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第六話 ぬしとの戦い①


 二年たった。


 森の魔物を相手にコツコツとレベル上げをがんばった僕達は、兄妹ともにレベル100まで到達していた。ちりも積もれば山となるである。


 しかし問題が発生する。レベル100になったあと、そこからピタリと成長が止まってしまったのだ。


「最近全然レベル上がらないね……」


 カジュがレベル100になったのは、二ヶ月ほど前である。以降どれだけ魔物を倒してもまったくレベルが上がっていない。


「カジュだけじゃなく僕も上がってないしなあ」


 ちなみに僕はもう一年もレベルが上がってない。


 そうなのだ。トカゲな僕はカジュに比べてめちゃくちゃレベルアップが早かったのだ。もうポンポンレベルが上がっていくのだ。魔物を倒すたびにレベルアップ! レベルアップ! という勢いで上がっていった。僕はカジュを追い抜いて一年でレベル100になったのである。


 比べてカジュはレベルアップが遅かった。レベル95から100にするのなんて、とにかく大変だった。たぶん半年くらいかかったと思う。僕の『脱皮』した皮を食べると経験値が多く得られるらしいが、それでも1レベル上げるのすら全然だったのだ。


 なぜトカゲのレベルアップ必要経験値は少ないのか? なぜカジュのレベルアップ必要経験値は多いのか? そこら辺を深読みすると悲しい事実が発覚することになりそうなので、今はやめておく。謎は謎のままで良いこともあるのだ。つづく。



ーーーーーーーーーー


 ゲッコー・モリシマ


 LV 100 Max 《種族・モリゲッコー》


 HP 41000

 MP 24000


 STR 38000

 DEF 38000

 MAG 32000

 LUC 91


[スキル]

『脱皮』

『脱皮《離脱》』

『脱皮《爆破》』

『属性変化』

『危険察知』

『自切』

『貯蔵』

『再生』



ーーーーーーーーーー



 久しぶりに僕は自分のステータスを確認する。


 今さら気づいたが、レベル100の隣に『Max』という文字が書かれている。今さら気づいたが。


「もしかしてだけど、この世界ってレベル100までしか上がらないのか?」


「うーん、やっぱり『Max』は限界っていう意味なのかな? お兄ちゃんのステータスにも書かれてるんだよね?」


 お互いのステータスを直接見ることはできないが、カジュの方にも『Max』表記があるようだ。


「困ったねー。どうにか限界突破できないかなあ……」


 カジュがアゴに手を当てて考えている。みんな考え事するときにこのポーズをするよね。なぜだろう。妹だけに考えさせるのもなんなので、兄である僕もない知恵しぼって考えてみる。


 うーむ、


「例えば、ゲームだとどうなるんだ?」


 二年異世界でいっしょに過ごして分かったが、じつはカジュはゲームにかなり詳しい。学校の図書館のパソコンでフリーゲームをよく遊んでいたらしい。カジュ曰く、フリーRPGは変なシステムが多くて面白い。だそうだ。


 邪悪神との会話ではウソをついていたようだが、よくやった! と誉めておいた。


「イベントを進めるとレベル上限が解放されるゲームもあるけど……どうだろうね?」


 なるほど、イベントね。フェスのことかな?


「あとは『ボス』を倒す……とか? このモンスターを倒したら限界突破できます。ってのもあるよ」


 ボスか……この森にも一応いるんだよなー。


 あ、カジュのことではないよ。



 僕達が住んでいるこの森には『ぬし』がいる。森の奥深く、カジュの『植物結界』で見つけたのだが、森の最奥にその魔物はいるのだ。


 巨大な猿の魔物である。


 僕達がぬしと呼ぶその魔物は、カジュが探った感じでは、間違いなくこの森で一番強い魔物だそうだ。兄妹は含んでないが。


「向こうが手を出さないから放っておいたけど、やっぱり強者どうし戦う運命だったようだな」


 なんか、カッコつけて言ってみた。


「うん、ぬしは強いよ。間違いなくこの森のボス。たぶんレベル100は間違いないと思う。限界突破の条件としてレベル100の相手を倒すっていうのは、すごくありかもしれないね」


