閑話、不穏な影・・・
その頃、王都の中央。王城の最奥玉座の間にて・・・
「何と?死病の封印が解かれただと・・・?」
「はっ、つい先程封印の洞窟に賊が侵入しました。如何様に?」
玉座に座る初老の男、アルカディアの国王であるラピス=アルカディアは眼光鋭く問い返す。その問いに答えたのは深くフードを被った魔女、宮廷魔術師のクリスだ。
死病の封印が解かれた。その言葉に、玉座の間に居並ぶ近衛の騎士達が軒並みざわつく。だが、当の国王であるラピス本人は至って冷静だ。冷静に物事を判断し、状況を推察する。
一国の国王たる者、決して取り乱してはならない。それは、ラピス本人の矜持だ。
「その死病の封印を解いた者は何者か?」
「はっ、水晶球の映像を見た所、その賊は黒い外套を纏った白髪の少年かと・・・」
白髪の少年。その言葉に、再び周囲がざわつく。少年が、死病の封印を解いたという。無論、封印された洞窟には幾重もの魔術的な罠が仕掛けられている。それをかいくぐって、少年が突破したと。
ありえない。何かの間違いでは?そんな声が玉座の間に響き渡る。そんな中・・・
「陛下っ!俺にこの場を預けて貰えませんかっ‼」
「ふむ、ターコイズ卿。何か策はあるか?」
声を上げたのは近衛騎士団の一人、ターコイズだ。ターコイズは脳筋で有名だが、しかし同時に義に厚い者として有名でもある。早々に判断を間違える事も無いだろう。これは、ラピスの認識だ。
ターコイズは臣下の礼をすると、そのまま発言した。
「はっ、俺が封印を解いた者を直接見て来ようかと存じます」
「ふむ・・・・・・。ならば、情報を持ち帰る事に専念せよ。無論、無謀な真似は厳禁だ」
「はっ‼」
そう言って、ターコイズは立ち去った。それを、じっと見詰めるクリス。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうした?クリス・・・」
「いえ、何でもありません。陛下」
そういって、クリスは立ち去った。その後ろ姿を、国王は疑わしげに睨んでいた・・・
・・・・・・・・・
「少し、良いですか?ターコイズ卿」
「む?何だ、クリス殿か・・・」
ターコイズに声を掛けたのは、宮廷魔術師のクリスだった。ターコイズは朗らかに応対する。
しかし、当のクリス本人は表情が硬い。何か、思案している雰囲気だ。それを一瞬訝しんだ、その瞬間彼の脳天に激しい火花が散った。ような感覚がした。
クリスの杖がターコイズの頭部を軽く小突いた為だ。軽く小突いた。それだけでこの衝撃。そのあまりの衝撃の強烈さに、思わずターコイズは膝を着いた。見ると、クリスは暗い笑みを浮かべている。
その笑みに、ターコイズはゾッとした。あまりにも闇が深い笑みだった。
「クリス・・・貴様っ・・・・・・」
「少しの間、貴方には人形になって貰いますよ?」
次の瞬間、ターコイズの意識は闇へと沈んでいった。
・・・・・・やべえ奴だ(;゜Д゜)