表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/41

第六話 ②


 上空にぶん投げられた私達は、ぬしに向かって空を行く。


 すごい高いねー、いい眺めだよ、お兄ちゃん。ほらー、鳥さんだよ。


「鳥なんか、知らんがな。それより見えてきたぞ」


 私達の飛んでいく先、一面に広がる森の中に、ぽっかりと木々のない空間ができ上がっている。ぬしがやったのだろう。


「うん、あたま良いね。私達が植物を操って攻撃すると理解してるみたい。決戦場として場を用意したんだね」


 確かに木々に囲まれた森の中では私は無敵だ。


 森の中で私を倒すには、まず周囲の木々をすべて排除する必要があるだろう。とはいえ森の中に空き地を作るとはすごいパワーである。


「闘技場を作ったヤツがなに言ってんだ……」


 お兄ちゃんがツッコミを入れてくる。もうすぐ到着だ。勝負は一瞬で決まる。


「行くよ。お兄ちゃん!」


「おう!」


 まだ私達は上空だが、ぬしの姿はもう肉眼で確認できる。白い大猿の魔物が、森にできた大きな空き地のド真ん中で私達を待ち構えている。


「『植物成長』!」


 私の握った手の中の『種』が、一気に成長する。


「つづけて『植物操作《縛》』!!」


 さらに『植物操作』で、手の中で成長中の植物を武器化する。腕をぬしの方に突きだす、無数に伸びた木のツタが、ぬしを捕らえようと上空から襲いかかる。


「ギャオオォーーー!」


 大声とともにぬしが両手を振り回し、捕らえようと迫るツタを払いのける。ツタがまるで紙切れみたいに千切られていく。ぜんぜん効かない。さすがこの森のぬしだ。


 私はそのままぬしに対峙するように、空き地に着地する。手の中の植物は力を使い果たし枯れてしまった。ツタはもう使えない。でも問題なし。


 私はぬしと向き合って立つと、一呼吸おいて、あごに手を当てこう言った。


「あたまに何かついてますよ? トカゲかな?」


 最初のアタックの時に私の攻撃に紛れ、お兄ちゃんはすでにぬしの後頭部に引っついていたのだ。


「『脱皮《爆破》』ーー!!」


 瞬間、お兄ちゃんは大爆発した。



 ………………


 …………


 ……



 ぬしによって森の中に作られた戦いの場は、お兄ちゃんの『脱皮《爆破》』によって焦土と化した。幸いなことにぬしによって木々が引っこ抜かれていたため、森への延焼は免れたが、まだいろいろ燃えている。



ーーーーーーーーーー


『脱皮《爆破》』

[皮を脱ぐ。脱いだ皮が大爆発する。]


ーーーーーーーーーー



 むむむ、今回は全力で使って良いとは言ったけどさ。私まで巻き込むってどーなの? 離れてたけど私もまあまあHP減ったよ? 服もこげちゃったし。


「ふいー、カジュどうだった? お疲れ様ー」


 なんか一仕事終えた風にお兄ちゃんがやって来る。さわやかである。


「久しぶりに『脱皮《爆破》』使ったけど、威力ヤバイな。もう少し弱めて撃てばよかったよ」


 そうだね。お兄ちゃんがもう少し手加減して撃ってくれてれば、私は今こうしてアフロヘアーにはなってなかったね。むむむ。


「しかし、さすがぬしだな。タフすぎる」


 そうなのだ。お兄ちゃんの言うように、ぬしはまだ生きていた。あの大爆発を頭部に受け、黒こげで虫の息ではあるが、確かに呼吸しているのだ。


「TODOME刺さないとだね」


 可哀想だが今回の目的が『ボスを倒して上限突破なるか?』なので、とどめを刺す必要がある。


「『植物操作《槌》』!」


 私はてきとーな木から棍棒を作ると、それを手に倒れているぬしに向かう。せめて一撃で殺すからね。ごめんね。


 しかし、


「ウキャー、ウキャー!」


 どこから来たのか、猿の魔物達が私とぬしの間に割って入ったのだ。


「ウキャー! ウキー!」


 ボスを殺さないでー、とでも言っているのだろうか? 猿達は必死に懇願してくる。土下座してるのまでいる。うーん、なんか完全にこっちの方が悪者だぞ。


「どうしよう、お兄ちゃん……」


「うーむ……」


 私達は魔物ではあるが根っからの悪者ではないのだ。暴力嫌いだし。戦いはするけど降伏は受け入れる。まあ、放っておいたらこのままお亡くなりになるかもだけど……


 うーん。どうしよ。


 悩む私達。


 その時、ぬしが目を覚ました。


 体はぼろぼろで火傷が酷く、今にも死にそうなほどに弱ってはいるが、その瞳はまっすぐに力強く輝いている。


「殺せ……」


 ぬしはゆっくりと口を動かした。



 ………………


 …………


 ……



 長い静寂のあと、私達はこう叫んだ。



「「しゃべったぁぁぁーーー!?」」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