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蒼のAGAIN  作者: 「S」
第二章 2桁の『災悪』と絶望の病
42/42

第二章27 『Episode of Memory.The Renewal.EX――5.5c 』

長らくお待たせしました……。ようやく再開でございます。

週一のペースで出せれればいいのですが、あいにく、各話数の内容量が多いのと、案の定の忙しさで大変ですね。

同時進行の物語もありますが、まぁそこは気にしない方向で。

これから待っている超展開に期待あれ!ということで、とりあえずは『Renewal』話は残り2、3話ほどです。

それ以降は、流れるは早さでregret編は終了します。(おそくても今月中には)

そして以降の第二シリーズは、話数が少ないため、こちらもおそくて2ヶ月ほどでしょう。というか、そう済ませます。なぜなら、

4月からは第三シリーズを開始する予定。本格的な超々展開として、タグ通りの戦闘シーンが追加されます!

いやー、やっとですよ。ほんと。

これがド本命。

どういう流れでそうなるのか、とても急な話になると思いますが、つまらなくはならないと思います。(自信あり<(`^´)>)

なのでぜひお楽しみに。



 ――あの日、あの頃。



 それは絶対に忘れてはいけない過去で、忘れないと誓った大事な物。

 ずっと引きずって生きようと、そう決めた。



 ――なのに、



 今ではもう、思い出すことさえ儘ならない。

 ほんの数年、数か月前のことだというのに。



 ――でも、



 確かなことはある。


 あの3年間は、おかしなことばかりで、変にも楽しかったんだ。悪くは、なかったんだ。



 ――だから、もう一度



 取り戻すために、舞い戻ろう。



 君の元へ、君のために――。



 そうやって『真蒼黒竜』は3度、彼女との最後の思い出へと浸たった。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