 カジュの中では『ぬしを倒して限界突破』は、かなり有力な説らしい。


「ならいっちょ、やってみっか!」


「うん、がんばろう、お兄ちゃん!」


 僕達はぬしを狩ることにした。


「でも僕達がぬしを倒したら、代わりにこの森のぬしにされないよね?」


 この森の支配者になるというのは非常に大変そうだ。わりと荒れてるんだよなあ、この森。



 ………………


 …………


 ……



 たたかいはしれつをきわめた。


 僕達がぬしのナワバリに入ると、ぬしの手下である猿の魔物達がいっせいに襲いかかってきたのだ。木々を伝って縦横無尽に攻撃を仕掛けてくる。とにかく数が多い。あと、ウキャー、ウキャーうるさい。


「うわー! スッゴい数だなカジュー!」


「そうだね、お兄ちゃん! ちょっとめんどくさいかも!」


 僕は『属性変化《雷》』で電気をまとい、かたっぱしから猿の魔物達をしびれさせていく。しびれて地面に落ちた猿は、カジュが『植物操作』で作った棍棒を使って撲殺していく。


 これぞ兄妹コンボ技、


《サンダーボルト・コンボウ》である!


 ビリビリー! ボカ!


 ビリビリー! ドカ!


 ビリビリー! グチャ!


 負ける要素はないが数が多くてつらい。しかも一方的すぎてだんだん猿の魔物達が可哀想になってきたし。これは動物虐待なのでは? いや魔物だから問題ないよね? よね?


「お兄ちゃん! 私に任せて!」


 しんどそうな僕を見かねてカジュが、右手を突き出して叫ぶ。


「『植物操作《刺》』!」


 周囲の木々が一瞬で変形し、木の幹から枝にいたるまで全身から槍のようなトゲを突き出す。


 ドガガガ!


「ギィヤアアア! ギャアアア!」


 木々を足場に戦っていた猿の魔物達は急に伸びてきたトゲに対応できるわけもなく、そのまま串刺しにされ悲鳴を上げた。


 カジュはぬしのナワバリ全体の木々を針山化したのだろう、たいそう遠くからも痛そうな猿達の悲鳴が聞こえる……カジュさんや、やりすぎですよ……


「安心してお兄ちゃん! みねうちだよ!」


 殺してないならまあよし!


 僕は妹の言葉を全面的に信用した。


「ーーーーーー!!」


 大地を震わす叫び。遠くからものすごい雄叫びが聞こえた。ぬしの上げたものだろう。


「カジュがやりすぎたから……めっちゃ怒ってるじゃん」


「お兄ちゃん、これは戦争だよ? 情けは無用なんだよ?」


 そう言いつつ、猿達にTODOMEを刺してないカジュは優しいと思います。そういうとこ僕は好きです。


「でも自分から居場所を知らせるとは悪手だねー。お兄ちゃん、ぬしの所までぶっ飛んでいって、一気に倒しちゃおうよ!」


 はい? ぶっ飛んでいくとは?


 僕達、飛行スキルとか持ってた?


「『植物操作《弓》』!」


 カジュは言うと僕を抱きかかえ、操作を使ったであろう大木に掴まれる。大木は僕達を掴んだまま弓なりに反って、しなるように力をためていく。


 ああ、なるほどー、謎がひとつ解けちゃったよ。特訓中に闘技場の外からぶっ飛んでくる魔物達は、こうやってぶん投げられていたんだね。確かに聞いてはいたけどさ、実際に体験できるとはねえ……うっそだろ。


「北北西、風向きよし。角度十分。お兄ちゃん、準備はいい?」


「はい、どうとでもしてください」


「わかった、発射ーーーーー!」


 カジュの陽気な声とともに、僕達兄妹は大木によって大空にぶん投げられた。



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