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蒼のAGAIN  作者: 「S」
第二章 2桁の『災悪』と絶望の病
37/42

第二章22 『Episode of Memory.The Renewal.1.5~2.0』

2が並んだゾロ目話。並んでいく2つのものと物の者。そんな彼等を描いた物語とは別に、ご報告が一つ。一日一話投稿にしていこうと思います。できるかどうかで言えばほとんど皆無ですが、時間帯的には夕方の6時15分から8時30分を予定しています。無理だった場合は投稿日時が1日ほどずれていきます。なので、これからもよろしくお願いします。

 「――ん?」



「――どうかしたか?」



「――……?」



 一人の少女へ向けた想いゆえに崩壊しかけていた現状は、細い糸を支えるようにして繋ぎ留められる。



 そんな取り残されたようで引き留められた3人――『(おに)(づか)(りょう)(すけ)ことキスケ』、『()()()()(じょう)』、『()(そう)黒竜(くろう)』は一つの振動音に耳を傾けていた。



「…………ちょっと悪い。出てくるわ」


「ああ」


「…………」


 ポケットに入っていた赤と黒の今時珍しいガラパゴス携帯を取り出し、足早に去っていく。


「兄貴?」



「『――よう、キスケ』」



 着信にあったのは、2人暮らしをしていた義理の兄弟である兄――『(てん)(どう)(じゅん)』からだった。



「珍しいな。なんかあったのか?」


「『…………』」



「――?どうかしたのか?」



「『……お前こそ、なんかあったのか?』」


「え……」


「『…………』」


「…………」


 電話の声から一瞬で見抜かれたことに少し動揺し、あからさまにも考えるという沈黙を露にする。


 黙り込んでしまったことに関して言えば、図星だったのが問題なのではなく、どう説明したらいいのかわからないというもの。



 ――ただ、



 もうそれは片付いているものだということは、確かな答えで、そのことに微笑を浮かべてしまう。


 嬉しさと悲しみが混ざり合い、今自分はどんな顔をしているのだろうと思わされる。


「『キスケ?』」


「……あ、ああ、ごめん」


「『……何があった?』」


「えっと……」


「『……?』」


「リナが……『死んだ』」


「……っ!どういうことだっ?」


「『持病、だって……』」


「……っ」


 驚きを隠せない様子の俊。けれど思考は、ハッキリと告げてくる。


「『お前たちは大丈夫なのか?』」


「『…………』」


「……?」


 そう、それは、欠けて残った3人の心配だった。俊にとっても、『()(こい)()()』という存在は大きく、掛け替えのないものだった。


 それでも、一番つらいのは自分よりもずっと一緒にいる彼等の方だと、本能が叫ぶかの如く訴えていた。



 ――だから、



「『うん……。もう、大丈夫、かな……』」


「『……そうか』」


 大丈夫。その一言だけで僅かにも気は休んだ。それでも、それは辛うじで安心できるようなものではないのだが。


「それよりも、兄貴もなんか用があるんじゃなかったの?」


「『ん?ああ、そうだったな』」


「……?」


 キスケの話を聞いて、こちらの話題としても、言いづらさが増していることに気づき、どうしたもんかと仰ぐも、意を決して口にする。



 ――もう、後戻りなどできないというやけくそのような思いを乗せて。



「『招集がかかった』」


「『……そうか』」


「落ち着いてんなぁ……」


「『だって、これ以上のことは気にしようがないじゃないか』」


「だな……」


「用はそれだけ?」


「『……いや、それと共にもう一つ』」


 キスケの萎れ具合に調子を狂わされながらも、切り込むように突きつける。



 ――この世界の、現実の儚さを。



「『例の2つ病を、覚えているか?』」


「うん?」


「『その2つが、『()(そう)黒竜(くろう)』だと発覚した……』」


「『……そう』」


「驚かないんだな……」


「うん……」


「…………」



 ――おかしい。



 明らかにもキスケの反応は薄情すぎる。リナがいなくなったことで萎れているのはわかる。だが、それと同等の話題だというのに落ち着きすぎている。



 ――まるで、



「『……ちょっと待て』」


「……?兄貴?」



 ――繋がった。



 明らかにもおかしく、不自然すぎるほどの出来事たち。関係がある者たちが失われていくこの現状。それでいて、起こったことがまとめられて告げられて整理されたことで出てくるものがある。



