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転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね? ~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~  作者: 鶯埜 餡
番外編

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196/198

30万ユニーク御礼SS《前》

ここが童話の世界だったらというifもの、第二弾『眠り姫』です。

配役は、最終更新時で発表します。

 アリア・スフォルツァはこれまでに何度も不思議体験をしている。




 一回目の不思議体験は八年前。『相原涼音』としてではなく、『アリア・スフォルツァ』として生まれ変わった。それからすぐに、当時の王太子との婚約、そして婚約破棄を皮切りに、様々な人との交流から、今の地位を得た。




 二回目は、四年前。

 ある騒動後、目覚めたら、今回と同じく平行世界のようなところにいた。その時は、灰かぶり(シンデレラ)の世界だった。そこでアリアは『王子』という役割をあてがわれ、シンデレラはアラン、魔法使いはウィリアムがあてがわれていた。




 三回目の不思議体験。

 ここまでくると、どうやらアリアは相当、不思議体験に愛されているようにしか感じられなかった。





「なんで、またこんな姿に」

 そう彼女は呟いたが、誰も答えてくれる人はいなかった。


 髪や瞳の色など見た目は変わってないが、前回とは異なり、外見上の年齢となぜか自分の趣味ではないドレスを身に纏っていた。


 誰かの嫌がらせなのかと思った。


 ちょうどその時、今いる部屋の外から声がかかった。

『お嬢様、もう時間ですよぉ』

 聞こえた声は彼女にとっては聞き覚えがあったが、少し高く感じられた。入って、と言うと、はぁい、と言ってその人物が入ってきた。


「うわぁ。お嬢様は今日も素敵ですねぇ!」


 彼女――――小柄な赤髪の少女はニッコリと笑いながらいう。


 はては、このドレスは侍女(アーニャ)の趣味だったのか。

 とはいえども、現実世界のアーニャ・バルティアは、接待部の中でもかなり品が良いものを選ぶことで知られている。もし、彼女が意思を持っているのだとしたら、こんな悪趣味なドレスを選ぶことはないだろう。

 前回の転移の時に『意地悪な継母』と『意地悪な義兄』という役割を演じたプリセラ妃とクロードといったような役どころであり、いわゆる物語のバグというものか。

 そんなアリアの考察には気付いてないのか、アーニャはアリアに近づいた。


「ええ、ありがとう。アーニャ」

 アリアは今、それらを考えないことにした。先入観は後悔しか生まないことはすでに何度も経験している。

 アーニャに微笑むと、彼女について部屋を出た。



 今度はどこの物語かしら。

 アーニャに先導されながら、建物の中を歩きつつ、アリアは考えた。

 意思があったとしても、なかったとしても、自分の知っている人物が侍女という身近なところに配役されているという事は、それなりに重要な役どころのはずだと、感じた。


「やっぱりお嬢様って精霊様にとっても愛されているのですね」


 突然、前を歩いているアーニャがそう言った。今の自分たちの立場が分からない以上、アリアはあら、そうなの? とだけ返した。

「そりゃそうですよ。王族以外はもちろん契約できませんし、陛下や長男の王太子殿下でさえ、成人の時に一つしか契約できなかったのに、長女であるお嬢様は生まれた瞬間に七つも契約できたんですよね?」


 彼女の言葉にアリアは立ち止まった。


「どういうこと?」

「お嬢様の事ですよ? 一番、お嬢様がご存知では?」

 無邪気なアーニャの説明にアリアは、ため息つきたくなった。だが、ええ、そうだったわね、と話を合わせておいた。

 まあ、そうだろう。高熱でも出してない限り、()の記憶があやふやになる事はあり得てはならないのだ。それは八年前に嫌というほど経験したので、今回はうっかりそれを出さずに済んだ。



「お待たせ致しました」

 大広間に案内されたアリアは、入ると同時に頭を下げてそう言った。


「うむ」

 玉座に座っている男性――どうやら、この世界での国王であり、アリアを呼びつけた本人、そして、『アリア』の父親――は、鷹揚にそう言って、早くこちらに来なさい、と命令した。

