三、同居生活
二週間後、花も恥じらう推定年齢七歳だったかぐや姫は、おじいさんの扶養を受けて立派な十四歳へと成長していました。二週間でこれだけの成長をしたのですから、おじいさんもさぞやこの姫君の衣類に貯蓄をはたいたことであろうと思われるかもしれませんが、それは違います。かぐや姫の衣服は、月の都の郊外にあるという伝説の湖の水に浸されて、それを母親が飲み込み、体内の姫君に身につけさせたというもので、これは完全に少女のつややかな肌と一体化してともに成長するような魔力を帯びていたのでした。
「ふむ、これが俗にいう、装備チートというやつかのう」
ところが、どういうわけか靴下にだけはその湖の魔力が浸透しきっていなかったようで、靴下だけはおじいさんが、破けるたびに買い直してあげていたのでした。
かぐや姫は優しいおじいさんを慕い、やがておじいさんのお手伝いをするようになりました。そうです、川へ洗濯へ行くことが日課となったのです。かぐや姫はたいした働き者で、洗濯の合間に釣りをしたり、川から流れてきた特大レモンを持ち帰って、おじいさんのためにレモンスイーツをこしらえたこともありました。お小遣いを貯めているかと思えば、おじいさんのために本屋さんへ出向き、新装版のドミニク・アングルの画集を買ってきたりもしていました。
「なんと良い子じゃ。さすがじゃさすが、バクハツ野ウサギとは雲泥の差じゃ」
大よろこびのおじいさんは、かぐや姫のために、家屋の一部を改装して、かぐや姫専用の部屋を与えることにしました。
「ありがとうございます、おじじさま」
透き通るような声でお礼を言って、かぐや姫はちょこんとお辞儀をします。身の丈五尺六寸へと成長し、おじいさんを下に見下ろす身長になってしまったかぐや姫ではありましたが、その謙虚でけなげな姿勢はあいも変わらず、おじいさんへの敬いの姿勢を忘れることはありませんでした。
ただ、ひとつだけ。思春期ともいうべき年頃の少女には、許せないことがありました。それは、自分の部屋に立ち入られることでした。かぐや姫は毎朝、おじいさんにお願いしました。
「おじじさま、どうかお願いです。わたくしのお部屋には、絶対に立ち入らないでくださいませ。それはわたくしが中へいるときでも、出かけていないときでも同じことです。あのお部屋を見られてしまっては、わたくしは大好きなおじじさまと一緒に暮らすことができなくなります。だから、どうか……」
おじいさんとしては、みめうるわしい姫君のお部屋をのぞきたくて仕方がないのですが、どこぞのじいさまがそれをやって愛しい鶴に逃げられたという話を聞いたことがあったため、思いとどまります。
「そりゃまあ、仕方がないのう。じゃんねんざが、しかしわしは、お前のようなかわゆいおなごとひとつ屋根の下で暮らせるというだけでも、うれしく思っておるぞ」
「おじじさま、そんな過分なお言葉を……」
おじいさんは、姫君の恥じ入るような声を聴き、しぐさを目にして、毎朝意気揚々とよろこび勇んで山へと出かけていくのでした。