第十二話 ②
はあ、お兄ちゃんかわいいです。
最終的にどこか行ったけど、パニックになっていつもの5倍くらいの速さで這いまわって木々をしゃかしゃか移動してるところはめっちゃ可愛かったよ。
すごく興奮したね。
ふーう……
「はわ、カジュさん! 手伝ってくださーい!」
むむむ、私の余韻を邪魔するものは誰だ? コロンちゃんか。──許す!
どうやらピンチのようである。
お化けの数が尋常じゃない。
「ゴオォーストー……ゴオォォーストー……」
ビュンビュンと次から次へ出現しては襲ってくる。とてもスルーできる数ではない。これが死霊か。試しに素手で捕まえようとしてみたけど、すり抜けるだけで触れなかった。うーん。やっかいだね。
「はわっ! 数が多すぎです!」
コロンちゃんはナイフで抗戦している。聖属性のナイフかな? 小さくて可愛い。ぜんぜん当たってないけど。
「これは予想外ですね……コロン様、もう少し私の近くへ!」
執事さんはロープをブンブン振り回してお化けを倒している。ロープに当たっただけでお化けが爆散する。聖属性ロープすさまじい威力である。
聖なるロープ強い! あのロープで二重跳びしてるだけで勝手に全滅させるのでは? 森だから木があるし難しいかな?
「セバス、そのロープ分けてくださいです! ナイフでは攻撃当たらないです!」
コロンちゃんが音を上げた。あきらめるのが意外と早かった。
「だめです。コロン様はそのナイフでがんばって下さい。これも訓練です」
「なぜですーー!?」
執事さんは厳しかった。
お化けは念力で攻撃してくる。とうぜん私にはダメージがない。しかしコロンちゃんは攻撃を受けるたびにけっこう痛がってるので、やられてしまわないか少し心配である。
むむむ。これはそろそろあの人を呼ぶしかないようだね。お化けの数が多すぎてバンシーを探すどころじゃないし。数を減らさないと。これ以上攻撃を受けるとコロンちゃんも執事さんも危険だよ。
私は森中に響くほどの大声で叫んだ、
「おにーちゃーん! たすけてーーーー!!」
うん。お兄ちゃんが先ほどから、あの木の影に隠れて、こちらをうかがっていたのは分かってたよ。たぶんピンチに颯爽と現れたかったのだろう。驚いてパニックになった手前、普通に帰ってこれなかったんだろうねえ。
「応ーー! 大丈夫かみんな!!」
ババーン!
お兄ちゃんがカッコよく現れた! 樹の上方、少し高い位置の枝に乗っかっている。かっこいいポーズである。どんなポーズか表現しがたいが、カッコいいポーズである。
とにかく! カッコいいポーズをしながら、お兄ちゃんは登場した!
「コロン! セバスチャン! 俺に任せろっ!! カジュは体育座りでもしてろ!!」
お兄ちゃんが木の枝からバッ! とジャンプする。
「『属性変化《聖》!!』」
ーーーーーーーーーー
『属性変化』
[本体の属性が任意に変化する]
ーーーーーーーーーー
お兄ちゃんの体が青白く光り《聖属性》となる! 聖属性にもなれるのか! すごい! あいかわらず『属性変化』すごい! いや、お兄ちゃんすごい!
お兄ちゃんが樹から樹へと跳び移りながら、お化け達を倒していく。青白い光が縦横無尽に駆け巡る様子は、さながらレーザーショーのようだ。
ふあー、きれい……
幻想的な光景である。
体育座りをしながら見ている私。
私は長い長い止むことのない死霊達の絶叫をBGMに、森のレーザーショーを楽しんだ。
………………
…………
……
気がつくと、死霊達の絶叫は聞こえなくなり、お兄ちゃんもスキルを解除していた。
森は静寂に包まれていた。
周囲に死霊の気配は、いっさい無くなっている。
いっさい無くなっている。
え?
あれ?
いっさい無くなった?
「おおお、お兄ちゃんー!? 全部倒したらダメでしょがい!!」
お兄ちゃんは、全ての死霊を昇天させていた。もちろんバンシーも。
「はわ、全部倒してしまいましたです……」
「ゲッコー様……」
コロンちゃんと執事さんが悲しそうな顔をしている。
「うーん、しまった」
任務失敗だな!──お兄ちゃんは爽やかにそう言った。
死霊の森の任務──失敗!
むむむ!




