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転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね? ~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~  作者: 鶯埜 餡
番外編

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記念祭騒動

クリスマス記念SS

 アランがディートリヒ王の後を継いでから五年後の暮れ――――

 レゼニア教を信奉する国では、恒例行事である宗教改革記念祭が執り行われ、その前後には各地で連日マーケットが開かれる。リーゼベルツも例外ではなく、各地域において大小様々なマーケットが開かれる予定となっており、その中でも特に王都で開かれるマーケットは国内外から多くの観光客が訪れるほどの名物となる。


 王宮内、王妃の私室――――――

「ねえ、今更思ったんだけれど」

 この部屋の主である茶髪の少女―――――既に一人の王子を産んでおり、もうすぐ二人目も生まれる予定の既婚女性――――は、目の前の夫に向かって呟いた。なんだ?と赤毛の男は彼女に尋ねた。女性何かに気を遣うかのように、ここには誰もいないことを確認してから、再び夫に向き合って言う。

「この世界の祝祭日って、多分日本や世界の祝日や祭りを参考にしているわよね?」

 女性――――アリアは、そう赤毛の男――――アランに尋ねた。二人とも転生者であるので、いきなりそう言われたところで、アランがこいつ頭おかしいんじゃねぇのと思う事はない。

「確かに言われてみればそうだな」

 アランも頷く。今までは公爵家の跡取りとして、そして次期国王として様々なことはやってきたが、よくよく考えてみればアリアの言うとおりだった。

「レゼニア教はなんとなくキリスト教と合致する部分もある。祝日はともかく、蓮祭りはあちらで言う感謝祭もしくは花祭りと言ったところだろうか」

 アランは以前、隣国で開かれた蓮祭りに参加して、その際の雰囲気をもとに祭りの名前を例えた。アリアは王妃となる前にも参加したことがあり、アランの喩えに同意した

「ええ。お正月やお盆、そしてクリスマスも王宮夜会や慰霊祭、宗教改革記念日として存在するわね」

 二人は次々と事例を出していく。さすがにそのままの名前のものはない。しかし、なんとなく雰囲気が似ている祭りはいくらでもある。

「天皇誕生日や憲法記念日って言うのもないけれど、なんとなく似たような祝日は存在するのよね」

「そうだな。製作者(・・・)も変なところで気を配ったんだな」

 すでに『ラブデ』の世界(ルート)を抜け出しており、そもそもゲーム内ではそんな国家レベルのイベントはなかったように見受けられたものの、どうやら『仕様』とかというもので、そういった部分は補われているらしい。アランのため息に、アリアも頷いた。二人はこんな目に遭うつもりはなく、今までは祝祭日が元の世界と似ていることに全く気に留めなかったのだ。

「アリア」

 アランはふと、ある事に気づき、アリアに確かめたくなった。

「そういえば、アリアってマーケットに参加したことがあるの?」

 予想していなかった質問だったからか、アリアは一瞬、瞬きして、こちらに来てからはないわ、と答えた。その答えにアランは少しショックを受けた。

 たぶん、この国の貴族であっても子供のころに必ず一度は参加する、と聞いたことがあったからだ。実際アランも姉と共に公爵領で開かれているマーケットに子供のころは参加したことがある。一線を置いたようなアリアの言葉に、違和感を持っていたのだ。そう彼女に言うと、

「そうね。確かに私も聞いたことはあったわ。でも、実際はそれどころじゃなかったし、何より私自身興味を持たなかった」

 と彼女は笑いながら言う。過去(・・)のアリアの状況を考えると仕方のないことだと思いながらも、なんだか残念な気がしてならなかった。

「それに、結婚して少し経ったばかりだったら、冷やかしでお忍び旅行なんていうのも良かったのかもしれないけれど、今はこの状態よ。子供たちも置いていくわけにはいかないし」

 アリアはあっけらかんと言った。しかし、アランはそれが虚勢だという事に気づいた。彼女は何ともないように話してはいるものの、その笑みに少し陰りがあり、その話をしてからはアリアの顔は優れず、アランに対しての言葉も上の空だった。



