第二章24 『Episode of Memory.The Renewal.2.75~4.0』
なんか最近、うまく書けていっているようで、全然です。それでも、最後の長いラストスパートなのでがんばっていきたいですっ!!
――あれから、
『間木野斗条』という存在が消えて、嘘だと思っていた誕生日プレゼントは裏返っていた。
記憶が途切れるように周りの風景が、見えていたものが、泡のように弾けて溶けて――。
眺めていた両手。何もないのに、何かがあって、染まり切っている。
噛み締めるように握り締め、胸元へと抱え込む。許し乞うような姿で、声にならない叫びを誰もいない空間で響き渡らせる。
目を開けて半目にも、あることに気づいて、何かに憑りつかれるように、たしか続きがあったはずだと記憶をあさる。
見つけて、続きである後悔の一部を開く。
この気持ちを忘れずに、次に進むために――。
――『真蒼黒竜』は、記憶を貪る。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
気が付けば、自室のベッドの上で考え込む態勢でいた。そして、近くの机にはピンク色の包装紙に包まれたビックリ箱にも似ている立方体のプレゼント箱が置かれていた。
――何だっけな、これ。
地味にも思い出しづらく、わかっているようでわからない。そんな箱をゆっくりと開封していく。
リボンを解き、開いてみれば、そこにあったのは2つのもの。一つは手紙、もう一つはヘッドホンだった。
そして、ヘッドホンへと重ねるように置かれた手紙を手に、ベッドへと腰を下ろす。そしてゆっくりと、目を通していく。
――『拝啓 真蒼 黒竜 様』
『このたびは、ご愁傷さまです。いやぁ、エイプリルフールに誕生日だなんて、サプライズの買いがあるなぁ!そんでぇ?感想はどうだ?俺のお気に入りの愛用品だぞ。感謝しろっ!』
『さて、あれから、一年。早いのか遅いのかわからない。それでも、楽しかったのは間違いない。悲しみで仲がいいあまりに崩壊しかけた俺たち。必ずそこにはお前がいて、キスケと俺が和ませて、リナがその輪の綱を繋ぎとめる。一つがいなくなれば、どうしようもなくなってしまうほどのか弱い俺たちが、今でも一緒にいれたことを俺は嬉しく思う。――それでな、クロ』
『俺、ちょっくら、リナにあってくるよ』
――……っ。
『前から気づいてた。俺も長くなくて、リナみたいになっちまうんじゃないかって。だからよ、気にすんなよとは言わねぇけど、自分を責めることはするなよ。お前は酷いようで、優しすぎる。変な矛盾に囚われたやつだ』
『死んだ先に何があるのか普通に興味はあったんだ。だから調度いい。それによ、最後の死に方ぐらいは選びたくて、前々から決めてたんだ。お前みたいに平然とこの繋がれた糸を切らないように泡となって消える……なんかかっこいいだろ?』
『そんなわけで、この手紙を読んでいる頃には俺はもういない。だから、会うことももうできない。心残りがあるとすれば、――』
『もっと、一緒にいたかったなぁ……』
『な~んつってな!後悔はないさ。会えないことは確かに残念だけど、どうせお前もいつか来るんだ。そん時、いろいろ聞かせてくれよ?それだけで十分だ。嬉しかったぜ?友達になれて、いれて』
『そんじゃぁな、お別れだ。今まで、こんな俺と一緒にいてくれて――ありがとう』
――『間木野斗条 より』
『P.S. 俺がいなくなってもキスケと俊と仲良くしろよ?』
――そうだったな。
手紙を読み終わり、いつの間にか夢という『無』の空間に立っていた。身体から力が抜け、棒立ちになる。思い出して、忘れていた当時の感情に浸る。その結果、思う事ばかりで思考を巡らせる。
斗条は知っていた。リナの死を、自分の死を。
それでいて、文面にあったことで言えば、嘘が下手で、縁起でもないことを言い、それでもそこに、真実だけを残して、消えた。
――結局、お前は、
空を仰ぐように浸っているクロ。ゆっくりと首を下せば、目の前には幻覚である斗条が笑顔で佇んでいて――、
吹かれゆく風によって星のように散る。
そのことに微笑を浮かべながら、
――俺の事、よくわかってんじゃねぇか。
やっとの思いで振り返ってみれば、いつしかのぶつかり合いに決着はとっくについていた――。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
手紙を手に、もう一度眺めて、記憶の中へとしまうように風に吹かれて光の塵となって消えていく。それにより何もなくなった手が、手持無沙汰になっていた。
だがすぐさまにも、新たな光玉が近づいてきて、少しためらいながらもそっと触れる。
白き光が焼くように空間を侵食していった瞬間だった――。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「――よ、クロ」
「――ああ」
再び、記憶へと導かれるようにして、あのビルでまた――『鬼塚亮助』と鉢合う。
「なぁ、キスケ……」
――今度は、
「何だ?」
――お前の番、なんだよな。
「どうしてお前は、俺から離れないんだ……?」
「なんだ、そんなことか」
「……周りはみんな、俺の事を忌み嫌う存在として見るようになってきた。そりゃそうだよな。俺の周りから、大事な人だけが消え去っていく。次は誰だろうって噂になって、『死神』と呼ばれるようになって、今度はお前の番かもって…………だから、」