『……ん?』



 広がる世界のただ一瞬。


 掴み取った光玉の後悔が、移り込むはずの無色透明な世界のキャンパスを彩るはずが、何故か薄っすらと変化しておきながら中途半端にも止まっている。



 そのことに疑問符を浮かべながら――『真蒼黒竜』はその世界に佇んだ。



 辺りを見渡せば、キラキラと光る星のようなものが辺り一帯を、掴んだはずのものとは別の世界を新たに描き出す。


 彩られ、光り輝くそんな世界で、もしかしたらと思い出す。



 ――たぶん、これは



 光が包み込む世界の果て、表情は微笑の笑みに染められる。


 忘れていた記憶。思い出したあの頃。


 それはただの、思い出話。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「……」



 世界が新たな後悔の記憶へと変移し、気づけばここは教室だった。


 席の配置、周りの生徒のざわつき。


 そこから見るにここは、先の後悔でも来たであろう小学6年生での出来事。


 それでいて、日付や曜日などの細かい日時はわからないが、月としては3月中旬でのもの。



 だから皆の笑顔が絶えず、なおかつ寂しげなこの教室を現すものは――、



 ――卒業式前日のものだった。



「ねぇ、そうま」



 ふとした瞬間、またも今さっきぶりの声が脳裏に響き渡る。



 その声の正体はやはり――『南芭恵魅』のものだった。



「何だ」


 いつも通りの窓辺で、素っ気無く返すクロ。

 ただ、いつも通りであっても、少し心の奥底で悲しみの涙を浮かべる自分がいる。



 その理由はただ一つで、この卒業とはまだ先の未来の話。

 徐々に近づく結末の未来が見えているから、こんなにも――。



「そうま?」


「ん?ああ……何だっけ」


「もう!聞いてなかったでしょ」


「聞いてるよ。明日のことだろ」


「え……ああ、うん、そう。で、来るでしょ?」


「何で俺が行く前提なんだ」


「来るよね?」



「だから――――……っ」



 記憶を辿る目的でここへと踏み込んでいるのに、未来の結末を知っているせいか私情を挟み、危うく過去とは違う行動を取るという厳禁行動を取るところであったクロ。


 あの頃の記憶を遡る中で、エミへの返答に自然と口を動かし、しつこいエミにその時の素振り通り窓からエミへと視線を移す。



 ――のだが、



 そこには、何度見ても慣れない、エミの笑みという微笑ましくもしゃれのような光景があった。


 ただそれは、笑みであっても目が笑っていないという恐ろし気な表情だった。


「どうして……」


「……?」


 エミの笑顔に複雑な心情が込み上げてくるクロ。


 それはおそらく、この『時』の感情。

 その理由は今でもなんとなくだが覚えている。



 ――それはおそらく、



 周りへと視線を移す。そこには案の定のクラスの皆がいる。


 みんな知り合いで、今となっては同学年全員が友達と言ってもいいほどの6年間を共にしてきた仲間たち。


 この先の未来で語る言葉を使うなら、ここにいる全員が幼馴染。

 その半分は保育園の頃からの知り合いで、卒業だと言うのに大半は同地区の中学へと上がるだけなのだから別れも何もない。



 ――ただ、



 今ではもう、彼等彼女等のことは覚えていない。


 いや、正確には覚えてはいるものの、自暴自棄やら自問自答やらの自分を見いだせない人生の迷いの一手で、彼等彼女等がどんな人で、どんな奴だったのかが、もうわからないのだ。



 ――そんな中でも特に、



 視線を戻す。世界から皆が消えていく。


 薄っすらと描かれた色鉛筆や水彩画の背景のように、淡く彩られた消えそうな世界。

 取り残されたのは自分と、目の前に立つ少女。


 視界に映る世界の片隅。少女の斜め後ろには、ひっそりと立つ懐かしき影。

 その影を見ると、不思議さと申し訳なさが心の中を渦めく。


 そこに今でも思う複雑な念を抱きながら、消えていく世界の傍ら、少女に返答する。


「……わかった」


 少女の答えに返事をすれば、その時見た彼女の笑顔が消えゆく世界のせいで、中途半端にも見えずに終わる。


『ったく……見せろよ』


 内心そう思うも、この終わり方に微笑する。

 何故ならその理由が、自分でもわかっているから。


 終わり始まる、序盤と終盤。


 悲しいような良かったような、そんな複雑な念を抱き、移り変わる世界でクロは一人、その感情を持て余した。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 ――卒業式。



