表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/16

四、奇妙な事件


 それからまた、二週間。かぐや姫とおじいさんの歳の差同居生活は、しごく円満につづいていました。毎日、かぐや姫は川へ洗濯に、おじいさんは山へ竹取りに出かけ、それぞれの仕事をしつつ、その合間に魚釣りや相撲を楽しんで、家へと帰るのでした。

 二人の仲は、それはそれは良いもので、二日ほど前の夕方などには、例の野ウサギがおじいさんの画集を燃やそうと書斎に忍び込んだところを連携プレーでひっとらえ、「もうしません」との言質げんちをとってから帰してやったりしたものです。


「まったく、あのバクハツブツ野ウサギのやつ、今度やりおったらウサギ汁にして飲み干してやるわい」

「まあ、ウサギ汁だなんて」

「あやつはウサギ汁で充分じゅうぶんじゃ。お前の手をわずらわして、ステーキやらハンバーグやらにしてもらうには及ばん」

「じいじたら」



 いっぽう、とある町、おじいさんの家から三里ほどの場所に位置する町では、奇妙な事件が頻発ひんぱつしておりました。若者の失踪事件が相次いだのです。



 __今回行方がわからなくなったのは、二十三歳の漁師・浦ノ島うらのしま太郎たろうさんです。浦ノ島さんは先月、山猫にいじめられていた亀を助けたとして、地域生き物環境課によって表彰され、明日、亀の故国である竜宮国りゅうぐうのくにへと出立する予定でした。今回の失踪を受け、現竜宮りゅうぐう城主・保成ほせい燈次郎どんじろうさんは……



「物騒な世の中じゃ。にしても、山猫とやらは、まーたニュースに名前を出されて気の毒じゃのう、あのこととは、まったく別の事件なのにのう」


 おじいさんは、かぐや姫の調理したスッポン煮とエスカルゴ・ド・ブルゴーニュを食しながら、言いました。


「そうじゃ、かぐや姫。今のところ、誘拐かどわかしっとるのは野郎ばっかりらしいがのう、なにがあるかわからんから、お前も気をつけるんじゃぞい」


 おじいさんは心配顔で、この一連の事件を「かどわかし」と決めつけてしまいましたが、実のところ、テレビのニュースを聞くかぎりでは、若者たちの失踪の理由まではわからないのでした。


「って、おんや……、もう部屋へと戻りおったか」


















 かぐや姫は、部屋へと戻ってはおりませんでした。

 おじいさんの家の屋根のうえへあがって、体育座りをして、まあるい月を眺めておりました。


「ぺったんぺったん、ぺったんこ……」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