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 その後、リリスとマグナム、マチルダは自室へ戻されたが、他の4人はここに残るように言われた。

「少し気が早いけど、アリアを年明けには王宮へ侍女見習いとして奉公させようと思います」

 3人が部屋から出て行った後、エレノアは4人、特にアリアに向けていった。しばらくアリアは何も考えないようにし、部屋で一人きりになった後に考えよう、と思った。

「その時に、リーチェも一緒に王宮へ上がってもらおうと思っているのだけれど、どうかしら?」

 今度は残りの3人に尋ねた。3人はそれぞれ顔を見合わせた後、

「はい。そこまで配慮していただきありがとうございます。ぜひとも、お願いします」

 とセレネ伯爵は言った。エレノアはその言葉に柔らかく微笑んで、

「了承してくださってありがとう」

 と言った。

「リーチェ。アリアは最近色々と学び始めているのだけれど、その中でも、マナーについてはどうやらかなりずば抜けてセンスがいいから、侍女という実践でアリアから学ぶといいわ」

 エレノアはアリアのセンスを誉めて、ベアトリーチェに学ぶように伝えた。

「しかし、彼女はまだ9歳ですよね?」

 ベアトリーチェの母親、レリはアリアの能力に疑問を持っているみたいだった。

「そうね、私も最初は少し疑ったわ。だけれども、最初のお茶の入れ方を見た時、素晴らしいセンスだと思ったわね」

 エレノアはレリの発言に気を悪くするわけでもなく、そう述べた。アリアもまた、自身が前世の記憶持ちであるからこその知識であって、決して今世では学んでいなかった知識なので、絶対に驕ってはいけない、と思っていた。

「そうでしたの」

 レリはエレノアの感情に驚いていた。

「アリアは自分でお茶会に行く服装も選び、私の友人であるマダム・ブラッサムから及第点を一発で得られるほど優れていますわ」

 エレノアはアリアを抱き寄せて言った。

「でしたら、お茶会に行くときにはいつもアリアさん自らの選択なのですか」

 ベアトリーチェもかなり驚いていた。

「そうよ。完璧、という訳ではないけれど、9割以上は正解、と言ったところね」

 伯爵一家のアリアに対する見方が変わっていた。

「大変失礼を承知で申し上げますと、昔、公爵家の2人娘は非常に傲慢な娘としてうわさに聞いていたものですから、にわかには信じられなくて」

 レリは少し控えめながらも、エレノアとアリアに向かって言った。その様子に、エレノアは、

「やはり他人さまから見てそうなのね。私も、最初アリアの性格が変わったとき驚きましたもの」

 アリアの髪を少し整えながら、エレノアはレリに返した。

「私としては、少し子供らしいところがあってもよいのにと思いますけれど、もう子供から大人になりつつ変化しだしていると考えていると、それもそれで、嬉しいものです」

 エレノアはアリア(本人)の目の前でそう惚気た。


「アリア。今度年が明けて、新年最初の夜会(・・)で貴女に今度会ってほしい人がいるの」

 エレノアは4人をそれぞれの部屋へ戻した後、アリアの部屋を訪れていた。

夜会(・・)ですか」

 この国において夜会に出席する、ゲーム内においてもそうだったのだが、それは社交界へのデビュタントを意味する。ここでは、デビュタントの年齢は10歳から13歳となっており、婚約者を見極める重要な催しでもあるのだ。ゲーム内におけるアリアは、デビュタントと同時に王太子の婚約者候補筆頭となり、そこから没落人生が始まるのだ。今年は9歳で、この年末が明けたら10歳になる。


(今のアリアだったら乗り切れるはずだ。)


そう、アリアは考えていた。

「ええ、セリーナとも話し合ったんだけれども、もう十分マナーも学んでいることだし、バイオレット氏もかなりあなたを評価してくださっているみたいだから、今回をデビュタントとの夜会にしようと思うのだけれど、どうかしら?是非にとも、って言われていた人がいてね」

 エレノアは少し心配になった眼をしていた。

「そうですか」

 アリアは誰だろう、と考えたがあまり思いつかなかった。

「嫌ならまた次回にしてもいいのよ」

「いいえ。今年デビュタントさせていただきます」

 アリアは凪のように静かに答えた。


「私はこの家の運命を変えて見せます」

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