 ――それは、



「『お前、気づいてただろ……』」


「『…………』」


「『図星か……』」


 キスケの周りでいろいろな事があり、そしてそこには必ずクロがいる。たぶんリナが失われたことで、あるいは何かの拍子で真実へと結びつけられた。そんなとこだろう。


「『うん……気づいてた』」


「『ならなんで言わない?』」


「『……ふふっ』」


「『笑い事じゃねぇぞ……』」


「『いや、ごめんごめん』」



 ――似てるな、ほんと。



義兄弟で血は繋がってないのに……。やっぱり、兄弟は兄弟なのかもな。


「でも、気づいたと言っても今さっき思っただけで……」


「そうかい……」


笑われたことが気に食わないのか、呆れているだけなのか。俊の口調はぶっきら棒だった。


「『……それで、今後のことだが』」


「『それはやだよ』」


「……っ!気は確かかっ!?」


「『わかっているからこそだよ。……約束したんだ。俺たちはずっと一緒だって……』」


「それだとっ」


「……うん。次は俺か、あいつの番だね」


「だからこそ!身を引くべきだと言っているんだっ!」


 キスケの言葉に徐々に俊の焦りと声は唸るように大きくなる。冷静な判断とは言い難くもかけ離れた、見限りのようなそんな諦めに。


「お前の考えもわからなくはない…………だが!」


 キスケの判断。その答えが俊にも手に取るようにわかっていた。クロとの関係で言えば、俊も同等かそれ以上にあったから。


 それでも俊は、キスケとは別の諦め、何かに縋りつき希うような思いと許しを乞うようにして、受け入れた。



 ――でも、



「『……兄貴の選択は正しいと思うよ』」


「ならっ」


「『でもそれは、ただの逃げで諦めだ』」


「……っ」


「『俺は、見っともなく足搔くよ?』」



 ――リナがそうだったように。



「もう、何もできないだけで失うのはやなんだよ……」


「…………」


「それに、俺たちがいなくなったらあいつは一人ぼっちで、元に戻っちゃうじゃないか……」


「……それでも、どの道そうなってしまう。そういう宿命だ。どうにもできない運命だ……!」


「それはどうかな」


「……何だと?」


 自分とは別の道を選び、そのことに苛立ちを覚えながらも冷やされるようにして、キスケの言葉に耳を傾ける。


 キスケもまた、笑みを浮かべながらに誇らしく口にする。



 ――それは誰もが知っている『何か』だった。



「兄貴は俺よりもクロと一緒にいただろうに、そっちはただの逃げ道で戻るように諦めた」


「何が言いたい?」


 仕方ない事を大人しく受け入れる俊に対し、子供らしくも愚かに諦めようとしないキスケ。わからずやで似た者同士だと、つくづく思わされる。


 何が違って、どちらが正しいのか。それは言うまでもなくわかっていたこと。



 ――けれど、



 打ち砕くように、言葉にされるのは単純かつ明快な答えだった。


「俺は、『()(そう)黒竜(くろう)』を信じてる」


「……っ!」


「兄貴の言う通り、クロはこれからたくさんのものを失って、自分すら捨てるほどになると思う。それは本当の意味で、残酷だけど…………信じて託せてこその友達じゃないか」


「…………」

 


 ――何故だろう。



 こんなにもキスケの言葉が刺さったのは。いや、本当はわかってる。ただそれを選ぶ勇気がなかったんだ。それで、無いものとして扱うように除外した。



 ――信じる勇気が俺にはなかった。……親友失格だな。



 ――それで、



「お前って、時々凄いよな……」


「そう?」


「ああ」


 つくづく思わされる。俺の弟は凄い奴だ。血の繋がってない兄弟。だからこそなのか、足りないものを埋めてくれる。ほんと、親の顔が見て見たい。


「それでぇ……?そんな険しい道のりを通る覚悟はありますかぁ?萎れた泣き虫弱虫鬼塚く~ん?」


「俺も『鬼』だからね。それに、なきゃおかしいし提案しないだろ?」


「そうかい」


 いつもの呆れた捨て台詞を置いて、互いに通話を終える。反発し、離れて別の道を歩んでいく。それでも後ろには必ずどちらかがいて、求める答えへと足を運ぶ。


 キスケは、手放さないために信じて彼へと託しに。

 俊は、守り抜くと決意して手を伸ばすように不可能を可能にするべく、駆け上がる。


 話題が話題だけに、それぞれが愕然とする事実。だから、可能性を求めて知恵を絞り、反発しながらも掛け合わせる。



 ――そして、



 そんなどちらにも、『信頼』という二文字があった――。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 ――それから、どうしたんだっけな。



 現在までの記憶を夢という朧気な空間で再確認し、クロは目を半開きにも起き上がる。



 ――確か、次の後悔は……。



 呟くように思い出したとき、応えるように近づいてくる一つの光玉に気づき、あやふやにも思い出し気味に手を伸ばす。


 掴み取り、広げて。覗き込むようにして眺めると、その世界へと導かれるようにして、追憶が意識と共に広がっていく。



 また新たな『記憶(ひかり)』が、体中を包み込んだ、瞬間だった――。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 目の前に広がる新たな景色。予想と記憶が正しければ、ここは――、



「――よ、クロ」



 背後から聞こえる声に、さっきぶりにも状況に身を委ねるようにして合わせる。



「――ああ」



 といっても、クロの返事はいつも通りなのだが。



 返事と共に、声の主である斗条、そして現状を再確認する。



 ――そう、だったな……。



 何を期待していたんだろう。自分の記憶にいい事なんて何一つない。しかもここに映されていくのは、後悔をした『記憶(せかい)』たちだ。あるはずのないものが存在してこそのものだというのに。


「もう、一年か……早いな」


「そうだな」



 ――そう。ここは、一年後の世界。



 あっという間に時は流れて、新たに生まれたのは、思い出させるかのように引き起こされた悪夢。


 混じり合う風景には、同じようで違うものが映っているかのよう。


 一人は小さな期待を浮かべ、一人は秘かに哀れみと許しを乞う。



 そんな隣り合う残酷性を背負わされた光景だった――。




 ――信じ託すことを胸に抱いた者と少年。

  物語るは少年の知らない真実と過去――

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