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祝100話目です

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 シーズン開始となる王宮夜会の後、アリアは昨年の続きで『国王の秘書官』という立場で勤務をしていた。


「グロサリア王国ですか」

 王宮夜会から一週間たったある日、アリアは執務室へ行くと、先に来ていた同僚からその国について知っているか聞かれた。

「ええ、つい数十年の間に勢力を伸ばして、近年ではグレメンディナ公国を併合したとか、そういう程度でしたら存じています」

 アリアは自分の記憶の中にある情報は、かなり大雑把な情報で、細かい事情までは覚えていなかった。

「ええ、そうです」

 その同僚はよく知っているなと、首肯した。この王宮に仕える文官たちは、もともと女人禁制のような場所である。そのため、アリアが秘書官として働きだした頃は、どんな嫌がらせにあうのか心配でしょうがなかった。しかし、少なくともこの国王付きの秘書官たちは彼女に対して(表面上は)良くしてくれる人が多く、非常に心地が良い環境(仕事場)でもあった。


「そして、彼の国が動き出しました。おそらくこの数年、下手をすると1年以内にはこの周辺地図は変わってくるでしょう」

 彼の言葉に、アリアは眉をひそめた。

「どういう事でしょうか」

 確かに軍事国家であるグロサリア王国はかなり脅威で、国境は接してはいないものの、リーゼベルツに攻め込まれたらひとたまりもない。しかし、ただ不可侵条約を結んでいるだけなので、一方的に破棄される、という可能性も否定できない。また、彼の国と国境を接しているセリチアと戦端が開かれた、もしくは重大な懸案事項があったという報告も聞いていないはずだ。そして、多くの小国が群雄割拠している南方についても、南方の有力者である皇国にリリスが嫁いでいる。なので、南方諸国とも程よくバランスが保たれている。そのバランスが潰えようとしている、というのか。アリアは少し考えたが、今起こっている事案が思い浮かばなかった。


「セリチア王国、そしてグロサリア王国は一触即発の状態です」


 彼の言葉にアリアは息をのんだ。そんな状態だったのか、そして、どうしてそんな状態になっているのか。もちろん、アリアには理解できない理論なんだろうし、理解しようとも思わなかった。

「ということは、この国にも被害が?」

 しかし、アリアにもできることはある。今はそれをして、足元を固めておこう、と思った。

「いいえ、おそらくはセリチアは大国。ある程度の戦場で、ある程度持つのならば、自国民位ならば避難できる土地はありましょう。それに、隣のスルグラン国も南方に伸びていますので、火の粉が降りかかる前に、避難することはできます」

「じゃあ、この国の軍事力をまとめておくぐらいかしら」

 たとえ戦端が開かれても、大陸随一の兵力と武器の所蔵量をもつセリチアが落とされることはないだろう、とアリアは思っている。しかし、どんな状況になるかはふたを開けてみなければならない。もし、セリチアが負けて、グロサリア王国がセリチアを併合した場合、次の標的になるのはリーゼベルツの可能性が高い。それを考えたら、軍事力を高めておくしかない。しかし、

「ええ、それにはおそらく軍務相は反対なさるでしょうね」

 アリアと同じことを同僚も考えていたらしく、そう言い切った。王立騎士団が所属する軍務の長である軍務相は根っからのジェラルド派の長老の一人だった。彼はどうやらディートリヒ王を認めていないらしく、かなり彼が提出する法案に反対意見を出していたり、ディートリヒ王に無断で法案を通したりしているのを、会議に侍従としてついて行っているアリアは目撃している。その彼が、『国王直属』であるアリアたちの案を受け入れてくれることはない。

「そうですよね」

 ならば、軍務相を納得されられる手段(・・)と、それでもだめだった時にすべきことを考えねばならない。一気に気が重くなり、アリアはため息をついた。

 そんなことを二人で考えていると、勢いよく扉が開かれ、

「大変だ」

 と、今日は休日であるはずのもう一人の同僚――ジョルジュ・オルニア伯爵がやってきた。休みだった彼はかなり慌ててやってきたようで、来ているものは公の場でも着られるような少しいい私服、と言った感じの服装だった。

「どうしたんだ」

 最初にいた同僚―――ポール・マッキントン子爵は、慌ててやってきたジョルジュに問いかけた。


まず(・・)、セリチアとグロサリア王国の間で戦闘が開かれた。俺んところの諜報員がそう言っていたんだから、間違いねぇ」

 彼はそう言い、ソファにどさりと座った。アリアは彼に果実水をグラスに注ぎ、渡した。ジョルジュはそれを一気に飲み干すと、

「こうなるとは思っていたが、案外早かった」

 それにはアリアもポールも頷いた。

「ああ、確かに、行動が早かったな。で、二つ目(・・・)は?どうせよくない話なんだろうがな」

 ポールはかなり真剣な目をしてジョルジュに問いかけた。


「その通りだ」

 ジョルジュはわざとらしく言うのを躊躇うように区切った(・・・・)。そのためらいは何だろうかと考え、ポールに視線だけで問いかけたが、彼もまた首を振って、分からなかったとアリアに伝えた。そんな二人の無言のやり取りを見て、ジョルジュは人の悪い笑みを浮かべて、


「フェティダ公爵が捕縛された」


 え、という声がアリアから出たのか、それとも、フェティダ公爵領と近い領地をもつマッキントン子爵の口からでたのかはわからなかった。

 しかし、二人にとって、かなり予想を()回る事態だ。


「しかも、この捕縛を主導したのは、軍務相、ヤン・バルザックだ。ということで、この件は、秘書官(俺ら)じゃどうにもならねぇってことだな」

ここまで(自分のやる気と内容が)持つとは思っていなかったので、正直嬉しいです。少し更新頻度はゆっくり目ですが、頑張ってこれからも更新していきたいと思います。

今週中のどこかでお祝いSSを書こうかと思っています。また、自サイト(このページの下部にリンクがあります)の方でもSS特別版を公開しようと思っております。

また、更新しましたら、報告させていただきます。

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