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転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね? ~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~  作者: 鶯埜 餡
14才編『セリチア』

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 5人での勝負は、十分程度の試射の後に行われることとなり、それぞれの射手は木に据え付けられた木製の的に向かって矢を放っていた。アリアもまた練習を行い、過去には遠的も行っていたので、この勝負程度の距離ならば外すことはないのだが、この練習においてはわざと半分以上の矢を的から外させた(・・・・)。それを見たそれぞれの責任者たちは一部を除き、かなりアリアを嘲っていた。

「この程度で、俺たちと勝負するなんて大概にしろ。でも、お前が言い出したことなんだし、きっちりと責任はとれよ」

 そうはっきりと言ったのは『白き土蜘蛛』の頭領イサクだった。彼はアリアが矢を的から外しに行こうとした時を狙い、壁ドンならぬ()ドンをし、彼女の顎を持ち上げ、彼の顔を近づけた。背後を木に押さえつけられた彼女は、彼に何をされるのか一瞬ヒヤリとした。もちろん、そこに色恋沙汰の感情はない。しかし、アリアが思った以上に周りの反応は、彼にそれ以上何かさせる気を起こさせないものだった。彼の力が一瞬緩んだのに気付き、精一杯押しのけた。

「申し訳ありません。人前で弓を射るのは久しぶり(・・・・)なものですから緊張して手が震えてしまったのですわ。普段は全く的を外しませんわ」

 アリアはほかのメンバー(特に剣を抜こうとしていた人たち)に合図をしながら、言った。緊張するのは間違いないし、100%の自信はない。しかし、そうでも言っておかないと、自分自身に負けそうで怖かった。

「ふん、そこまで言うのならば貴様との勝負は五本勝負でもいいだろう」

 イサクはアリアに挑むように言った。アリアは一瞬戸惑ったが、悟られないように表情を消し(ポーカーフェイスで)

「そうね。それがいいと思うわ。じゃあ、私たち(・・・)だけではこの勝負は成り立たない。スルグランの方もそれでよろしいわね」

 と答えた。アリアに尋ねられたヨセフは、ええ、と承諾し、イサクの方を見た。一瞬でおそらく死角となっているリーゼベルツの人間には見えなかったと思われたが、イサクとヨセフは目配せしあった。

(やはり、何かを企んでいる)

 アリアは直感で分かったが、確証を得ることが出来なかった上に、直接聞いても教えてくれないだろう。あとは天と『自分自身』に賭けるべきだ。いろいろ言いたいことはあったが、そこは抑えた。


 そして、勝負本番が始まった。結局、先ほどの一件のため、順番は先ほど決めた順番ではなく、セリチア・グロサリアの勝負を先に行い、『白き土蜘蛛』スルグラン・リーゼベルツの勝負は後に行われることになった。

 セリチアとグロサリアは三本勝負であるので、三回矢を放った。セリチアのフィリップ王子は一本命中、マルクスは二本命中だったので、グロサリア優位での話し合いが改めて行われることになった。


 そして、五本勝負となった三者の戦い。最初にクロード王子が台の役となったときは、数人のセリチアの兵士と見せかけたリーゼベルツの騎士たちを側に控えさせた。もちろん、リーゼベルツが調停に乗り出てきた要因でもある。内通者をあぶりだす一策でもあるのだが、流石に囮役(・・)となるクロード王子に『護衛』がつかないのはおかしい。そう判断したのか、本物のセリチアの兵士だと思っている誰からも何も文句は言われなかった(さすがにクレメンスは『それはちょっとまずくないのか』とぼやいていたが、ディートリヒ王が許可し、フィリップ王太子とクロード王子も許可したので問題はなかった)。

 結果は五射中三射の命中。弓の名手として戦場では名高いというイサクでも二射は外したので、()であるアリアにはもっと散々な結果が目に見えているのだろう。かなりほかの国から憐れむような視線が見受けられた。

 その次に射ったヨセフは四射。ほとんどの人はこれで勝負が決まったものだろう、と思った。これ以上勝負を続けるのは意味ないのでは、と思っており、一部の兵士たちはそう言ったが、特にリーゼベルツの2人が黙っていなかった。

「見苦しいのはよした方がいいですよ」

「リーゼベルツをなめると痛い目に遭うと思いますね」

 その二人はその元凶であるヨセフとイサクの背後に忍び寄り、そうささやいた。彼は真っ青になることはなかったものの、一瞬動揺を見せた。

 そうして、アリアは既定の位置に立ち、弓を構えた。幼い時から身についているやり方(射法八節)で、弓を引いていると、周りからざわめきが起こっていた。

(まあ、この世界では見ない引き方でしょうね)

 アリアはそう思いつつも、それ以外のことは全く考えていなかった。そう思って、矢を放った。







「で、あなた方の目的は何ですの?」

 勝負が終わり、改めて話し合い(・・・・)の場が設けられ、その場において仕切っているのは、すがすがしい顔をしたアリアだった。その手にはなぜか木の枝を持っている。そのにこやかな視線の先には、顔をひきつらせたイサクとヨセフがいた。彼女たち三人以外は、天幕の外にいるようにアリアからお願いされ、そばには控えているものの、アリアからは空気だと認識されている(もちろん公認である)。

「すでにあなた方が我が国の誰かと接触したのは知っているのよ。どうしてそんなことが必要なのかしら、ねぇ?」

 アリアは首をかしげて尋ねた。その際に木の枝を彼女の左手に音を立てて打ち付けながらそう言ったので、さらに二人は震え上がった。一瞬二人が目配せしあったのを見逃さないアリアである。


「さっさと吐いちゃったほうが楽よ?」

次回で調停編終了です。

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