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転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね? ~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~  作者: 鶯埜 餡
17才編『救済の鐘』

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 既に王宮へ向かうために持っていくものは決めており、それらの全ては二人が暮らしていた屋敷においてあるので、貴族議会が開かれてからはそれぞれの実家へ戻る事はなかった。

 そして、貴族議会で公にされた一週間後、二人は王宮―――――正確に言うならば奥宮へ移動した。既に二人は王国の作法は学んでおり、新たにそれらを学ぶ事は無いが、一国の王族としての作法は学ばなければならない。

 一方で、『元王族』となるクリスティアン王子はベアトリーチェと共に城下へ移る手筈を整えていた。最初はクリスティアン王子に離宮の一つを使用して欲しいと、アランもアリアもお願いしたが、彼の意思は強く、結局、アリア達は折れざるを得なかった。



 王族としての教育が始まって、一週間。

 二人ともすでにすべての教育を終えるべきである、と教師たちから言われた。特にアリアは礼儀作法については(前世から身に着けていたものではあるものの) かなり通じているとされ、確認程度で終了し、他の物もほとんど新たに教えることはなく、後は近年の国際状況についての勉強だけが残されていた。一方、アランもかなりの優秀さを明らかにしており、彼については国内の勢力図を重点的に勉強しているらしい。

 アランの状況を聞いたアリアはある疑問点に思い付いた。それを確かめるべく、ディートリヒ王とアランが共同で使っている執務室に行くと、二人からやっぱり来たか、という表情で出迎えられた。

「ちょうどよかった。アリア姫に頼みごとがあるんだけれど」

 一応『王族』の扱いとなった二人に対して、ディートリヒ王はかなり砕けた口調で言った。ちなみに、あの話し合いの後聞いた話だが、母親のエレノアとも王は個人的に話す時はかなり砕けた口調になっているらしい。しかも、『ちょうどよかった』とは何だ。何かまたよからぬ(・・・・)企みごとをしています、と言っているようなものではないか。それを聞いたアリアは、

(それはほかの貴族の目の前では言えない話だわね)

 と思ったが、いざ自分が経験すると、誰かに喋りたくなるというものだった。

 彼女の疑問を察した二人は彼女が執務室に入ってくると同時に、手を休め、侍従にお茶の用意をさせた。しかし、その侍従の姿を見て、再度アリアはむせそうになった。


(なんで、この人が――――――)


 侍従として現れたのは、まだ王太子であるはずのクリスティアン王子本人だった。

「いやぁ。いつかはやってみたいって思っていてね」

 と言いながら、三人の前にお茶とお菓子を置いていく。しかし、彼の手つきは慣れたもので、初めてとは思えなかった。

「初めてじゃないよ?」

 アリアの思考を読んだのか、彼はそう言った。言われてみれば、他の二人は全く驚いてもいない。という事は――――――――

「うん。これまでも何度か二人の休憩の時にお茶を淹れさせてもらっているよ」

 彼はあっけらかんという。いくら数か月後には王位継承権を返上し、一国民となるものの、まだ王太子であるのだ。アリアはそれを言いたかったが、彼の笑顔には逆らえず、一口飲んだ。

「かなり美味しいわね」

 思わず本音が出てしまった。クリスティアン王子はありがと、と言って、あの時と同じようにウィンクした。すると、隣に座っているアランはすごく不機嫌そうになったが、それを気づいたクリスティアン王子は、

「あー、怖い怖い」

 と言って、逃げるようにして、執務室を出て行った。


「で、ご用件とは?」

 アリアは少しため息をついてから、そう国王へ尋ねた。王太子の行動については何も問わないでおこう。たぶん、アリアの精神衛生上、良くないことが起こる可能性しかない。

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