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「ちなみに、話し合いに参加したのはあまりにも王家の血が薄くてもいけなかったので、四代前のヴィルヘルム王の兄弟、もしくはそれ以降の直系の王族が嫁いだ、もしくは婿入りした貴族に限らせてもらい、範囲は王子王女本人から二世代下まで」

 クリスティアン王子は顔だけ笑いながら言う。アリアが言えた義理ではないが、彼も結構いい性格しているような気がする。

「という事で、自動的に絞られたのはモンロー公爵、サランドア侯爵、クルベナ侯爵の各親子は文句なかったのですが、いかんせんいずれも王女が嫁いでいるという部分で各親子とも難色を示されました」

 クリスティアン王子の続きの部分に、呼ばれた親子はかなり苦笑いしていた。実際は違う、とアリアも思ったが、無用な発言は控えるべきだった。前半部分を聞いた貴族たちは、後半部分の言葉に思いっ切り首をかしげていた。彼ら以上にいい存在がいるか、思い切り忘れていたのだ。


「そして、今回、話し合いで決まったのは結論から言うと、公爵の中でも筆頭公爵であるバルティア公爵です」

 王子は笑みをさらに深めた。貴族は一斉に、何故王家の血が全く入っていないバルティア公爵へ渡すのか、という顔をし、本当にいい性格をしている、とアリアは痛感した。これだけのことをする力があるのなら、王太子、国王としてもやっていけそうなのに、と。呼ばれたバルティア公爵は前に出るが、御意とは言わなかった。


「お話はありがたく、我が一族にとっても誉となりましょう。しかし、私にはその大役は不可能でしょう」


 では一体誰が、国王となるのか。貴族たちはそろそろ痺れが切れてきた。そうですか、とクリスティアン王子は残念そうにする。アリアはもちろん今までのが全て茶番であるという事がわかっており、とんでもない役者だと今更ながら思う。


「では、貴方の息子になら任せられませんでしょうか」


 は?という声が、貴族の間から聞こえてきそうな状況に陥っていた。バルティア公爵はなるほど、確かに私は無理でしょうが、息子になら、と本人の意見抜きで納得する。


「もちろん、あなたであっても、あなたの息子であっても一つ条件が付きますが」


 少し王太子は間を空けたが、バルティア公爵から視線だけでせかされたのか、少しため息をつきながらさらに続ける。


「スフォルツァ家令嬢、アリア姫と結婚するという事を前提に」


 その場は騒然となった。アリアは確かに、と思った。どちらかというと、アリアは国王の伯父であり、先だって幽閉された(・・・・・)ジェラルドよりも処刑されたフレデリカとの関連の方が印象強かったのではないかと思う。そのため、実は先ほど王太子が言った二親等以内の親族、というのにも合致するのだ。しかし、ジェラルドの存在に気づいた貴族たちは騒ぎだす。

「しかし、いくら何でも幽閉された廃王子の孫娘は問題あるのではないのか」

「そうです。たとえそれが諸国との友好を結び付けた娘といえども、所詮は罪人の娘ではないですか」

「それに、すでにスフォルツァ公爵令嬢の地位はないではありませんか」

 隣でアランが抜刀しようとした。軍務相の席にいるセルドアもあとわずかで抜刀しかけていた。


「それについてだが、儂は先の裁判で子爵位をはく奪しただけであって、王籍については全く触れておらん。王籍をはく奪(・・・)した証拠はあるのか」


 それまで王太子に任せていたディートリヒ王が言葉を発した。ちなみに、この国での王族の扱いとして、王籍ははく奪されない限り、いつでも王族に戻ることが出来る、という事になっている。そういう意味では、ジェラルドは自ら返還しており、はく奪したわけではない。きちんと宰相記録にもそう記されている。なので、王が返還すると言えば、王族に戻ることにもつながり、アリアもスフォルツァ公爵令嬢、という身分がありながら、母方の血筋からすれば王女としての扱いを受けようと思えば、受けることが出来るのだ。


「それにスフォルツァ公爵令嬢の地位ははく奪しておらん。はく奪したのはスフォルツァ公爵代理、そして、かの公爵の相続権をはく奪しただけだ」

 これも裁判記録を見れば残っている記録だった。それを国王は示しながら言った。反論した貴族たちはこれで黙らざるを得なくなった。


「しかも、諸国との平和をもたらす姫としていいのではないのか?」


 これ以上、反論が出ないことを確認すると、再び息子に託した。

「では、これで決まりですね」

 にっこりと笑い、その場を締めくくった。アランとアリアは王太子に手招きされ、中央に出て、貴族たちに向かって一礼した。



 一礼する中で、アリアはこう思った。


 この先、ここから見下ろす世界しか待っていない。

 アリアは今後のこの国が自分たちの手にあると考え、願望と同時に一種の恐れを感じた。

 しかし、隣にいるアランも同じだろう。むしろ彼の方がそう思うべきだろう。自分はただ、いつも彼の隣に存在し、彼を支える立場でありたいと思った。




 中には不満げな貴族もまだ存在していたが、現王と王太子にそこまで言われては、これ以上反論すると自分の首が飛ぶと踏んだ貴族たちは、この場は諦めたらしく、貴族会議は終了した。

ここまでが遠かった。

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