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転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね? ~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~  作者: 鶯埜 餡
番外編

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夏祭り……に行きたい!

※遥彼方様主催『夏祭り企画』に参加部分です。

「夏祭りねぇ――――」


 夏の始まり。狩猟会の企画の打ち合わせをしてきたというアランにあることを言われたアリアは、持っていたカップを静かに下ろした。


 王妃になって一年と数か月。

 度重なるクーデタと内乱、元王太子の毒殺未遂事件を経て、ようやく国内外の情勢が落ち着きはじめたリーゼベルツは平和だった。


 そんな中、アランの口からこの話題が出たアリアは、行きたいわね、とぼやく。


「でも、さすがに二人が許してくれるわけないもんね」

 アリアはそう言いながらもかつて住んでいた国(日本)を思い出していた。


 綿あめに射的、りんご飴。金魚すくいにお面屋さん、そして夜空を彩る花火。どれも夏の風物詩だ。

 この国でも、似たような行事はあるが、どちらかというと庶民の遊びごとだ。


 まだ、彼女が公爵令嬢だったころに、一度だけクリスティアンとクロードのお忍びに付き合って王都の夏祭りに参加したことがある。


 だが、もうアリアは王妃だ。

 しかも、先日の冬のある祭りに参加した後、『これ以上、勝手に城下街に出ない』という約束を国王夫妻ともども、互いの最側近にさせられたので、好き勝手に出て行くことは叶わない。



「だったら、こうすればいいんじゃないのか?」

 そう提案するのは現在、アランの侍従長でもあり、セレネ伯爵としても活躍するクリスティアンだった。二人の話を部屋の外から聞いていたらしく、二人には王宮にとどまってほしいものの、主夫妻の願いをかなえるために頭をフル回転させた結果だそうだ。

「ええ、それでも面白いのではありませんか?」

 彼に同意するのは彼の妻であり、アリアの侍女長であるベアトリーチェだった。彼女は夫の立てた内容にとても目を輝かせていた。


「確かにそうね」

 アリアは短時間で考えたその提案に頷いた。隣ではアランが深く考え込んでいる。

「どうしたの?」

「いや。計画自体には問題ない。むしろ、あなたたちの負担が、とは思うのだが」

 何か問題でもあるのかと思ったが、そうではないらしい。


「ただ」


 アランが続けた言葉に、その場にいた三人とも首を傾げる。



「発案者があなたたちだということに悔しさを感じた」



(あぁ。なるほどねぇ)

 彼の言葉に苦笑いするアリア。確かにその気持ちはよく分かった。

「どちらにしろ、その提案は悔しいが、納得できるものだ。すぐさま手配してくれ」

 少し拗ねた彼の命令に、苦笑いしながらも部屋を出て行く二人。


「アリア」

 静かに紅茶を飲んでいたアリアにアランが声を掛けた。

「なぁに?」


「今度はしっかりと僕だけを見てくれるよね?」


「へ?」


 彼が訊ねた理由がさっぱり分からなかった。だが、その答えはすぐに明かされた。

「昔。クロード閣下がこっちに来た時に、夏祭りあっただろ?」


 彼が話し始めたことが一瞬、ピンと来なかった。だが、その時まで遡って思い出すと、なんとなく思い出した。


「そん時、俺とセルドアさんが四人の警護についた。もちろん、あの時は互いに転生者だって知らなかったし、そもそもあまり面識がなかったから、君に『一人の男として』アラン・バルティアとして見てもらえているとは思ってない。


 だけども、今は違うよね?


 だから、今度は『一人の男として』アラン・バルティアを見てほしい」


 その言葉にアリアは目を瞬かせた。

 彼は覚えていたのだ。


 そう。アリアがクロードにエスコートされて、城下街を歩いたことを。

 その時、彼は一人の騎士でしかなかった。

 だが、今は違う。


 彼女は彼の、いや、彼は彼女の隣に立てるただ一人の人間だ。

「ええ、もちろんよ」

 彼女はウィンクした。


「『私はあなたの傍にずっといます。私はただのアリアですから』」


 最近では、あまり言わなくなったあのゲームのセリフを使った。自分が最も好きな攻略対象のハッピーエンド。そのほのぼのとしたスチルは今でも忘れない。

 くすっと笑う声が聞こえると同時に、彼に抱きしめられた。


「『それは当然だ。僕が君を守るために必要なことだろ?』」


 彼もそれに対応する台詞を言ってくれた。


 彼は『彼』ではない。だが、二人だけに分かるフレーズは、『二人』であることを証明するためのアイテムだった。


 そして、互いに微笑んだ。




 一か月後。

 王宮内で舞踏会とも違う、新しい祭りが開かれた。

 国王夫妻が選んだという王都で流行りの菓子や料理の店が、王宮内で振舞われた。

 普段、お金を触らない貴族も今日は、流行りに乗っかるべく自らお金を握りしめて、庶民の味を堪能した。


「大成功ね」

「ああ。あの二人に振り回されることが多いが、今回は振り回されてよかったな」

 国王夫妻のはしゃぎように、侍従長夫妻も満足していた。

あの二人にかかったら、きっとこんな感じでしょう。わりとノリで仕上げました。

※作中で出てきた一回目の夏祭りについては51部分、冬の祭典については『Happy Sweets Festivals』を参照ください。

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