第八話 ②
そして、私達は街の一角、無惨にも瓦礫の山となったその場所に立っていた。
「カジュやりすぎ……」
「仕方ないよ、だって悪い人達だったもん」
広場で声をかけられ着いて行った先で、いきなり私は拘束されそうなったのだ。ので、とりあえずボッコボコにした。
ぜんぜん堅気の人達には見えなかったし、奴隷とかなんとか不愉快なことを口走っていたので、容赦なーくしばいてやった。
ボゴーン! ボゴーン!
つよい。《ヨグさん(名状しがたい棍棒)》つよい。
これぞ質量の力! 圧倒的物理攻撃だよ!
暴れているとどんどん援軍を追加される。
あまりの援軍の多さに『チンピラの無限湧きステージに突入!』したのかと思ったくらいだ。30分ほど暴れ続けると静かになったから良かった。ステージクリアー!
周囲の建物は豆腐のように粉砕されて粉々だ。《ヨグさん》はホントすごかった。これ私のパワーがすごいだけじゃないよね? か弱い乙女だよ私。むむむ。
「ここら辺の建物全部壊したけど、大丈夫だったのか……?」
お兄ちゃんが心配している。戦闘に巻き込まれて一帯の建物がすべて瓦礫と化してるからね。心配なのは分かるよ。きっとすべて悪者のアジトだったのだ、と思うことにする。うん。
「大丈夫だよお兄ちゃん、正当防衛だよ。相手の方から攻撃してきたんだし、私達は悪くないよ」
「そうだけどさ……」
お兄ちゃんは賠償とか弁償とかを心配してるのかな? それなら安心して。請求してくるだろう人達はもうこの世にいないから。てへへ。
私は血の海になってる瓦礫地帯を見て、てへへした。
「んー、とりあえず金目のモノでも探すか……」
お兄ちゃんが瓦礫の山を漁りだした。たくましすぎて大好きだ。
「カジュも手伝ってくれー」
「うん。分かったよ」
兄妹そろってサルベージ。しかし金目のモノはまったく見つからなかった。
「ないな……マフィアなら宝石の一つくらい持ってそうだけど」
「お兄ちゃん金庫を探さないと。金庫を見つければ一気に大金持ちだよ」
「なるほど金庫か!」
一攫千金ねらいである。金庫なら大きいし瓦礫に混ざっていても見つけやすいはずである。きっと見つかるよ! 私達、大金持ちだよ!
さがさが、さがさが。(モノを探すオノマトペ)
10分後。
なにも見つからなかった。
「しょうがない、この変な像を売ってみるか……」
お兄ちゃんはゴミ漁りに飽きたようだ。じつにてきとーに、近くに落ちていた変な像(馬かな?)をチョイスした。
「お兄ちゃん、こんなの売れるの?」
私はお兄ちゃんの選んだ変な像(羊かもしれない)を見つめながら、ため息を着くのであった。
………………
…………
……
「はわ、カルラファミリーが壊滅してるです!?」
「コロン様、お気をつけください……」
何だろう? 誰か来たのかな?
見ると、執事のような格好をした狼と、ほぼ人間な見た目の少女がいた。
執事の方は顔が完全に狼なのでオオカミの魔人と分かる。もう一人の少女は人間にしか見えない。なんの魔人だろ? うーん、なんとなく髪が梟っぽいかな? 目が大きくて可愛い。
「貴女がこれをやったんです?」
「え? ちがいます」
堂々と答えた。
「ええぇぇぇー!?」
お兄ちゃんがビックリして変な声を上げた。
こらこらお兄ちゃん。ウソをつく時は堂々としてないといけないよ。バレちゃうよ。
「私達ぐーぜん瓦礫の山を見つけて漁っていただけなんです。お金なくてビンボーなんです。見逃してください」
半分くらいは本当である。
「カジュ……僕はあんまりウソは良くないと思うなあ。ウソは泥棒の始まりっていうし。カジュには犯罪者になってほしくないんだよ」
この血の海で今さら何をいうのかお兄ちゃん。ある意味豪胆だよ。
「え、偶然いたんです? ではその返り血は?」
「お兄ちゃんの鼻血です」
「ええぇぇぇー!?」
お兄ちゃん少し黙ろう。面倒ごとは困るでしょ。
「コロン様、ごにょごにょ……」
オオカミ執事が少女に耳打ちする。この少女はコロンという名前らしい。
「はわ!? 危険人物そうだから見なかったことにするです!? だめです! お姉ちゃんに任された街を私は守るです!」
危険☆人物!!
改めて言われるとショックだよ。確かに一面血の海で体は返り血で真っ赤だし、瓦礫の山の頂上に(名状しがたい形の)棍棒が血ミドロで突き刺さってはいますが、
「私達は危険人物じゃありません!」
それはもう、しっかりと言ってやった。
「とにかく、私はこのホーロンの街の領主代理のコロンです! お姉ちゃんに任されているこの街は私が守るです! 貴女を拘束するです!」
なんか領主代理の少女と戦うことになった。