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転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね? ~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~  作者: 鶯埜 餡
15才編『不穏な雲行き』

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 クリスティアン王子とその側近と共に、彼の軍が本陣を敷いている天幕に行き、彼から現在、どのような状態になっているのか聞いた。

 彼の話によれば、事の発端は南方の王家直轄地であるこの付近の土地に、ウィリアムが役人として赴いたところから始まった。彼は元宰相一派を事前に情報を流しておき、元宰相一派はこの土地に集まり、どうやら追放先で不満がたまっていたフレデリカを唆し、この王家直轄地へ来るように言ったのもウィリアムだという。そうして、同志(・・)を集めたウィリアムは元宰相一派の貴族とその私兵たちを動かし、反乱の狼煙(のろし)を上げた。

 一方、反乱の動きを知った国王は彼自身が前線に赴こうとしたらしいが、セルドアに止められ、その代りにクリスティアンとダリウス両王子が派遣されることになった。その際、軍籍にいたスフォルツァ公爵としてユリウスも派遣されることになり、どうやらユリウスの派遣は反乱軍側から見れば『みせしめ』のためでもあり、国王側から見てもある意味『人質』のために同行させたという。そのため、ユリウス自身は騎士団の一員として最前線での戦闘を望んだが、実質的な総指揮官であるセルドアがそれを許さなく、派遣軍の中枢にとどまらせていた。その後、ダリウス王子が負傷した。

「俺の所為だ」

 クリスティアン王子は唸るように言った。

「どういうことですか?」

「あいつと俺は容姿が似ているから、宿では反対の行動をとった」

 アランの問いかけに、王子は淡々と言う。

 ダリウス王子は宿の主人を完全に信頼せずにいて、食事などに毒が混ぜられる危険性を危惧し、兄であるクリスティアン王子に提案したという。クリスティアン王子は最初反対したが押し切られ、弟が兄として、兄が弟として宿の中では過ごしていた。しかし、そのせいで、襲撃者はダリウス王子()クリスティアン王子()として認識し、彼をさらったという。その後、彼は側近のエリックと一部の騎士を率いて、本隊とは別行動をとっているといい、彼らの隊は全員無事であるという。だが、分かれたセルドアやユリウスたち本隊は、内部に反乱軍側の間諜がいたらしく、ここから南へ行ったところで、壊滅的な被害を受けたという。

 そこまで聞いて、アリアは真っ青になった。それに気づいたアランがアリアを支える。

「大丈夫?」

 アランの問いかけにアリアはかすかに頷いた。

「続けてください」

「分かった」

 それまで無表情だったクリスティアンは、何か不快に思ったのか、眉をひそめた。しかし、一瞬目を伏せた後は、元の無表情に戻っていた。

 ダリウス王子はその後の戦闘で、身柄を取り戻した。しかし、彼が人質をして捕らわれていた際に負った怪我がひどく、王都へ送り返すことになった。

「なるほど、それでダリウス王子殿下が王都におられたのですね」

 アリアとアランはその話は聞いていたので、そこについては聞き流していたのだが、マクシミリアンが納得したようにつぶやいた。どうやら彼は国王夫妻と会ったときに、説明を受けていなかったらしい。



 その後、アリアたちは兵士たちに交じり食事をとった。

「なんだか申し訳ないわね」

 アリアは人員が4人も追加になってしまったことを詫びた。平常時ならいざ知らず、こんな戦場に、4人―――――そのうち、非戦闘要員が2人ほど―――も世話になってしまってよいのかと思ったが、下士官たちは快く受け入れてくれた。

「いや。構わないよ」

 クリスティアン王子は少しため息をつきながら言う。

 食事後、アリアとアランはクリスティアン王子にお願いし、彼の天幕内で三人きりにしてもらい、マクシミリアンやヨセフ、護衛騎士たちには隣の天幕へ移ってもらった。

「僕に伝言って何だろうか――――」

 本当はクリスティアン王子に伝えるかどうか迷ったが、国王から『お願い』されているので、伝えないわけにはいかなかった。


「陛下はこの戦が終結次第、西方のコナンディナへ移られるそうです」


 アランが何の感情も含めずにそういう。クリスティアン王子はその言葉に、驚きを隠さなかった。一般的な常識としてはその地名はあまり聞きなれないものだが、王族にとってみれば、その地名は特別の意味を持つものとして聞こえているだろう。アリアは少し胸が痛くなったが、自分たち(・・・・)の通過儀礼として考えねばならないだろう。

「まさか」

「ええ。西のコナンディナ、です」

 アランは地名を強調した。

 『西のコナンディア』とは、リーゼベルツの最も西にある王家直轄地だ。しかし、その直轄地は他に7個ある直轄地と異なり、保養地(・・・)としての直轄地ではなく、代々罪を犯した王族たちが幽閉される場所なのだ。そのため、よっぽどでない限り、王自身が西のコナンディアへ行くという事はしない。ちなみに、先王は自身が王位に就くための野心があり、本当ならば『生き地獄』を味わわせる予定だった兄をこの地へ赴かせるつもりだったらしいが、それは先手を打ったジェラルドによって阻止された。

 そんな土地へ国王が行く、という事がどのような意味を指すのか、さすがにクリスティアン王子にもわかったみたいだった。

「ですので、この反乱が終わり次第、殿下へ王位を譲り、陛下は移動なさるそうです」

 アランは全てを言った。クリスティアン王子はぼんやりと宙を見た。その表情からは何も読み取ることはできなかった。

 しばらくして、クリスティアン王子は一人きりにしてほしい、と頼み、二人は食い下がることなく下がった。

「やっぱり伝えなかった方が良かったのかしら」

 アリアはクリスティアン王子がいる方向を見て呟いた。アランも同じことを最初は思ったみたいだったが、首を横に振り、

「いつかは言わなければならないことだと思う。ただ、それを早めて良かったのか、悪かったのか、今はわからないけれどね」

 という。

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