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転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね? ~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~  作者: 鶯埜 餡
15才編『不穏な雲行き』

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 翌日。アリアとアランはスフォルツァ領へ『お使い』に出ていたヨセフと合流し、王宮へ向かった。近くの街で手引きしてくれる商人たちと合流する。

「アリア」

 アランは商人たちと合流する直前、ふと何かを思い出したように、アリアを引き留めた。

「何?」

 アリアは彼の表情を見て何か言いかけたが、言うのをやめた。恐らくは悪いことではないだろう、と判断したのだ。


「この先、僕らは戦う。だけれど、僕は死ぬ気はないし、アリアを死なせるつもりもない。二人とも生き延びよう」


 アランは一瞬言うのを迷ったみたいだが、最後まで言った。しかし、アリアは彼が本当に(・・・)言おうとしていたことに気づいた。

(絶対に死なせない)

「アラン」

 アリアもまた、彼の名前を呼んだ。何だい?と馬車の御者台に乗り込もうとしていた彼が振り向く。

「ともに生き延びて、二人で(・・・)ゆっくりと過ごしましょう」

 アリアの言葉にアランは少し涙目になった。

「ああ」

 そうして、この国を救うための反撃が始まった。




 結論から言うと、王宮への潜入は成功した。

 というより、王宮においてディートリヒ王が『病気静養されている』建物はかなり警備がザルだったのだ。

「なんか、あっけないわね」

 アリアは容易く潜入できたというのに、なぜか浮かない顔だった。

「全くだ」

 アランもまた、似たような表情をしている。

(これは罠なのか、それとも誰かこの計画に気づいて事前にちゃっかりと主導権を握っていたとか)

 ちなみに、ヨセフが別のルートから切り崩しを図ったのかと思い、彼に尋ねたのだが、あっさりと否定されている。

「まあ、でもこの機会を逃すのはいかんやろうなぁ」

 暢気に構えているのは他国のことだからか、ヨセフだけだった。

「ええ、もちろん」

 アランもアリアも頷いていた。



 かくして、三人は人の気配がする場所へ向かうと、案の定そこには国王夫妻と夫妻の次男であり、この戦において戦線離脱したというダリウス王子、そしてもう一人、この政変において重要な人物がいた。

「スフォルツァ嬢」

「バルティアの若君」

 ディートリヒ王とシシィ王妃は部屋に入ってきた二人に驚いていた。

「会いたかったわ」

 シシィ王妃はアリアに近寄り、抱き着いた。

「王妃殿下もお変わりなく、何よりです。」

 シシィ王妃の香りは百合のにおいをこのんで使う。元々アリアは、百合のにおいや花の匂いはあまり好みではなかったが、今はこうして再会できたことにほっとしたので、その匂いが妙に心地よかった。

「ええ。全くよ」

 シシィ王妃はそう言ったが、彼女がかなりつらい思いをしているのは手に取るように分かった。なぜなら、自分の腹を痛めた息子の一人が戦場に立ち、そして、もう一人はその戦場で命を落としかけた。さらに、自分の実の娘同様に思っていたミスティア王女がさらわれ、反乱軍の旗頭にされているのに、心を痛めないはずがないと思ったからだ。その証拠に、心なしか以前より少し痩せているような気がした。

「スフォルツァ公爵令嬢」

 ひとしきり王妃との再会を喜んだアリアは、ディートリヒ王の呼びかけにはっとなり、きちんと居直った。

「両陛下、そしてダリウス王子殿下をお迎えに上がりました」

 アリアの言葉に、国王夫妻は顔を見合わせる。どうやら、その想定はしていなかったらしい。アリアは微笑む。

「どうするつもりだ」

 しかし、アリアたちの予想に反して、国王夫妻の反応は薄かった。アリアは一瞬、虚を突かれた。それは、アランやヨセフも同じで、三人とも目を見開いて固まっていた。

「まあ、確かに政変のおかげでここに監禁されてはおるが、ここを出たところで、其方らの負担が増えるだけではないのか?」

 ディートリヒ王は静かに問う。それは、アリアたちも話し合って決めたことだった。しかし、『国王夫妻』の身柄が負担になっても、それ以上に二人の身柄を預かることによるメリットが多いことからそう判断したのだ。それなのに、何故彼らここから出ることを拒否したのだろうかと気になった。

「―――――しかし、両陛下がここをでぇせんと、鎮圧軍はどうなるんですか、ね?」

 ヨセフが口をはさんだ。すると、今までアランとアリアに釘図付けだった両陛下の視線がヨセフへ向かう。ディートリヒ王はヨセフ(他国の者)と認識した際、かなりの不快感を示しが、ヨセフはどこ吹く風で続けた。

「もちろん、実際の戦闘は参謀に任せときゃいいでしょうけれど、陛下が最前線にいることで軍の士気だって上がるでしょう」

「それには及ばない」

 そこで一瞬区切り、視線を下へ向けた。


「儂はこの戦が終わり次第、退位する」

 ディートリヒ王の発言に誰もが驚いていた。

「それが儂なりの意思だ」

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