 淡々と時間と景色が流れていき、いつの間にやらエミとの約束の時間がやってくる。


 エミとの約束。


 それはエミと、他数名とで卒業式終了後の最後の放課後に、丘にある病院近くの公園へと行くというもの。

 あの公園が新しくリニューアルされたということで、皆で遊びに行こうというものだった。


 ただ現状、その記憶をクロは自分自身が体験するのではなく、過去の光景を第三者の目線から眺めるというものだった。


 淡い記憶。消えそうで朧気な世界。

 そんな中で、昔の自分はいつも通りに振る舞いをしている。


 トンネルのような滑り台をエミと手を繋いで、通常縦に滑るはずの滑り台をトンネルの壁に寝そべる形で、後ろから押される勢いと重みで滑り落ちていく。

 その遊びが何とも言えなくて、何度も何度も滑り降りる。


 その時のエミは、素直に楽しそうなのだが、当時の自分は嬉しさともどかしさでいっぱいだった。


 何故なら自分が、こんなことをしていいのかと、誰かに許しを乞うような感じで罪悪感に満ちていたから。


 幸せそうなエミの笑顔。そして自分も幸せを実感している。


 だが、それを感じれば感じるほど胸が痛く苦しくなる。


 エミのことが好きだから。それもある。


 だけどそれ以上に、失われた者たちのことを考えると自分はこんなにも幸せでいいのだろうかと思ってしまう。


 ただちっぽけな幸せ。それでも、幸福を感じているのは確か。

 だから尚更、その重みがズシリと伸し掛かる。


 さらに言えば、エミのことが好きというのにも複雑だった。理由としては簡単。


 当時のエミには、ある噂があった。


 エミはクロとは地区が違う。

 そのため、クロより昔の幼馴染が存在する。


 エミの幼馴染。


 それは地区内で言えばたくさん存在するが、噂からその存在は絞られる。


 噂というのも、エミには好きな人がいるというもの。

 そしてそれが、幼馴染というだけの話。


 よくある恋花で、エミは「好きな人はいない」と答えているようだが、そんなのは人を見る目線や表情、口調や態度であらかた予想がつく。


 だがクロには、エミのそれがわからなかった。

 エミを好きという男子なら、たくさん知っている。


 そしてその中に、噂であるエミの幼馴染も入っている。


 つまりは、エミとその幼馴染は両思いということになる。


 けれどクロの予想には、その幼馴染の候補が二人存在している。



 一人は、酒屋の一人息子で、運動神経抜群で、テレビで稀に見るオリンピック選手候補にあがるほどの男――『日向(ひゅうが)(きょう)』。



 クラスのムードメーカー的存在で、サッカーを習っており、バク転ができる。

 そのうえ、頭脳も中の上ほどはあるのだから何とも言えない。モテるかモテないかで言えば、モテる。



 そしてもう一人。



 優しく、明るく、真面目で、それでいてノリがいい。

 黒髪天然パーマがシンボルの――『(みや)(じま)(こう)(すけ)』。



 シャイで顔が赤くなるところ、表情豊かなところが魅力的。

 そんな彼は、どのクラスの誰とでも気軽に接することができる善良な人。


 その二人がクロの脳内で、エミの噂の彼氏候補として挙がっている。


 ただ他にも、内の学校はレベルが高いために候補や噂がたくさんあるため、誰が誰とどのように組もうがおかしくはない話だった。


 男女レベルが高く、真面目でノリがよく、頭も運動神経も性格も顔も。

 そんなルックスやセンスだっていいのだから何とも言い難い話。


 確かに、他にも存在する誰かがくっついてもおかしくはない。


 エミを好きな男子を候補として挙げるのもいいだろうが、その人物たちを挙げればきりがないため、今挙げる者としては、上の二人だろう。


 結局、何が言いたいかで言えば、


 エミには好きな人がいて、それが幼馴染。

 その幼馴染もエミのことが好きで両思い。


 で、その意中のど真ん中にいるエミは、呑気に幸せそうにクロの隣にいる。

 だから自然と思ってしまう。


 エミと一緒にいていいのだろうか、と。


 それは二つの意味での言葉。


 一つはエミの幸せのため。もう一つは、込み上げてくる罪悪感からなるもの。


 彼女が幸せであるために、クロは一緒にいていいのだろうか。

『死神』という異名をつけられたクロに、彼女と一緒に幸せを噛み締める権利があるのだろうか。


 クロと一緒にいれば、不幸になる。


 それは確かな話。好きな人がいるなら、早く結ばれた方がいい。


 たとえ、自分の好きな人が他人と結ばれようが、その子の幸せを望むのならそれが一番だ。



 ――だから、



 微笑ましい光景に目を瞑り、お別れを告げる。


 何もない空白で不鮮明な世界へと戻り、目の前に浮かび並ぶ光玉に手を伸ばす。


 そしてまた、決意の意を表すように包み込む世界に溶け込み、身を委ねた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 ――Central.1



「……」


 新たな記憶を手にし、拓いた先はとある学校。

 ふと視線を身体へと移せば、案の定の格好だった。


 腰回りから首元にかけて閉じられたファスナー。

 それをなぞるように入った青いライン。

 首元と袖周りも同様にそのラインがあり、手には学生鞄があった。


「おはよう、クロ」


「ああ」


 辺りを見渡せば桜が舞い散っており、声を掛けてきたのはエミだった。


「入学式、か……」


「どうしたの?早く行こ?」


「……あいよ」


 校門前で佇み、掌に乗る桜の花弁を眺めていたクロに、校門を潜り合図するエミ。


 二人のいる場所は、クロたちの代で新しく新設された私立の小中一貫校。


 クロの通っていた小学校と通うはずだった中学校は、旧校舎として海沿いにあるものの、最近地震が多いために立地を変えようということになり、神社・葬儀所・病院と、それぞれがそれぞれの山に存在する――『三大山』とはさらに上の山に、小中一貫の学園が建てられ、山々の通り名は改訂され――『四冠山』となっていた。