「ていっ」
「……っ」
クロに可愛いチョップが頭へと炸裂した。
「……何故叩く」
「ムカついたから」
「……いや、だって」
「ふんっ」
「……っ」
今度は頭突き。勢いよくゴツンと弾かれ、これは両者ともに地味にも痛かった。
「つまんねぇこと気にしてんじゃねぇよ。誰がなんて言おうが俺らは俺らだろ」
「そうだけど……」
「それに、約束した。ずっと一緒にいてやるって」
「…………それでも」
「うじうじしてんじゃねぇよ。同じこと繰り返しやがって。お別れ、行くぞ」
「ああ……」
――お前はいつもそうだった。
自分のことを置いて、周りの奴等ばかりを心配する。それが逆になろうと、自分の信念だけは曲げない。ほんと凄いよ、お前。
追いかける背中を、あの時と重ねながら、視界から消えていく。追いかけようにももう、その背中も、ここがどこなのかもわからない。
そうやって、場所だけが変わっていった――。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
二度目の香り。死へと誘い、この地に彼はもういないことを告げるその煙は、祀り称えるかのよう。
また新たなお別れを告げて、この記憶から隣にいる彼へと移し替える。
そんな眼差しも同じくして、世界と共に記憶の渦へと消えていった――。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
――それから、また、一年という時が過ぎ、5年生となった出来事。
急にもまた、約束したあいつとお別れになった。でもそれは、致し方ない引っ越しだった。
その先には俊もいて、2人ともまた一緒に暮らすというもの。仕方ないと妥協しつつも、結局は一人になる。気にしているわけじゃない。素直に離れてくれてよかったと思ってる。危険にさらすことなく、それでいて、一人には慣れていたから。
引っ越すと分かったのは、その2週間ほど前。だから、たくさんのことをして、心残りの無いようにした。
俺とキスケと俊。3人とも運動が好きなため、家の地下でスポーツ大会をした。凄いとほめたたえていたくせに、キスケに2人して惨敗だった。ただ、とてもいい気分だった。
それで、あの頃行ったデパートでもいろいろハッちゃけたりして、面白い光景ばかりあって、隣の遊園地にも行ったりして。それが何よりも掛け替えのない楽しみで、失ってきた辛さを軽くすることができた。それは俺の宝物で思い出だった。
お別れをしても、携帯があるから連絡の取りようはあった。けど、2人が向かう先はドがつくほどの田舎で、圏外になって使えないらしかった。ネットも使えず、距離的に会うことも、手紙を出すことも、儘ならないほどの場所。そんな場所あるんだろうかと思わされた。
それからあっという間に時が流れて、お別れを迎えた。寂しくはない。悲しくも嬉しくも、何も。薄情な奴だなと自分でも思う。
しかも、お別れを言う勇気がなくて、トラックに最後の荷物を積んでいく声を耳にしながら、部屋の隅で丸くなってた。
でも、様子は気になって、カーテン越しにキスケを見た。眉をハの字にしながら困り顔をして、トラックへと乗り込んでいった。
お別れを言えず、慣れているはずの一人になり、暗い自室で縮こまる。
「やっぱり、嘘じゃないか……」
そう呟いて、元の一人になった。
それから数時間たった頃――。
テレビをつけたら調度、ニュースをやってて、そこに――、
『現在から4時間ほど前のこと。スピード違反の車両がパトカーから逃げている最中、向かってくるトラックと衝突。トラックの中には11歳の小学6年生である『鬼塚亮助』くんと12歳の中学一年生である『天道俊』くんが乗車しており、間もなく死亡が確認されました』
「嘘だろ……」
そう呟いて、心を打ち砕かれるようにカップを落とし、割れた――。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「――そんで?これからどうするよ」
「車がダメになっちまったよ」と、残念そうに木の上から眺める――『天道俊』。
「もともとそういうやつだろ。言わば捨て駒みたいなもんだ」
「平然と言ってくれるなぁ。違法投棄は犯罪だぞぉ?――キスケ」
俊の声に、少しイラつきながら同じく木の上に立つ少年――『鬼塚亮助ことキスケ』。
互いに今、目の前にいる自分たちの偽の死体を見ながら、グロテスクなそれに気分をそがれる。
「でも、ニュースにはなってる。警察もいる。あとは何とかしてくれるだろ」
「よくまぁ、こんな手の込んだことを思いつきますよ。我が弟ながら大事なもののためなら手段を択ばず大胆だってことにちょっと驚愕だよ」
「義理(の弟)だけどな」
「まぁ!バレンタインみたいっ!」
「そういう悪ふざけいいから、さっさと行こうぜ。効果が切れる前に。こっからは別行動だ」
「あいよ……」
呆れる言葉を口にして、交差するように森へと飛び駆ける。そして俊は、あの笑みを浮かべながらに最後の言葉を口にする。
「じゃぁな、気をつけろよ」
「そっちこそ」
そう言って、互いが互いを見透かすように笑みを浮かべて光と陰へと消えていく――。
包まれるさなかも、その笑みは絶えなかった――。
そして、何も知らない愚者は、また新たな記憶を手にしていく――。
とてつもない、胸のざわめきを感じながら――。
――何も知らない少年は、友頼のために。
気づいた友頼は少年のために――




