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今回は少し短めです。
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そして、アリアのデビュタントから一年、王太子とベアトリーチェのデビュタントの夜会がやってきた。
アリアは王太子のパートナーがあるため一足早く王宮に上がって王族に挨拶しなければならないのと、ベアトリーチェは自分自身の着付けがあるため、今回はベアトリーチェではなく、古くから侍女をしてくれているマリア=アンネだった。しばらくは、ベアトリーチェに自らの仕事を譲っていたが、昔通りに彼女はかなり慣れたように彼女の衣装を決め、髪もそれに合わせて結った。
「さすが、綺麗ですわ。お嬢様」
マリア=アンネは久しぶりの大仕事が、王族のパートナーを務める夜会のための準備でとても喜んでおり、その大仕事が完成して、ほっとしているのがアリアにも伝わってきた。
「ありがとう、マリア=アンネ」
アリアは仕上がりをチェックすると、最後の仕上げに、と事前に王太子から送られていたアメジストの耳飾りをつけ、おそらく同じアメジスト原石からできているであろう首飾りも身に纏った。
「では、行ってきます」
アリアは他の家族や、ベアトリーチェよりも先に王宮へ上がるため馬車に乗った。
馬車の中では、久しぶりの王宮なので、夜会の前にミスティア王女殿下にも会おう、と思い、彼女と話す話題を考えていたがあまりいいものが思いつかなかったため、ありきたりだが、最近市井で流行っている焼き菓子について伝えてみるのもいいのではないかと思った。
ほどなく王宮に着き、先日通った通路を使い、王族の居住区域についた。まず、今日の夜会の主催者である国王夫妻に挨拶をしに行くと、すでに王太子であるクリスティアン、年が二つ離れている弟のダリウス王子、母違いの妹ミスティアが部屋にいた。まさか、このメンバーがそろっているとは思っていなくて、アリアはすぐさま回れ右して、スフォルツァ家に戻りたくなったが、勇気を振り絞って挨拶をした。
「国王様、王妃様。此度は王太子殿下のパートナーを務めさせていただく話をいただけましたこと、とても光栄に存じます。王太子殿下の名、また建国より続きます我が家の名に恥じぬよう務めさせていただきます」
アリアは事前に教えられてはいたものの、いざ口上を述べようと思うと、かなり緊張してそこに存在している、という気持ちがわいてこなかった。これは自分が都合のいいように見ている夢なのではないかとも思っていたが、何とか、つっかえずに言えた、と思った瞬間、自分の足を(スカートの中でだが)踏んづけてしまった。その痛みに、これは現実であるんだ、と引き戻されたが、引き戻されたからと言って余計に気を引きしねばならないのとは別の話だった。





