プロローグ
かれこれ5年は小説やライトノベルを読んでいませんが書きたくなってしまいました。
温かい目でよろしくお願いします。
―――まるで何もなかったのではないか、夢ではないのかと感じさせる程の静けさ。
そして、それを遮るかのようにただ聞こえてくるのはポタポタと滴り落ちる赤い水滴が落ちる音。
あぁ、俺は死ぬんだな。
『案外あっけなく人って死ぬものなんだな』
とでも言ってみたかったが、声にもならない喉から発せられる空気の漏れる音と、感じなくなってきていた痛みが全身を突き抜けるだけ。
人は死ぬときに走馬燈を見るというが全然そんなこともない。
いや、そもそも走馬燈にあらわれるようなことなんて今まで何もなかったじゃないか。
なぁ、なんで俺をここまで育ててきたんだ?
俺はこんなにも早く、ここで、死んでいくっていうのに。そう決まっていたのに。
人間なんてそんなものだ。
一部の成功した俗にいう薔薇色の人生というのを送る奴。
花開く前に死んでいったような奴。
何もできないくせに人を巻き込もうとするだけのクズ。
そして大多数の何でもない平凡な人生を送る奴。
人生なんて最初から全部決まっているんだ。どういう生活を送ろうと行きつく運命は同じ。
意識が朦朧としてきた。
もう何も聞こえてさえこない。
別に怖くなんてないさ。
どうせ俺は今日ここで死ぬ運命だったんだから。