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転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね? ~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~  作者: 鶯埜 餡
11才編『フレデリカ3』『攻略対象者1』

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 結局、侍女たちの顔合わせ事件以降は、身分問わず接待部のほかの侍女たちと仲良くなり、互いにおすすめのお菓子持ち寄りでのミニ茶会も時々開くようになり、一致団結するようになったことで、春の茶会も無事に乗り切ることが出来た。


 春の茶会が終わった後、全接待部の面々は国王直々に執務室に召集された。この部屋には、国王を除けば、アリアたち接待部と二人の書記官、三人の官服を着た青年が経っていた。

「其方等に来てもらったのは、近年不穏な噂しか聞かないセリチアの駐在大使が交代することとなり、それについての対応をお願いしたいのだ」

 国王から聞いたのは、以前王妃が軽く触れたことのある話だった。その発言に対して最初に口を開いたのは、接待部の侍女長頭であった。

「今までの慣例からすると、新旧大使を挟んで晩餐会、という形になりますでしょうか」

「うむ。そのことなんだが、新しい大使についてあちらから『何もしなくて良い』と言っているんだよね」

 国王の言葉に一度唖然となった。

「それはどういった理由で――」

 アーニャはその疑問に対して皆を代表して尋ねた。国王は、一度そうだな、と呟いたが、アリアを見て、

「スフォルツァ令嬢、このセリチアからの要望に対して、君は何か思うところはあるかな」

 と尋ねた。アリアははっきりとした回答は出なく、おぼろげな答えになってしまったが、

「おそらくは我が国とセリチア王室との外交上の、ではなく血縁的な関係、ではありませんでしょうか」

 と、答えたのに対して、

「それとは?」

 と、国王は再び問うた。

「間違っていたら、失礼を承知で申し上げますと、あちらの王太子殿下の祖先はこのリーゼベルツの血が入っていますものの、その弟君であるクロード殿下は生粋の(・・・)セリチア人です。そのため、王太子殿下とその一派は、弟君や弟君を担ぎ出そうとしている貴族たちを疎まれていると聞いております。恐らく今回の新しい外交官というのは、その弟君若しくは、彼の一派に当たる人物ではないのでしょうか」

 今現在起きているセリチアの不穏な動きというものは、セリチアの王家の内紛によるもので、異母兄弟とその実家(バックグランド)が根本的なものだった。恐らくの話だが、異母兄である王太子は異母弟であるクロードもしくはクロード派の有力貴族を追い出そうしているのだろう、と考えた。アリアとしてはできれば後者であってほしい、と願っていた。アリアはその願いを込めて国王の問いに答えた。ほかの侍女や、国王に指名されて慌てた様子のないアリアに官吏たちは驚き、目を見張った。国王はアリアの答えに満足げに、

「やはり、素晴らしい解答だな」

 とうなずき、

「その通り。新しく来るのはフィリップ王太子の異母弟、クロード王子だ」

 と、告げた。

「クロード王子殿下ですか」

 アリアは国王の言葉に茫然自失となりながらも、理性を保つために、その名前を呟いた。

「ああ。其方とは面識はあったか」

「いいえ。お初にお目にかかるはずです」

 国王の言葉に、アリアは少し上の空で答えた。そうか、と答えた国王に、侍女頭は、

「あの、そうは言っても、一応、一国の王族の方でございます上に、我が国とセリチアの国交に関わってくる大使という重要なお方です。さすがに晩餐会を開かない、というのはいかがなものかと」

 と控えめだったが、きちんと反論した。その態度にアリアはすごい人だな、と感心した。

「ああ、確かにな――だが、あまり仰々しいものにすると、あちらとの関係にひびが入りかねんしな」

 国王も侍女頭の言葉に、確かに、と頷きつつも対応策に苦慮しているようだった。

「でしたら、私的な会食、という形はどうでしょうか」

 そんな国王にそう言ったのは、今まで黙っていたアーニャだった。

「私的な会食ですか、アーニャさん?」

 侍女頭はどういう意味だ、とアーニャに質問した。それに対して国王は、

「確かに、その手があったな」

 と、納得し、目を輝かせていた。

「マルゴ、国内の貴族との私的な会食の場合は其方たちに頼んでいないから知らないのも当然だ。バルティア公爵令嬢、確かに其方なら知っていてもおかしくはないはずだな」

 侍女頭の質問にも尤もとしながらも、アーニャに対して礼を言った国王だった。

 ちなみに、対国王に限らず、『晩餐会』と名前が就く場合、形式・格式を重んじ、招待状を送られた貴族(特に公爵家)は出席しなければならない。その出席した貴族によって、社交界のみならず国外へ伝わる場合もある。しかし、『私的な会食』と名前を変更するだけで、そもそも参加できる人間が限られてくる。そのため、他へ伝わる可能性が低いのだ。

「なるほど、それでいこう」

 国王と共に文官たちも少し喜びの表情をしていた。

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