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転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね? ~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~  作者: 鶯埜 餡
12才編『攻略対象者2』

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 今回のフェティダ公爵領への視察というのには裏があり、新しいフェティダ公爵であるマクシミリアンがどうやっても王都へ出てこないため、彼を引っ張ってこなくてもいいから、せめて会ってこい、という国王の命令によるものだった。もちろん、国王が本来ならば行って会うべきなのだが、世代のことを考えると、自然と王太子がいくことになるのだ。

(しかしなんで自分までよ)

 アリアにとってみれば、最後の攻略対象者との邂逅となるのだ。もちろん、普通のゲームの中なら、一人の悪役令嬢が攻略者全員に関わり、主人公との恋路を邪魔する、というのが定番の乙女ゲームだ。しかし、『ラブデ』の悪役令嬢は、アリアがクリスティアン王子、ユリウス、ウィリアムの3人の攻略対象者、リリスがクロード王子、アランの2人、ミスティア王女がマクシミリアンという具合に悪役の配置が(一応)分散されている。しかし、ほかの2人(特にリリス)が攻略対象者と遭ったという形跡はないし、今のところ、どの攻略対象者に近い人物と関わりがあるのはアリアだけだ。できれば、会って彼の本質を見極めたい、という思いもあったが、出来るだけ会いたくない、という自分もいた。


 出立日までは時間はなく、すぐにその日はやってきた。先に馬車に荷物を詰め込んでいたアリアは他の接待部の侍女に、自分がいない時に起こり得る問題に対して、ある程度の対処法などを記した紙を後輩の侍女に渡した後、時間ギリギリになって裏口まで走って行った。

「遅くなって申し訳ありません」

 ほかの人たちはすでに到着していて、クリスティアン王子をはじめとした馬組はすでにいつでも出発できるようになっていた。ちなみに、彼の隣には専属の侍女を連れているベアトリーチェの姿もあった。

「遅いではないか」

 そう言ったクリスティアン王子の顔は実に言葉と正反対だった。

「殿下、お姉さまにも本来のお仕事があるのですから、仕方ないでしょう」

 そう言ったのは、ベアトリーチェと同じく居残り組のミスティア王女だった。

「まあな」

 彼は素っ気なく言って、早く出発するぞ、と言った。アリアは護衛の者たちに頭を下げてから馬車に乗り、一行は出発した。

 全行程は5日間の予定だ。フェティダ領は王都から見て南西、普通の馬車で行ったら片道1日、単騎では休憩なしで数時間の場所で、今回は王太子とスフォルツァ公爵令嬢がいるため、休憩と宿泊をそれぞれ1回取り、片道1日半で、領地への滞在と新公爵との会見は2日設けている。


「なあ、アリア姫」

「何でしょう」

 今は王都とフェティダ領の中間地点にあるレヴィディア領での休憩の最中だ。野外に天幕が作られ、特設の茶会会場で二人は休憩をとっていた。

「お前の本音はどうなんだ」

「は?」

 クリスティアン王子の言葉に素でそんな返しをしてしまったが、よくよく考えてみても理解できなかったアリアだった。

「お前は俺とベアトリーチェの婚約の後押しをしたり、クロード王子を引き取りに行ったりとかなり汚い役割を背負っているし、重大な事件にわざと巻き込まれているのか、それとも誰かにはめられているのかどちらなんだ。そして、お前は今の状態でいいのか。俺としては、そんな状況からお前を救いたい」

 王子の具体的な質問にアリアは少し押し黙った。

「そうですね。まず、巻き込まれているのか、という部分についてですが、少なくともわざと(・・・)ではないでしょう。私としてはある意味巻き込まれ属性、と言ったところでしょうかね」

 アリアは、

(というか、巻き込まれているのって半分お前の父親のせいなんですけれどね)

という言葉を、ぐっと飲みこんで、当たり障りのない回答をしておいた。なんのためにかはわからないものの、国王が中心となってアリアをここ最近の王宮の中心に引っ張っているのは間違いない。

「そうか」

 クリスティアン王子はその言葉に対して、何の疑いもなく、そう言った。

「あと、今のままでよいのか、とおっしゃいましたが、私は今現在自分がどうなるかはわかっていませんが、昔のままでいるよりはよかったのではないかと思います」

「ああ。昔のお前は酷かったな」

 王子は昔を懐かしむように言った。

「そういえば、前にも疑問に思ったのですが、昔に殿下とお会いしたことはあるのでしょうか」

 アリアはふと疑問に思ったことを聞いた。

「ある」

 王子はアリアの髪を触った。アリアは、その髪の触り方に少し既視感を覚えたが、いつどこで、というところまでは思い出せていなかった。

「俺らが2歳の時に王宮で会った。その時からしばらくの間、お前はかなり傲慢だった。あの女が出しゃばってきたときにお前と縁を切った。似たような女を2人相手にしたくなかったからな」

 アリアはここでも自分の過去の行いによって、傷つけた人間がいるのだと、改めて後悔していた。

「そんな顔をするな」

 アリアはすごいショックを受けていたのだろう、王子が頭を撫でた。

「俺もお前に再会した時言った言葉を反省している。確かに、小さい俺、成人していなかったときに、大人の話に口を出すのは難しいことなのだと。しかし、お前は俺より1年早く成人している、という事で、そう言った込み入った話に首を突っ込まざるを得なかったんだな」

 そう言った王子の口調は優しかった。

(ちょっと、今ここでそれは反則でしょう)

 アリアは、貴方婚約者いるんでしょう、とか、気のない女にそれやっちゃダメ、とかいろいろ突っ込みたかったが、それをすると二度と王子と会話できなくなるのではないか、と思うと怖くて突き放すことが出来なかった。が、それは休憩時間の終わりを告げる騎士によって唐突に終わった。

 アリアは少しふらつきながら、立ち上がり再び馬車の中に入り、一行は進み始めた。

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