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転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね? ~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~  作者: 鶯埜 餡
15才編『不穏な雲行き』

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「あなたをこちらに寄こすとディートリヒ王から聞いた時から決めていたんだ」

 ラシード王は目を細めて行った。どうやら自分をこちらへ来させることは、ディートリヒ王の中でずいぶん前から決めていたみたいで、そのことをラシード王にすでに持ち掛けていたらしい。

「私はあなたを正式に招待できないという事は、もう何か月も前、まだセリチアにいたディートリヒ王から聞いていたから納得もせざるを得なかった。しかし、こないだの北方会議の時に尋ねたんだけれど、彼以外にもセリチアのフィリップ、『白き土蜘蛛』のイサク、グロサリアのダリオもあなたのことを高く評価している」

 ラシード王はにこやかに言った側近の男も笑顔で頷いている。

「というところから、私はあなたをいつかこの国へ招待し、会ってみたいと思っていたんだ。だけど、今回、正式に打診されたときに私は条件を出したんだ」

「どういう事でしょうか」

 ラシード王はそこで区切った。アリアはその条件とやらが気になった。にこやかな笑みを浮かべたまま、アリアに言った。


「君を今までの身分を保障(・・)したうえで、リーゼベルツから追放、という()をとる、という事だ」


 王の言葉に、アリアは唖然とした。それもまた、仕組まれていたことだったのか、と。

「ただ、もちろん、ここの国の貴族法で縛り付ける気もない。だが、ある程度の身分保障がなければ、あなたはこの国ではやっていけないだろう。それはこの国では恐ろしいことだ。未だに私も怖くなる時がある」

 ラシード王は肩をすくめながらそう言った。背後の男も同じような方をすくめていた。アリアもまた、声が出せなくなっていた。リーゼベルツも貴族の上下関係が厳しいことで昔は有名であったし、だいぶ気軽に接することが多くなった今でも、昔の慣習に近いことが行われている。しかし、そんな国の出身であるアリアに対して忠告するほど厳しいとは。だが、先ほど王の手を取らなかったことに対してだろうか、ラシード王は、

「だが、どうやら想像以上に賢いようだ。心配はご無用だな」

 と笑った。そうして、一段落すると背後の男が何やら書類を持ってきた。

「という事で、改めましてアリア・スフォルツァ公爵令嬢。私はこのミゼルシア王の側近を勤めていますザウルと申します。どうかお見知りおきを」

 と言って、頭を下げたのは三十路ぐらいだろうか、この世界では珍しい深い紫色の髪を持ち、深い緑色の瞳をした男――――この国の宰相でもあるザウル・スヴォニウフ公爵だった。アリアは彼につられて頭を下げた。

「こちらこそ、さまざまなご厚意をいただきありがとうございます」

 そう言うと、ラシード王は少しむくれ、それを見たザウルはクスクス笑う。何か間違ったのだろうか、と思ってザウルの方を見てみると、

「いいえ、あなたがラシードに対して言わなかったことを私にだけ言ったから、少しむくれているのですよ」

 と返され、アリアは慌ててラシードに対して言おうとしたが、直前で留められた。

「いや、構わない。というか、こうすればよいとは思わないか、ザウル?」

 王は何かを考えた目でザウルを見ると、ザウルが心得たとばかりに頷く。

「そうですね。アリア姫、あなたに一つ頼みごとがあります」

「何でしょう」

 来たての国で頼まれ事とは、と思って一瞬身構えたが、

「単純なことです。我が主と対等な関係(お友達)になっていただけませんか?」

 と言われた。やっぱり無茶な要求でしょ、と思ったが、そのアリアの感情が伝わったのかザウルは首を横に振った。

「いいえ、あなたほど適任な方はいないのですよ」

「どうしてですか?」

 アリアはそう尋ねた。やはり納得がいかない。

「一応、私は我が主である陛下の乳兄弟。しかし、王家と我が公爵家は全く縁がなく、完全に臣下の身分でしかないのです。しかし、アリア姫は現リーゼベルツ王の準従妹の身分。そして、その現リーゼベルツ王と我が主の母君は従姉妹同士なのですよ。それを考えたら、かなり遠いですが、一応親族としてもカウントできるのですよね」

 ザウルはほくほく顔だった。それを聞いて、アリアは納得した。

「つまり、完全なる爵位制度が充実している(・・・・・・)貴族社会の中で、私はラシード王陛下の親族であり、対等な立場である、という事ですね」

 と、アリアは二人に対して言った。すると、二人から拍手が起こる。どうやら合っていたらしい。アリアは胸をなでおろした。

「そういう事だ。という事でよろしく」

 ラシード王はにっこりと笑った。その笑顔とキラキラ輝く金髪は反則だろう。

「ええ、お願いします。ただ、一応年上であるので、敬語だけはご勘弁を」

 アリアは観念して、そう言った。恐らくこの世界の偉い人たちは、かなり強引だ。しかも、臣下であるアリアが若干ではあるものの有利な方向に。


「で、だいぶ話がそれてしまいましたが、まあ、正式に言質も取れたことですし、あなたには王が直々に経営されている国立第一高等機関に招待いたしましょう」

 ザウルは持ってきた書類の一部をアリアに見せた。そこにはその機関の詳しい内容やこの国の制度などが書かれていた。

「まあ、そうすることによって私たちもあなたという人材を一定期間は確保できることですし、あなたもリーゼベルツを追放(・・)されている間に、有意義な時間を過ごすことが出来ますでしょう」

 ザウルは微笑みながらそう言った。アリアは真顔で、はい、そうですねと返すしかなかった。

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