 山一つを削り、学校を建て、余った土地を住宅地とする市の大々的改進。


 クロにとっては家から10分もかからないため気楽でいいのだが、新校舎を眺めていると、街を見渡せるこの場所は少し思うものがある。


 何故なら下に見える旧校舎は、中学の体育館以外は取り壊されることになり、平地にするとのことだった。


 そうする割に、立ち入り禁止区域とし、何も建てずに終わると言うのだから、複雑だった。


 あそこにある思い出や築いたものはたくさんある。


 寂しいとか悲しいとか、そんな言葉だけで片付けられるものじゃない。



 ――ただ、



 下町へと送る視線を新校舎へと戻す。


 街に背を向ける形で、足を一歩、校門の向こう側へと踏み出す。


 潜り抜けた先で思うのは、今ではもう覚えていないというあの旧校舎を脳裏に焼き付けることと、今も昔も変わらない、失うという儚さだけだった。



 中学に入ってからの1年間。所謂、中1。


 その中であった出来事を挙げるのであれば、宿泊体験学習だろう。


 やったことと言えば、小学生の頃の野外活動と似ている。


 なので、細かいことは全部、先の卒業式のように背景流しで、あまり深くは干渉しない。



 ――だから、



 あっさりと時間が過ぎ、その当時の思い出や記憶が光の速さで流れ、脳裏に焼き付けていく。


 終わった瞬間、光のトンネルを抜けるような感覚で、その1年間が終了する。



 ――Central.2.



 続いて中学2年生での出来事。ここであることと言えば2つ。


 修学旅行と生徒会総選挙だろう。



 まず、修学旅行について。


 行った場所は、岐阜の白川・高山市内、愛知の鉄道館、三重のスパーランド。


 逆に、内容が多すぎて、この思い出であり後悔の振り返りは必要ないだろう。



 そして、生徒会総選挙。どうしてこれが入るのか。


 それはエミが、この学園切っての生徒会長に立候補されるからだ。


 だがこれについても、内容が濃すぎるため、振り返る必要なし。


 そのため、同様の背景流しで済ませる。



 ――Central.3



 中学最後の思い出は、中3の学園祭。


 ここでも、何があったかどうかは覚えている。



 ――ただ、



『……あれ?』


 突如、疑問符が上がり、思い出そうとするように頭を押さえる。


 色濃く、瞼の裏にさえ刻まれたはずの物語。


 忘れるはずも無く、忘れることを許そうとしない。そんな類のもの。



 ――なのに、



『思い、出せない……?』


 頬を伝う汗。少々の焦り。

 無理やりにでも思い出そうと頭を抱え込む。


 どうしてという疑問と、不思議さ。

 どうすることもできない、そんな遣る瀬無い思い。


『……っ』


 いきなり来る頭痛。激しい痛み。

 脳裏の隅々にまで広がっていく締め付けのような痛み。


 それは蟀谷を、頬を、首筋を通過し、胸や腹、肩や腰、足へと進行していく。


 だが徐々に、痛みは引いていき、脳内へと収縮するように納まる。


 その一瞬のような出来事に、何だったのかと思わされつつ、近づいてくる宝玉へと視線を移す。


『……っ!』


 目を移した途端に、すぐにわかる。

 そこに眠る記憶が何についてのものなのか。

 溢れ出すほどの勢いで、並び浮かぶ光玉の中を見透かしているよう。


 現れたのは、デルタの形を描くようにして並ぶ、新たな3つの光玉。


 黒と紫が勾玉模様に識別されたもの。

 マスカットのようにクリアな緑色に白い風のようなシンボルを持つもの。

 黄色く、透き通るような球体に、金箔や赤い石を埋め込んだようなもの。


 それらが立体的な三角形を描くようにして、宙を舞っている。


 眺めていれば、今まで見てきた夢回想・背景流しの途中途中に、今までそこが空白だったパズルに失くしていたピースが嵌るように、解放されていく。


『どうして、俺は……』


 忘れ去られ、思い出すことのできなかった記憶。


 自然と、開かれることを許されていなかったかのような、頑丈な金庫並みの封じられ方。鍵が無ければ入ることのできない扉。



 ――それすなわち、



『またかよ……』



 クロは再度、開く記憶の順序を間違えていた――。



 ――少年は再度間違え、

  記憶の回廊を巡る――

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