 翌日、アランは執務室で頭を悩ませていた。今日は重大な事案はなく、侍従たちも外に控えている。

「失礼しますよ、陛下」

 普段は侍従や宰相が先に連絡してくるのだが、珍しく誰も先触れとして来ずに客人が訪れた。彼は妻に似た顔立ちの青年――――今では内務相を務めるユリウス・スフォルツァ公爵だった。

「何ですか、騎士団長殿」

 実はこの義弟に対して苦手意識を持っているのか、アランが今でも敬語で呼ぶ側近の一人だ。苦笑いしながら、この訪問を歓迎すると、

「義姉上に、いえ、王妃殿下に何かありましたか?」

 と、今でもわざと妻への敬称を間違えて呼ぶ彼に昨日からの憂を見破られた。

「ええ、あったというか、気になる話を聞きましてね」

 そう言って、昨日の会話を一部ぼやかしながら話した。すると、ユリウスも苦笑いしながら肯定する。

「まあ、僕と義姉上が一緒に過ごした記念祭はほとんどないのですが、一緒に過ごしたときは、確かにどこにも出かけていなかったと思いますよ」


 それを聞いたアランはふとある事を思いつき、外にいる侍従に宰相をはじめとした重鎮たち――――正確に言うならば、妻のことを知っている者たちを呼び寄せ、思いついたことについて話してみた。すると、アランの側近の中でも最年長である軍務相は苦笑いしながらも、一度、騎士団に掛け合ってみましょう、と言ってくれ、内務相も軍務相も納得してくれた。アランの個人的(・・・)な秘書もその妻である王妃の侍女長も喜んで手伝うと言ってくれた。

 『計画』はアリアの知らないところで動き出しており、ある時は真っ昼間の休憩時間に、またある時は真夜中にその計画の準備は行われていた。そのため、勤務中に誰も動くことはせず、事情を知らないアリアや侍女長以外の奥勤めの女性たちは『関係者以外立ち入り禁止』の札がかかっている部屋に興味が注がれたが、王宮の主でもある国王が何も言わなかったので、特別気にすることはしなかった。




 計画はうまくいき、記念祭の当日になった。その日の昼間は、レゼニア教国としての催事もあるので国王夫妻は公式行事に出席しており、国王の共犯者たちも同じように眠気と戦いながら、公式行事に参加した。



 そして、夜――――――

 いつもならば、王は寝間着に変えて奥宮を訪ねる時間帯であったが、今日は違った。アリアも事前にそのままの服装でいて欲しい、と言われていたため、着替えることはせず、行事に出席した姿のままいた。

「アリア」

 王は、出産間近のためかうつらうつらとしていた彼女に声をかけた。彼の声に反応したアリアは慌てて起き上がろうとしていたが、彼は制した。

「体調は大丈夫か」

 本来ならば彼女にあるものを見せたかったが、彼女の体調次第ではあきらめざるを得ないと思ったが、アリアは首を横に振った。

「ジェフロワの時と同じよ。もうすぐ子供が生まれるから、そのせいでしょうね。もう少しだけならば起きていられるわ」

 彼女の言葉に、少し安心して侍女長に彼女のガウンを持ってこさせた。侍女長は待っていましたとばかりにそれを差し出し、彼女に着せた。

「どこに行くの?」

 アリアはアランに尋ねたが、それはお楽しみ、と悪戯っぽく言われた。一体どういうことなのだろうか、と侍女長にも目で尋ねたが、彼女もそれはお楽しみです、と首を横に振っただけであった。

 侍女長はその場で二人を見送り、アリアはアランに連れられて廊下を歩いていた。

「珍しいわね」

 アリアはアランの体に身を寄せながらそう言った。

「何が?」

「あなたが隠し事をしているなんて」

 本当に何のことかわからなかったアランはアリアの言葉に、驚いた。

「あなた方が何かをしていたことはとっくの昔に、気づいていたわ。でも、あなたがそれをすぐに喋らないのは、何かの理由があって、いつかは話してくれるだろう、と思っていたから、何も言えなかったわ」

