間章1
ある転生者視点です
『俺』は記憶をたどった。
『ベアトリーチェ・セレネ』…?
お茶会に現れた彼女は、確か乙女ゲームの主人公だ。しかも、隣にいる男子は確か、ユリウス・デュート――悪役令嬢の異母弟だ。
そんな2人を前にして、『前世』の知識がよみがえった。妹に勧められるままにプレイした乙女ゲームの世界。ゲームの名前は忘れたが、悪役令嬢は本当に悪だった。しかし、その悪役令嬢の片方、姉のアリアも間もなく現れ、2人に驚いていたようだった。はっきり言えば、彼女は驚きを隠しており、周囲の人間は気づいていないようだった。そして、『俺』は気づいてしまった。
彼女がよく小説に書かれている悪役転生だという事、を。しかも、このゲームの内容を知っている、という事を。
お茶会がお開きになるころ、思い切った『俺』は彼女に接触しようとするも彼女の姿はすでになく、公爵家への伝手がない『俺』にはなす術もなかった。
その後、社交界を引退したエレノア・スフォルツァ公爵夫人が社交界に復帰するとともに、主人公一家と攻略対象母子を悪役一家が引き取ったという話が貴族の間で話題になった。『俺』は、それが『誰』の差し金であるのか、なんとなく想像はついた。
『俺』はこのままいけば、『彼女』とあまり接点はないが、それはそれでつまらない。一時期は悪名高かったが、今はとんでもない才女である『彼女』をぜひとも応援してあげよう。





