13
短いです。
13
そこは白い『闇』の中だった。
アリアが目を覚ますと、そこは白く何もない世界だった。
彼女は起き上がり、自分の姿を見てみると、自分の体が実体を持っているが、痛みなどの感覚がないこと、着ているものはお姫様のような豪奢なドレスから、そこは自分が今いる世界とはまた別の世界だと気づく。
ふとした拍子に、意識を持っていかれそうになる。
「いしき?」
アリアは今、自分が思ったことを、口に出した。
(そうだった。私はセルドア様とアランを手当てしていたら、誰かが襲ってきたんだっけ―――)
この『闇』に捕らわれる前に、どういう状況だったのかを思い出した。
「また、か」
これで命を落とすのは二回目だと理解した。『相原涼音』として、そして『アリア・スフォルツァ』として。前回は、まだまだ楽しみにしていた弓道でのインターハイや憧れていた大学生活、さまざまなことをやり残していた。今回、9歳の時に転生に気づき、悪役としての一生を打開するために楽しみつつも、自らを磨き上げてきたこの4年間。
ほんの4年間色々な人と出会った。異母弟のユリウスに主人公のベアトリーチェ。そして、彼女と相思相愛であるクリスティアン王太子にセリチアのクロード王子。さらに、公爵家の令息であるマクシミリアンにアラン、サポート役のクレメンスとその友人であり、義理の伯父であるセルドア。クレメンスが拾ってきたウィリアムは、今は王宮で見習いとしている。悪役側の妹のリリスと叔母のフレデリカ、そしてミスティア王女。
『ラブデ』内に登場するほぼ全員と出会った。彼女の意識によって大きく変わってきた。
(確かにあの男の言うように、私が破滅を迎えさせた人物もいる)
彼女の人生が彼女自身によって変えられたように、他の人の人生も彼女自身によって変えてしまったと思う。
「でも、それって逆恨み、というんですよ」
もちろん、『彼女』は人でなしではない。痛みや苦しみも知っている。だから、それを理解しようとしていない人に、それを知ってもらいたいのだ。むろん、それが烏滸がましい、ことも。
『私はやり残したことがある。だから、まだ生きたいの!』
彼女は空に向かって叫んでいた。
『4年間じゃ足りない、まだまだやり残したことがある。だから―――』
そう強く念じた時、彼女は再びその空間から、意識を手放した。
そして、次の瞬間。彼女の体は消え、白い『闇』には何も残っていなかった。
「アリア、良かった―――」
彼は目を覚ましたアリアに抱き着いた。
アリア「まだマクシミリアン家の腸詰とチーズを一杯食べていないし、恋愛もしたい」





