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本文に関係のないほのぼの?としたSS(後半)

これ大丈夫だよね?

たぶん大丈夫ですが、こちら側でNGの場合、ご指摘いただけると幸いです。

「どういうことですか」

 すでに新国王とはかなりの年の差があって僕の方が年長者であり、新国王よりもさらに年下であるユリウスに対しても、僕は彼に敬語を使っている。

「彼女は何らかの方法で、コクーン卿だけを殺すように洗脳されている。多分、匂いかなんかじゃないかな、とは思うけれど、よくわからなかった。助けに入れなかった挙句、解除方法が発見できなくて申し訳ない」

 ユリウスは頭を下げた。

「いえ。お気になさらないでください」

 僕は彼に笑った。うまく笑えている自信はなかった。案の定、新国王とユリウスはかなり苦笑いして僕が寝かされている部屋を出た。彼らが出て行った後、僕はどのようなケガの状況になっているか確かめた。


 初めに、指を動かす。うん、大丈夫だ。


 次に、腕を上げ下げしてみる。うん、大丈夫。


 さらに、肩を回す。これも大丈夫。左が少し痛んだのは気のせいかな。


 身体をひねってみる。どうやらこれ以上体を動かせないようだ。左わき腹のあたりがかなり痛い。


 ほとんど、騎士生活は引退しているけれど、これじゃあ現役復帰は無理だね、と僕は思った。未練はないけれど、なんかむなしくなるな。

 僕はとりあえず、起き上がれることを確認し、部屋を出た。出る前に服は部屋に置いてあった清潔なものを着用しているので、たとえ誰かにすれ違っても『寝間着を着て徘徊する不審者』の烙印は押されないだろう。

 そうして、僕は彼女が捕らえられている牢へ向かった。

 彼女はその牢の中の最凶悪犯罪者が入る牢に入れ込まれており、厳重に鎖で括りつけてられていた。僕は僕を傷つけた彼女について、かわいそうだと思った。僕に憧れて、僕が彼女に一目惚れ、ほとんど強引に彼女を連れてきたせいで、僕が振った女性たちの妬みの対象にされ、心を奪われたた彼女を。彼女は、時折殺害衝動によるものなのか、暴れているみたいで、彼女自身による引っかき傷が多かった。

「ごめんね」

 彼女に届くことはない、と思っていたが、僕は謝った。


 僕は襲撃されてから、数週間その修道院にお世話になった。彼女もまた、その修道院の牢にてしばらくの間預かってもらう事となった。僕には空き時間がたくさんあったので、来る日も来る日も意志は通じることはないと知ってながらも彼女に会いに行った。

 ある日は季節の花のことを。ある日は彼女の実家の洋菓子店の事。ある日は新国王の素晴らしいところについて。ある日はその新国王の伴侶について。彼女の返事はなかったにせよ、僕は様々なことを彼女に教え続けた。彼女は最初のころは、僕が来ても暴れているだけのことが多く、聞いているそぶりは見受けられなかったが、僕が語り聞かせ始めてから、一週間ばかり経った頃に彼女は落ち着きだした。正確に言うと、暴れる時間が少なっていた。


 それから数週間後、僕とリリアナは別々に王都に移されることとなった。

「セルドア、お前大丈夫か」

 僕を迎えに来たのはクレメンスだった。彼は新妻のおかげでかなりふっくらとしていて羨ましかった。

「うん。何とかね」

 僕の方が先に出発する。出発する直前、残された彼女の牢がある方向を見て、神に祈った。彼女の呪い(・・)が早くとけるように、と


 王都に戻って数週間、彼女の事だけを考え続けた。彼女がいないと、僕はこの先非常につまらないただの男として生きるのでは、と考え始めていた。




 そして、――――

 新国王に呼ばれた僕は王宮に上がっていた。玉座には国王もその伴侶もいなかった。開かれた扉を見て、僕は驚いた。二つの人影が見え、片方は新王の伴侶であり、もう片方は紛れもなくリリアナだった。

「もう、リリアナさんは洗脳から解き離れていると思います」

 伴侶はそう言った。確かにリリアナは修道院で会った時と比べても、目に生気が戻っているような気がする。伴侶はリリアナを僕の近くまで連れてくると、ではお先に失礼します、と言って、玉座の間から出た。

