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猫な彼女は朝に弱い

作者: @山氏

 目が覚めると、俺は咲弥を抱きしめていた。

「おはよ」

 咲弥が顔を赤くしながら俺を見ている。

「今何時?」

「七時半」

「咲弥、今日授業一限からだっけ」

「うん」

「じゃあ、起きないとね」

 俺は咲弥の髪を優しく撫でてからベットから起き上がった。

「寒い……」

 咲弥は布団を被ったまま動こうとしない。

「遅れるよ?」

「いい。行かない」

「ダメだよ……」

 布団を引っぺがして咲弥の体を起こすと、不機嫌そうに俺を睨んだ。そして布団を手繰り寄せて被り直すと、幸せそうに微笑む。

「ちゃんと学校行かないと……」

 俺がもう一度布団を剥がすと、不満そうに頬を膨らませた。

「ほら、顔洗っておいで」

「……連れてって」

 咲弥は両手を広げて俺を見上げた。

「仕方ないなぁ」

 俺は咲弥を正面から抱きかかえると、俺の首に腕を回してしがみついてくる。

 洗面所に着いて咲弥をおろしたが、腕を回したまま俺から離れようとしない。

 中腰のまま咲弥の頭を撫でて、蛇口をお湯が出る方に変えてから水を出す。

「そろそろ離れてくれない?」

「やだ」

「朝ごはん作れないんだけど……」

「それもいや」

「どうすればいいのさ……」

 話しながら、俺はお湯が出ているかを確かめる。すでに蛇口からはお湯が出ており、手が温かい。

「ほら、お湯になったから」

「んー……」

 咲弥は渋々俺から離れると、俺に背を向けて顔を洗い出した。

「じゃあ、俺朝ごはん作ってくるからね」

 俺は咲弥の返事を待たずキッチンへ向かう。

 冷蔵庫から卵を二つ取り出し、昨日洗って水を切っていたフライパンをコンロの上に置いた。

 油を敷いて少し熱する。そこに卵を落として、中火で温めた。

 同時に、昨日の夜食べきれなかったみそ汁も温める。

「今日の朝ごはんはー?」

 つん、と咲弥が俺の背中をつついた。

「目玉焼きと昨日のおみそ汁だよ」

 俺は振り返って咲弥の頭を撫で、今日の献立を答える。

「んー、わかった」

 咲弥は微笑むと、俺から離れて机の近くにちょこんと座った。

 キッチンの方に向き直ると、俺は火を止めて器に目玉焼きを乗せる。

 料理を机に運んで俺は咲弥の隣に腰を下ろした。

「いただきます」

 二人して手を合わせた。咲弥は机に置いてあった醤油を取って、目玉焼きに少しだけかける。そして、俺の目玉焼きにも同じくらい醤油をかけた。

「ありがと」

「ん」

 

 

 朝食を終えて、咲弥は寒そうにしながらも寝間着から着替えた。

「俺二限からだから、あとでね」

「……ずるい」

「頑張って」

 俺は咲弥の頭を撫でると、二人で玄関まで向かう。

「いってらっしゃい」

「……いってきます」

 手を振ると、咲弥は小さく手を振り返して家を出た。

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