第十四話 ②
ファロンちゃんの考えた『シュラ狩りの策』──、
それはファロンちゃんのスキルである『破防の魔眼』と、即死武器である『タナトスの短剣』による必殺コンボである。
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『破防の魔眼』
[見つめた相手の防御力を0にする]
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『破防の魔眼』は見つめた相手の防御力を0にするスキルである。防御力が一万でも百万でもスキルを使えば0にできる。その効果は魔王すら例外ではなく、数十万あるシュラの防御力も豆腐なみに下げることができるのである。うん強い。最強。
『タナトスの短剣』はキズをつけた相手を即死させる、それまた恐ろしい短剣である。攻撃力はほとんど無いが、かすりキズでもつければ相手を殺せるのだ。かなりエグい武器である。
通常なら『タナトスの短剣』の攻撃力では、シュラの体にはかすりキズ一つ、つけられないだろう。しかし『破防の魔眼』が効いてる間ならやれる。つまり、殺れる。シュラを殺せるという寸法である。
これがファロンちゃんの『シュラ狩りの策』である。
はー、『破防の魔眼』強い。めっちゃ強い。このスキルの存在を聞いた時は、危うく後ろからファロンちゃんを殺そうかと思ったよ。お兄ちゃんに命の危険がおよぶ可能性があるからね。お兄ちゃんトカゲだしHPそんなに高くないし(私に比べて)。お兄ちゃんに対しての危険は排除しないとね?
そんな私とファロンちゃんですが、なんだかんだ今はなかよしです。
「はわ、これが『タナトスの短剣』です!」
コロンちゃんが先ほどから大事そうに抱えていたフクロウのぬいぐるみをビリビリと破り、中から鞘に納められた短剣を取り出した。危険な武器なのでテープで厳重に封じられている。
ファロンちゃんの屋敷にも魔王軍が色々と調べに来たらしいし、隠していた短剣だけは必死に持ってきたんだろうなあ。コロンちゃんえらい!
「さすがコロンちゃんだよ、ぬいぐるみに隠して持ってくるなんて。お兄ちゃん気づかなかったでしょ?」
「え!? ぼぼぼ、僕は最初から気づいてたに決まってるだろ! カジュのお兄ちゃんだぞ!」
私のお兄ちゃんだから気づいていたようだ。さすが私のお兄ちゃん。すごいカッコいい! 動揺してるようにしか見えないけど!
「すごく動揺してるケロ。ウソはよくないケロ?」
「ちち、違わい! ううう、ウソなんかついてないわい!」
マルマッドさん、あまりお兄ちゃんをいじめると泣いちゃうから止めてください。よしんば、お兄ちゃんを泣かすというのなら、それは私の役目です! 泣いてるお兄ちゃんもかわいいよ!
「皆様、作戦会議を始めましょう。我々にはあまり時間がございません」
執事さんが場を静める。
「作戦決行日は一週間後の正午。処刑が始まる直前です。処刑場には魔王軍や魔王四天王、魔王シュラが見物に来るでしょう……」
『シュラ狩りの策』を使うならシュラが一人でいるのが好ましい。何とかして魔王軍や魔王四天王を処刑場の外へ誘導しなければならない。
「我々の目的は親方様を助けだし、魔王シュラを倒す! これだけです!」
執事さんも力が入っている。急展開でいきなり決戦となったが、これまで長い時間準備をしてきたのだ。負ける気はないだろう。
うーん、この中で頭を使えそうなのは私と執事さんとマルマッドさんくらいかな? 何か良い策を考えないと…………あ、もちろんお兄ちゃんもカシコイヨ?
「はわ、まずは……魔王軍を誘い出す方法を考えるです!」
コロンちゃんもカシコイヨ?
たしか、最初の計画では魔王軍の陽動は、マルマッドさんの泥兵軍団が行う予定だったはずだ。目標は500体だったけど泥兵の補充はどんな感じだろう?
「ケロ……俺の泥兵は今のところ100体ほどしか完成してないケロ。この数では街に混乱を起こして、軍を誘き寄せるのは難しいケロ」
「マルマッド様の泥兵は基本的に物理攻撃。もっと数がいなければ誘導するような動きは難しいですね……」
100体か……作るの時間かかるんだろうなあ。一体一体丁寧だし。細部のディテールに対するこだわりがすごいんだよね。戦場ではムダだけど。
「ケロ、何か爆弾のようなモノを用意できればいいケロが……」
泥兵軍団に爆弾を持たせて王都に進撃させれば、それはそれは大混乱を起こせるだろう。しかし、この魔界に爆弾はない。己の力がすべての魔物の世界で、他人の作った武器を使うという発想自体がほとんどないのだ。
人界にならあるんだろうけど……
「はわ……私の『爆弾』スキルは私しか使えないですし……です……」
コロンちゃんくやしそう。
うーん、爆弾を用意する方法かー……
「用意できるといえば、できるけど……」
私はお兄ちゃんの方をチラリと見る。
お兄ちゃんはそれで察したようだ。
「うん! みんな聞いてくれ!」
お兄ちゃんならやるよねー。
むむむだけど、お兄ちゃんがいいならいいよ。私は。
「爆弾を作る方法はある!」
お兄ちゃんと私、そしてコロンちゃんの、長くつらい夜なべの日々が始まるのだった──。
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……
一週間後。




