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結局、王妃が来る前に決着はついた。というのか、以前アリアともめごとを起こしたことのある平民出身の接待部の面々が、王宮内における礼儀とは何かを説き出し、少女の反論の余地を全て封じたのだ。
(なかなかやってくれるのよね、この人たちは)
アリアは平民出身である彼女たちに負けた、とかは思わなかった。一方、少女の方は選民意識が高いのか、反論したげな雰囲気であったものの、ここで下手に出て、相手の家からの反発を食らった場合のダメージとかについて、計算できる人物の様で、顔を真っ赤にさせながらも押し黙っていた。
「あら、誰かと思えば、コゼットじゃないの」
王妃はアリアたちがいる部屋に入るなり、そう言った。少女以外は、その言葉に顔を驚きに染めた。
「王妃様のお知り合いなのでしょうか」
この場で、王妃の立場に最も近いベアトリーチェが皆を代表して尋ねた。
「私の年の離れた兄であるマーブリット公爵の娘よ」
マーブリット公爵の娘。王妃の言葉に、アリアやアーニャをはじめとする下級侍女の一部と、上級侍女のほとんどは薄っすらと事情を解った。
「確かに公爵家の令嬢、という事は、アリアと同じ身分の方ですよね」
ベアトリーチェは、身分が同じであるため、伯爵令嬢である自分自身に当たる、という事しか理解していなかった。
「そう。でも、あの馬鹿兄はこうやって娘をよこしてくるあたり、相当頭がわいているのかしら」
普段聞かない低音の持ち主を探れば、絶対君主さながらの冷気を纏っている王妃本人であった。