 残されたのは、僕とリリアナ。

「リリアナ」

 僕は恐る恐る彼女に呼び掛けた。

「はい」

 彼女はしっかりと返事をしてくれた。

「もう、触っても大丈夫かな」

「はい。触っていただけませんか」

 彼女は、おそらく洗脳が解けた時に事のあらましを騎士たちに聞いたのだろう、懇願するような目でこちらを見ている。僕は壊れ物を扱うように、彼女を抱いた。一度(洗脳された状態の)彼女に刺されているものの、あまり気にならなかった。自分の事ながら、あほだとは思うけれど。

「ごめんなさい」

 彼女は泣いていた。

「ごめんなさい。私はセルドア様を傷つけてしまった」

「気にするな」

「でも」

 彼女はまだ何かを言いたそうにしていたが、言葉を紡ぎ出すその唇を僕のそれでふさいだ。これ以上、あ彼女から否定の言葉を聞きたくなかった。

「本当に僕も君も無事に帰ってこれたんだから、それでいいんだ」

 僕は本当に彼女には甘くなってしまう。

「でも、どうしても罰が欲しいのならば、上あげよう」

 僕は意地悪く笑った、あの時と同じように。彼女は少しおびえた顔になりながらも、すでにそれを受け入れる心構えはしているみたいだ。取り乱したりはしなかった。だが、



「君が受ける罰は、俺と結婚することだ」


 僕は、君の全てが好きなんだよ。いつまでも僕の側にいてほしい。僕が君から受けた痛みは、彼女自身がつけたくてつけたわけじゃない。すでに、彼女を誘拐し、洗脳した人物は黒幕、実行犯ともども捕まっている。これからは僕の側に、穏やかに過ごせるはずだ。


 彼女は目を丸くしたが、やはりそれも可愛いと思うのは僕の贔屓目だろう、か。ありがとうございます、と小さくつぶやいたのが聞こえたので、可愛さに耐えられず、すぐにでも屋敷に連れ帰って彼女を味わいたかったが、流石に新国王に挨拶をしなくてはならない、と思ったので、新王を探そうと思ったら、タイミングよく伴侶の方が現れた。伴侶に今日はこれで退出する旨を伝えたら、どうやら国王夫妻は3週間の休暇を僕にくれていたらしい。お優しい方だ。



 それから、リリアナを連れて役所へいき、婚姻届けを出した後、自宅へと連れて帰った。騎士団を辞めた元騎士たちに声をかけて護衛兼専属の使用人にならないかと呼びかけ、数人が立候補してくれ、彼らは執事やら庭師やら、さまざまな仕事をしてくれ、かなり助かった。

 彼女と二人で、お湯を使って身を清めた後、彼女をベッドで散々むさぼった。とても彼女は可愛らしい姿を見せてくれたと思う。


 彼女と微睡の中で話をしている中で分かったことだが、どうやら僕を刺したときに少し意識は戻ったらしい。そして、僕が目覚めた後、さまざまなことを一方的に話しかけられているときに、完全に意識が戻ったらしかったが、それは伝えられなかったらしい。なぜなら、意識が戻ったとなれば、僕が離れていくのではないのかと考えたらしい。

 それを聞いた僕は再び彼女をむさぼった。とてつもなく、彼女がかわいいせいだ。











 この物語の後日談。


 僕は、40前にしてようやく子供を授かった。結婚後数か月での妊娠であった。出産後、彼女はまだ産めます、って言ったけれど、無理しなくて大丈夫だよ、と言っておいた。だけれど、毎晩彼女は誘ってくるので、ついつい僕もそれに乗ってしまう。

 結局、最終的には5人の子供を産んでくれた。大仕事だったのにもかかわらず、彼女は以前よりも生き生きとしていた。そんな彼女を見ながら、なんで僕はこんなに素敵な女性に早く出会わなかったのだろうか、僕は人生の大半を損していたのか、とため息をつきたくなった。


 本当は、君に救われたのは僕だよ。君のおかげで、僕は今こうやって笑っていられる。

 ありがとう、リリアナ。

次回からは本編戻ります。

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