 アリアの告白に彼はすごくばつの悪い思いをした。

「すまない」

 彼は立ち止まり、謝った。しかし、アリアはまったく気にしていなかったみたいで、いいえ、と答える。


 再び歩き出し、しばらくして例の『関係者以外立ち入り禁止』と書かれていた部屋に入っていった。

 その中を見たアリアは驚きすぎて反応が遅くなってしまった。

「――――――――何よ、これ」

 その部屋の中央には一本の大きな針葉樹。そして、その根元にはいくつかのプレゼントの類。まるで――――――

「クリスマスツリーみたいね」

 アリアの言葉に、アランは満足した。

「ああ。もみの木はなかったけれど、気に入ってもらえたかな」

「もちろんよ」

 そう答えると、彼女は本当に驚いたのか、その場にへたり込んでしまった。アランはアリアを抱えて、彼女のために用意していた椅子に座わらせた。

「ならよかった」

 そう言って、彼はアリアの唇にキスを落とした。

「今年はこれで終わってしまったが、もし可能だったら、いや、絶対に来年はマーケットを見に行こう」

 アランはアリアの右手の小指を自身のそれに絡めた。

「本当に?」

 アリアは嬉しくて、アランに抱きついた。やはり、彼女は心の中では見たかったのだろう、とアランは彼女の本心を知ることが出来て良かったと思った。

「ああ」

 アランもアリアに抱き返し、絶対に破れない誓いだと覚悟を決めた。


「あ、痛っ――――――」

 しばらく抱きしめていたら、急にアリアが痛みを訴えた。きつく抱きしめ過ぎたのかと思ったアランはすぐにアリアを離して見たら、彼女はお腹を抱えてうずくまっている。

「アリア――――」

 一瞬の躊躇があったものの、彼女に声をかけると、アリアは痛みに耐えながら微笑む。

「た、ぶん、もうすぐよ――――」

 彼女の言葉の意味に気づいたアランは彼女をお姫様抱っこし、自室へ戻った。侍女長たちはその様子に気づき、テキパキと指示を出していった。



 半日後、アリアは無事に長女であるアリエノールを出産した。彼女は最も母親似であり、栗毛の紫色の瞳を持った女の子であった。

 アリア自身も体調の回復はよく、半月後に行われた王宮夜会では国王と相変わらずの仲睦まじさを周囲に見せつけた。


 結局、アリエノールの出産間際に約束したことは、その次の年も叶わなかった。というのも、翌年も年末に妊娠がわかり、寒いところへの長時間の外出が出来なかったのだ。

 しかし、次女であるカリーネを出産した次の年に、ようやくマーケットへの参加が叶い、アリアはそこでの買い物を大いに楽しんでいた。マーケットに参加した人々はお忍びで来た国王夫妻の正体に気づいていたが、誰もそれを咎めることもせず、受け入れてくれた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――

 そこで購入したとされるカフスボタンは、アリア妃の宝物になったという。しかし、次女カリーネが”●●●●リスク”へ輿入れの際に、彼女に渡されたという事は侍女長の日記からも読み取れるが、―――――――。

(当文章の原本は火災により一部焼失したため、一部分について解読できず。また焦げにより判読不能な字は●で表している)

(リゼントベルツ国史”リーゼベルツ国時代編”)

本文中に出てくる祝祭日は全てフィクションです。

また、今回の話で出てきた『花まつり』とは、『仏教界おけるお釈迦様のお誕生日会』の事です。毎年4月8日がお釈迦様の誕生日であるとされ、その日に甘茶をミニチュア仏像にかける儀式が行われます。


また、娘のアリエノールですが、容姿が母親(アリア)に似ていたことから、名前はその母親であるエレノア夫人の名前に由来させました。

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