハトの魔人である。
外見は完全にハト。
サイズが大きく、1mくらいある。
コンプレックスだろうか? 孔雀風の軍服を着ている。ちょいださい。
ベレー帽を被り、右目に眼帯をつけ、口に葉巻を咥えている。100点満点の軍人である。ホントに軍服がおしい。おしいなー。
ポルスは魔王空軍を従えて、私達の前に立ちふさがった。いや、飛びふさがったのだった!
「あれー? でも空軍にしては数が少なくない? 30人くらいしかいないよ?」
魔王空軍ってこんなに人材不足なんだっけ?
「はわ、魔王空軍の総司令はおねーちゃんです! たしか1000人は部隊にいたと思うです!」
1000人ってすごい。そしてファロンは空軍総司令だったんだね。兼務がすぎるよ。でも、ここにいない970人はどこに行ったのだろう?
「ぽっぽー! ファロン総司令は空軍の英雄! 誰一人として彼女と敵対するものはいない!」
え?
「よって、全員有給を取っているぽっぽー!」
魔界の軍隊はすごくホワイト企業だった。
なんなら一週間徹夜でコロンちゃんを働かせた、レジスタンスの方がブラック企業だった。
「そんなんで軍隊がやっていけるのかよ。すごいな魔界の軍隊は!」
お兄ちゃんも感心している。お兄ちゃんこのエピソードはだいぶ闇深だよ。気づいてないだろうけど。
「うーむ、でもファロンと敵対してないなら、ここを普通に通してくれても、いいんじゃないか?」
お兄ちゃんのストレートすぎる交渉術だ!
「無理ぽっぽー! そんなことすれば流石に魔王様に殺されるぽっぽ!」
だめだったーー!
我らはここを通さん! だから──、
ポルスは翼をこちらに突きつけ、睨みつける。
「我々を倒して──ファロン総司令を助けてみよ!」
おおー! そういうノリなんだね!
ポルスはそのまま上空へ飛び上がる。ぽっぽーという効果音が聞こえる。
空軍の隊員達も、私達の周りを旋回して牽制してくる。けっこうなスピードだ。
「ぽっぽー! ファロン総司令を助けるつもりなら、これくらいの囲み突破してみろ!」
私達の周りが強風に包まれる。
「スキル『大風牢獄』──ぽっぽー!!」
「はわ、すすすすごい風ですー!!」
強風に流され、コロンちゃんが吹き飛ばされる。風の渦に飲み込まれグルグル回る。
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『大風牢獄』
[風の牢獄を作る。風を吸収するほど強化される]
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ポルスと空軍隊員で私達の周りに乱気流を発生させているようだね。コロンちゃんじゃ脱出不可能かも。うわーたいへんだー。うわー。
「お兄ちゃんー、これ洗濯機みたいだねー!」
「懐かしいー! あったなそんなの!」
なんかグルグルが楽しくてテンション上がってきた。コロンちゃんは早くも限界みたいだけど。
「カジュ、僕ちょっと行ってくるよ」
お兄ちゃんが私の頭の上で準備運動をしている。
「うん、そうだね。コロンちゃんがゲーしても困るからね!」
──『脱皮《離脱》』!!
お兄ちゃんは大風の渦の中に消えていった。というか、ワープしていった。
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『脱皮《離脱》』
[皮を脱ぐ。脱いだ皮を残して、本体は任意の場所(近く)に転送される]
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『脱皮《離脱》』は緊急回避にも使えるが、単純な移動手段として使っても強い。ワープできるからだ。連続でワープすれば──あ、ほらもう掴まえたね。
お兄ちゃんがポルスの頭に引っついた。
うん無理だよね。空中で連続ワープしてくるトカゲから逃げ続けるなんて無理だよね。どんなに早くても『飛行』だと軌道が予測しやすいからね。
「ぽぽぽ、なんだー!? 離れろー!」
ポルスがジタバタしている。お兄ちゃんはすでに首の後ろ辺りに移動している。そのまま噛み殺しても良いけど今回はファロンちゃんの部下っぽいからね。
「『属性変化《嵐》』ーー!!」
お兄ちゃんが嵐属性になったことで、ポルスの周りにとんでもない強風が吹き荒れる。『属性変化《風》』ではなく《嵐》とは……今回は大盤振る舞いだね。さっきの風の比ではない。
まるで竜巻がボールになったような大きな風の玉がポルスを中心に出来上がる。うーん、すごい。きっとこの風玉が今から空中をグルングルン飛び回るんだよね? こわー。
「コロンちゃん、ちょっとここから離れようか?」
「はわ……は、はいですぅ……」
先ほどの大風のダメージが抜けてないようだ。コロンちゃんが目をぐるぐるにしながら頷く。よろよろーと離れるが、これは一回吐いた方がいいかもなー。
「ポルス様! 今お助けを!!」
ポルスの部下達が竜巻玉に近寄ろうとする。あーダメだよ逃げないとー。
「うーむ……決めたぞカジュ! 《邪繰輪紅竜巻》だ!!」
なにを決めたのかというと技名だろう。
お兄ちゃんの声と同時に空中に止まっていた竜巻の玉が一気に暴れだす。暴風の玉は一瞬で魔王空軍の人達を飲み込み空中で乱舞する。すごい! 大風玉が大暴れだよ! あの中に30人も人が入ってるとは思えないよね!? 大丈夫なの!? 殺してないの!?
最終的に竜巻の玉は爆音と共に地面に激突し、爆散して消えた。砂煙がなくなると、そこには地面に突き刺さり、地上に下半身だけを突き出した、ポルスと魔界空軍の人達の姿があった。なんだっけこれ、あの古いミステリーの、忘れた! みんな揃って同じ姿なのがなんかコメディーぽい。お兄ちゃんのこだわりを感じる!
「はわ……すさまじい威力です……」
コロンちゃんはドン引きである。よろよろしてる。早く回復して!
「カジューどうだった? 僕の新技?」
お兄ちゃんが意気揚々とやってくる。少し暴れたので気持ち良さそうだ。
「そうだねお兄ちゃん。『邪繰輪紅竜巻』の『紅』の字に意味を見いだせないから、私は『輪』を一文字で『リング』と読ませた方がカッコいいと思うよ」
「邪繰輪竜巻か…たしかにシンプルでカッコいい!!」
私達兄妹はどーでもいい話に花を咲かせた。
そしてコロンちゃんはすみっこでおえーしてた。