 命令に従ってアリアが近づくと、今日も似合っている、と呟くのが聞こえた。


 え。まさか、ファッションセンスが無いのは父親譲りですか。


 心の中だけで愕然とした。

 よくよく見渡してみると、他の人のファッションは問題ない。どちらと言えば、騎士たちの服も貴族の服もセリチアに近い印象で、ほとんど元の世界と同じだ。

 そして、今、この場で国王の身に着けているものも悪くない。


 しかし、彼の言葉にすっと目を逸らす臣下たち。


 なるほどねぇと理解してしまった。今はなんとかしてセンスがいいものを身に着けているけれど、私服のセンスがからきし、ということか。


「九歳になったお前に命令だ」

 父王から先ほどの和やかな雰囲気は消え、王位につくものとしての威厳を漂わせた。

 アリアはごくりと、息をのんだ。



「お前には七つの精霊の祝福がある。それのひとつかふたつ、先月、生まれたばかりの妹に分け与えてほしい」



 国王のいきなりの言葉に、現在、この王宮の中ではどういった陰謀劇が繰り広げられているのかが気になった。


「もちろん、精霊の祝福の解除はお前ひとりの力でどうにでもなるものではない。精霊を説得するのもお前への命令の一つだ」


 その身勝手さに、アリアはつい、誰かを思い出してしまった。

 だが、ここで下手に意見を言うべきではないと経験則で分かっているので、押し黙った。

「期限は明後日の誕生祭までだ。頼むぞ」

 そう言うなり、国王は退出した。




「何なんですかぁ、あの陛下は」


 臣下たちは国王の言葉にとうとう来たか、という眼差しをアリアに向けた。しかし、今の立場をまるっきり理解していなかったアリアは何故、こんな状況に陥ったのか理解できなかったが、隅で聞いていたらしいアーニャが放った言葉で否応にも理解させられた。


「妹姫様は今の妃殿下の一人目(・・・)のお子さんで、お生まれになった時に祝福を受けられなかったといえども、あまりにひどいですねぇ」


 彼女の言葉にアリアは納得した。


 姉姫(継子)には七つも祝福を受けられて、(実子)には祝福を一つも受けられなかったという。

 そりゃ、母親からしてみれば面白くないから、血のつながっていないのに、たくさんの祝福を受けられた王女からぶんどってやりたくもなるわな。



 だが、奪われる側の気持ちとかは関係ないのか。

 まぁ、関係ないわな。

 関係ないからこそ、ああやって命令をするんだからね。


 アリアはそっとため息をついた。




 嫌であっても、命令されたことしなければならない。精霊を呼んでみることにした。

 どうやら、宙に複雑な文様を指で描くだけのその呼び出しは自然とできる事から、体ごとこちらの世界に来た訳ではなく、この体に精神が入り込んだ、という事なのだろう。


 パラパラと光の粒が湧き上がり、ヒトの形を作り上げた。どうやら、それが精霊様らしい。


 その形作られた精霊(・・)たちの姿を見て、今度こそ、実際に大きなため息をついてしまった。


「いやぁ、お嬢はんがいきなり呼び出すとは思いませんでしたわ」

「全くだ。この俺をこんな場所に来るとは思わなかった」


 何故か、スルグランのトップ二人がいた。しかも、先程のアーニャとは違って、アリアを『アリア.スフォルツァ』として認識している。


「ねぇ、私に協力して欲しいんだけど」


 アリアは周囲から聞こえている可能性を考え、あえて敬語を使わなかった。彼女の口調にメッサーラの方は一瞬、ムッとした顔をしたが、ヨセフはすぐに気付いたのか、なるほどねぇと彼女の口調に納得したようだった。

 そんな二人に構わず、国王から言われた事をある程度、婉曲に言ったが――――


「なるほどねぇ。女の嫉妬って怖いねぇ」

「ふん。そんな女など、一国の主とその妻に相応しくない。物理的に抹殺する事は出来んのか」


 すぐにバレた。

 うん、分かってたよ。この二人なら一を聞いて十を理解できるってね。

 だから、スルグランという国をこの二人だけ、そして一時はメッサーラだけで統治できるのだ。

 アリアはすでに諦めの領域だった。この二人を理解するのは到底、自分にはできないと理解していた。

 その一方で、あの事件以降はスルグランに借りを作りっぱなしだが、それを二人とも持ち出さないところは彼ららしい。

 それにありがたく便乗させてもらって、この問題にどう対処するか、話し合った。


 話し合いの最中に分かったこととして、メッサーラが勇気の精霊、ヨセフが知恵の精霊だそうで、どちらも彼らにぴったりな配役だ。アリアは二人の行動力に賭けてみることにした。



 話し合い後――――


「じゃあ、明後日はよろしくね」


 アリアは役割を全うするために、動き出すことにした。


「ほな、あとはお嬢はんの力にかかってますからね?」

「――――――勝手にしろ」



「ええ、もちろん。協力、ありがとう」

 アリアは素直にお礼を言った。



 メッサーラの方は乗り気ではなかったが、そうだろう。二人とも妹への祝福として分け与えることになったのだ。ヨセフは軍師らしく楽しんでいるようで、メッサーラの方は不服ながらも協力してくれるようだ。

 アリアは帰ったら二人に何かお礼を出さねばと真剣に考えた。



 その日の夕方、アリアは全員で夕食を食べるのかと思ったが、父親は大臣たちと一緒に取ると言い、継母も部屋で取るらしく、アリアは一人で夕食を食べた。


 翌日も、朝から部屋に食事が運ばれ、一人で食事せよ、という両親からの意思が読み取れた。

 こうなったら、徹底的に一人でいようと考え、一切、部屋から出ることをせず、二人を呼び出し、この国について教えてもらった。

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