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転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね? ~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~  作者: 鶯埜 餡
15才編『不穏な雲行き』

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 リーゼベルツ南方、王家所有地ザナラシア手前の街にて――――

 国王軍が襲撃され、そのトップである王太子の弟が連れ去られた、という話に、彼らが泊まっていた街の中は一触即発の雰囲気が漂う。

「どういうことだ」

 ダリウス王子が連れ去られたという報告を本陣で聞いたセルドアは、クリスティアン王子とダリウス王子が泊まっていた宿を訪れた。王子たちに付いていた護衛騎士たちもまさかこんなことになるとは、と顔を真っ青にしている。

「申し訳ありません――――」

 騎士たちが次々に謝ろうとすると、それを制したものがいた。


「待て、それはこちらの落ち度だ」

 部屋の奥のベッドに座っているクリスティアン王子だった。

「――――――――殿下?」

 王子の謝罪にセルドアは訝しんだ。

「私が提案したんだ。ダリウスと私が入れ替わる、という事を」

 王子の言葉に誰もが言葉をなくした。『王太子とその弟が入れ替わる』?

「それはこの宿で、という事で合っていますしょうか」

「ああ。恐らくこの付近は襲撃を受ける可能性がある。それはコクーン卿も言っていたから、俺らは少しでも近くにいるようにした。だが、この宿の主人が向こうと通じている、というのだったら、俺らの命はただの食事でさえ奪うことはできる。だからこそ用心しないわけにはいかなかった」

 その言葉に確かにと、納得は出来た。しかし、そのせいで重要な役割を果たす人をみすみす奪われてしまったことには間違いない。セルドアはクリスティアン王子の行動を理解できても、割り切ることはできなかった。

「なあ、コクーン卿」

 クリスティアン王子に突然呼ばれ、セルドアははっとして彼の方を向く。彼は泣き笑いをしているようにも見えた。

「なんでしょうか」

 セルドアはクリスティアン王子の、その思い切った表情に一種の危うさを覚える。すると、王子は表情を変えずに、

「俺、行くよ」

「はっ?」


「俺は失われたものを取り戻すために、戦場へ行く。俺がコクーン卿の枷になるのならば、コクーン卿は来なくていい」


 クリスティアン王子の言葉にセルドアは耳を疑った。しかし、聞き間違えではないのだろう。ほかの護衛騎士たちも驚いて、彼を凝視している。

「しかし――――」

 セルドアは止めようとした。しかし、クリスティアン王子はそのセルドアを制し、続けた。

「私とて考えがないわけではない。しかし、それをあなたと共に実行すれば、あなたは確実に左遷される。それだけは避けたいのだ」

 クリスティアン王子は泣き笑いでそういう。セルドアは呆気にとられた。そんなことを気にしていたのか、と。

「いいえ、殿下」

 セルドアは優しく彼に声をかける。

「私はもともと昇進など望んではいません。妹のために騎士団長の地位は欲しかったのですが、もうすでにそれは解決しました。それに、軍務相という肩書は私には重過ぎるのです。だから、今ここで陛下に軍務相の地位を返上する旨を書いても構いませんし、何なら騎士団長という地位でさえ捨ててもいいんですよ」

 セルドアがそういうと、今度はクリスティアン王子が呆気に取られていた。その姿を見て、

(ああ、たぶん陛下も同じ顔をされるのだろうな)

 と、そんなことを思える余裕があったセルドアだった。しかし、それでもクリスティアン王子は首を横に振る。

「大丈夫だ、コクーン卿。これは私一人で動いた方がいい」

 そう言われてしまっては、セルドアはこれ以上何も言えることがなかった。そうですか、と言い、彼の部屋を後にした。

「軍務相様、いかがなされますか」

 背後から護衛騎士の一人が聞く。

「どうするもこうも、私一人の意志ではあの方を動かすことはできないだろう」

「では、どうなさるおつもりでしょうか」

 護衛騎士の質問にセルドアは立ち止まる。


「さあ、どうすべきなのだろうか――――」

 彼は柄にもなく、空を見上げる。彼が見上げた空は快晴であり、この状況とは正反対のものだった。





 そして、ミゼルシア王都では――――――

「はぁ、どういうことよ」

 アリアは定期討論会(・・・・・)(主催:ラシード王、主賓:アリア、客:クロード王子、アラン(敬称略))として呼ばれた王宮で、同じく討論会に呼ばれているクロード王子から、リーゼベルツ内部で反乱がおこったことを聞かされる。

「そのままの意味だ、なあ赤毛君は知っている(・・・・・)んだよね?」

 図星を刺されたアランは顔を背ける。その反応だけでアリアは知っていたんだ、と確信する。

「教えなさい、アラン・バルティア」

 アリアはアランの胸ぐらをつかんだ。それもアリかも、という声が2人分聞こえてきたのは耳の錯覚だという事にした。


「ああ、起こったさ。紛れもない、あなたの叔母と従妹の手によってね」

 アランの口調は皮肉を言っているようだったが、表情は一致していない。かすかに痛みを感じた表情だった。

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